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いつのまにかお菓子屋さん

仕事の話をもうひとつ。

最近はお菓子屋さんにもなった。

乳製品やたまごを使わず、植物性の素材で作るクッキーやグラノーラ、タルトなどを作っている。

「もえちゃんはいつからお菓子屋さんになったの?」

とまゆちゃんに笑って聞かれた。

いつからなんだろう。

いつのまにか、気づいたらお菓子屋さんになったいた。
そんな感じだ。

2013年の冬から本格始動し始めたカフェ「いな暮らし」では、ともに営む母ともみがごはん担当、わたしがお菓子担当となった。

もともとお菓子を作るのは好きだったけれど、お店で出すものは試行錯誤しながら今の形に行き着いた。

今やありがたいことにホールでの注文も受けるようになったタルトはVeganの方もOK。バターの代わりに米油を、牛乳の代わりに豆乳を使うなどしている。

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最初は小麦粉ベースだったカスタードクリームは、「ひゃくねんたんぼ 谷川農園」さんの無農薬の玄米粉を使うようになって、より消化にやさしいものとなった。

小麦粉はまだこれだ、というものに出会えていなくて、しっくりくるものを探しているところ。

最近は小麦アレルギーの方も多く、なるべく米粉を中心としたグルテンフリーのおやつのラインナップを増やしていきたい気持ち。

わのおかし」と名付けた焼き菓子シリーズは、個人的に好きなグラノーラや、米粉のクッキー、米飴醤油たれでみたらし団子風の味付けをした”みたらしクッキー”などがある。

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イラストレーターのわしずひろあきさんにデザインしてもらったイラストのおかげで、見た目は地味めのわたしの焼き菓子が可愛く仕上がっている。

このお菓子を本腰入れて焼き始めたのは2019年の初春からだ。

2018年12月にチャレンジしたクラウドファンディングで、お風呂場を改装した工房を作ることができた。

満建築工房さん、atelier田圃風 のさやかちゃんに急ピッチで整えてもらった工房でお菓子の試作をどんどん進めて、2019年春にお披露目できたのは、まだどんなお菓子が納品できるかも決まっていなかった冬のうちに、お菓子のオーダーをしてくれた盛岡のkasi-friendlyの店長くみさんのおかげでもある。

わざわざ東京出張の合間を縫って、都心から少し離れているいな暮らしまで足を運んでくれて、まだ見ぬお菓子をたくさん注文してくれたのだった。

任せてもらった緊張感が、ぴりりと背中を押してくれたおかげで、なんとか形にして盛岡まで届けることができた。

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その後も何度かオーダーいただいて、そのたびにわたしもその期待に応えたい気持ちになって頑張ることができた。

今まさに開催中の企画展「工房蟻2020AWCollection」 にも「わのおかし」を並べてくれている。

今回は新作もぜひ届けたい気持ちで、工房蟻さんの今期のテーマ「素」からイメージを膨らませたものを意識して作ってみた。

おつまみ系のサモサクラッカー、スパイスを効かせた塩チョコスパイスグラノーラ、梅酵素シロップの米粉クッキーがなかなかいい出来となった。

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お菓子の勉強をしたことはないけれど、手渡す人を思いながら、その時々の季節のもの、出会った食材、思いついたアイデアを織り交ぜて、こんなのあったらいいなぁと思うお菓子を少しずつ形にしてきている。

ゼロから生み出すレシピではなくて、先人たちのさまざまなレシピも参考にしながら、オリジナリティを加えていく。

レシピというのはこれ!と決まるまでけっこう時間がかかるものだし、気温や季節によっても微妙に配合や焼き時間も変わってくるものだから、レシピ化してきてくれた先人の皆さん、本当にすごいと思う。感謝の気持ちでいっぱいだ。

自分なりにレシピ化できたものでも、頼りになるのは手の感覚。
生地の触り心地で微妙な変化がわかる。
手ってすごいなぁとつくづく思う。


お店を始めたら、その場で食べてもらうスイーツが必要になり、なんならお持ち帰りでいたり、遠くの人にも届けられる焼き菓子もいろいろあったらいいよね、という流れから生まれたお菓子たち。

必要なものを作ってきた感覚。

お菓子屋さんになるぞ、なんて思ったことはなくて、いつのまにか、なのだ。

去年まではタルトをホールで注文いただけるなんて想像していなかったし、一年に一度のお誕生日のケーキ、たくさん選択肢がある中で、わたしが作るものを選んでもらえるなんて、なんて幸せな、やりがいある仕事なんだろうと思う。

その分、緊張感も毎回伴う。

ひとりで作っているゆえ、大量に作ることはできないけれど、ひとりひとりのニーズに合わせたタルトをお届けしたい。

だから全部オーダーメイドのタルト。

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今日ご連絡くださった方は、5歳の息子さんのお誕生日のタルトとのことで、その子が好きな果物を聞いて、それらを組み合わせて作ることにした。

電話越しのやりとりから、うれしい気持ちが伝わってきて、わたしも作るのが楽しみになってきた。


こんなふうに、いつのまにかお菓子屋さんになっていた。

たぶん今、わたしの仕事は?と聞かれたら

カフェの店長で、本屋さんで、お菓子屋さんです。

ってなるのかな。

なかなか愉快だな。


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