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わたしが見てきた風景

日曜日は長野市にあるシンカイ

店長のナカノヒトミちゃんとトークイベントを開いた。

「店長・ナカノが色んなお店の店長と悩みやこれからのことを話すイベント」

住宅街でお店を開くわたしたちは同い年で、

ヒトミちゃんはシンカイのオーナーで編集者の柿次郎さんと、

わたしは母のともみと、

お店という場をつくっている。


ヒトミちゃんはフリーのライターでもあり、

わたしは看護師でもある。


わたしたちは二人とも

それぞれの生まれ育った土地でお店を開いているけれど、

最初からそれを目指していたわけではなく、

流れがやってきたからそれに乗って今に至る。

という表現が適切かどうかはわからないけれど、

計画的に進めてきたわけではないという共通点がある。


いな暮らしはお店として場を構えて6年目。

(母が自宅ガレージで開いていた頃も含めると7年目)

シンカイはまもなく開店1周年。


お店という一つの場を開きながら体験したこと、

悩みなんかも含めてなんでも、

来てくれた人とやりとりしながらテーブル囲んで話してみよう。

そんな企画だった。


お客さんが来る前、

ヒトミちゃんといろいろ話しているなかで聞かれたことのひとつに

こんな質問があった。


”お店を開いているとさ、

正直今日は誰とも話したくないなと思う日とか、

体調がいまいちな日もあるじゃない。

そういうときってどうしてる?”


あるある。

そういうときは隠そうと思っても隠しきれないから、

スタッフさんや常連さんには言っちゃう。

自分の今の状態をわかってくれている人がいるだけで、

だいぶ気持ちが楽になる。


お客さんとお店の人、

という境界線や壁をなるべく作らないようにしているから、

正直に伝えやすい関係性が徐々に生まれていったのかもしれないな。


「いらっしゃいませ」ではなく

「こんにちは」と迎えているのは、

お客さんとしてももちろん認識してはいるのだけど、

それよりも、

今日ここに来てくれた一人として見ている。

◎◎さん、ご近所さん、チャイが好きなあの人、

といったふうに。


だからかわからないけれど、

うちでは席を番号で呼ばない。

1番席、2番席とかじゃなくて、

”お子さんと来ている窓際の席の方”

とか

”縁側のおふたりさん”

とかそんな表現でごはんやお茶を運んでいる。



ちょっと話がそれたけれど、

人間がやっているお店だから、

その時々で気分や体調が変わるのはあたりまえだし、

それはお客さんもそう。

お互いにそうだよねってわかりあえていたらいいなと思う。

話したい時もあるし、

話したくない時もある。

でも、

そんな時でも、どんな状態でも来ていいのがお店だと思う。


行っても行かなくてもいいのだけど、

今日もあの場所であのお店が開いている。

あのお店にはあの人がいる。

そう思い出すだけで安心するところもある。


目に見えないところで支え、支えられているなぁと思う。


”表情のあるお店”

これはヒトミちゃんの表現だ。

いいな、好きだなと思った。


大手チェーン店のように、

いつでも変わらぬサービスを届けるお店の役割もある。

そんなお店にもよくお世話になるし、ありがたいなぁと思っている。


個人が営むお店には、

その店それぞれの個性があるのがユニークで楽しくて、

お店に並ぶものだけでなく、

そこに立つ人によって、

雰囲気も来てくれる人も変化する。


長野市に夜行バスで着いた朝、

ヒトミちゃんに連れられて朝ごはんを食べに行ったお店「バーバラ」なんか

ユニークの極みというか、

個性がバリバリに飛び出していて最高だった。

朝ごはんを爆笑しながら食べたのは初めてだったな。

どこから来たの?と聞かれて

稲城市っていう東京の西側で、多摩川の近くで・・・

と言った瞬間に「たまちゃんね!」と

初対面のわたしにバーバラネーム(あだ名)をつけてくれたmachikoさん。

ラジオから流れてくる音楽に合わせてからだを揺らしながら、

とびきりおいしい”朝定”を作ってくれたtakashiさん。

ふたりに「GOOD MORNING!!!」と見送られた朝の始まりは

忘れられない強烈体験だったな・・・


ヒトミちゃんと会ったのはシンカイでの再会で3回目だったのだけど、

出会ってまもないわたしを早朝の長野駅まで迎えに来てくれて、

夜行バス明けのからだに染みる温泉に朝から連れて行ってくれたり、

(いきなり裸の付き合い!と内心ちょっと緊張したけど)

善光寺を案内してくれたり、

おうちに泊まらせてくれたり、

至れり尽くせり。

本当にありがとう。



こうしてまた長野へ行きたくなったり、

今暮らしている場所とは別に、

愛着のある街が増えていくんだよなぁなんて思った。


長野に住んでいる友達との再会もあってうれしかったな。

東京じゃなく、長野でまた会えたということが。

くれはちゃんとはまた佐久で会えるかな。

めぐりんとは行ったり来たり、漆を通してなにか一緒にできそうだ。


ヒトミちゃんに聞いてみたいことが

東京に、稲城に帰ってきてからぽこぽこ浮かんだりしている。

また長野に会いに行きたいな。


わたしは今日もお店を開けて、

朝から夕までよお働いたと思う。

タルトを焼いて、クッキーやグラノーラも焼いて。


カフェでごはんやお茶を出すだけでなく、

いつのまにかお菓子まで作るようになっていたのも、

お菓子屋を目指していたわけでなく、

必要なものを自分たちで生み出していこうとした結果で、

通過点のひとつ。


でも今回の長野行きに、

できたばかりの”わのおかし”を持って行けたのはうれしかったな。

焼いたお菓子は遠くに運んでいくこともできる。

旅するわたしの身体とともに持ち運ぶことができる。

あたらしいアイテムができたのだな。

自己紹介の名刺なんて持っていないけれど、

これからは行く先々でお菓子を手渡せたらいいなと思えたのも、

今回直接自分でお菓子を持って行けたことから思い浮かんだこと。


チャイを淹れるセットを持って行ったのもよかった。

旅先でもいつものようにチャイを淹れて、

来てくれた人にお出しする。

それを飲みながらお話しする。

初めて行った先でもこの流れを作れたら、

わたしがいつものわたしのままで話せるような気がした。


外に出ると気づくことがたくさんある。

人と出会うことで、話すことでわかることも。


明日も話す機会をいただいた。

がらっとちがう雰囲気の場所で。

都市計画レジェンドトーク第1回「イノベーターのミームを探る」

テーマやタイトルがなにやら壮大だし、

馴染みのない言葉が多く並んでいるけれど、

わたしはわたしが見てきたこと、体験してきたこと、

あたまのなかで考えていることしか話せないし、

それがわたしに今できること。

恭平も一緒だし、まぁきっとたのしくなるでしょう。


明日はどんな人に出会うのかな。

どんな風景に出会うのかな。

どんな言葉がわたしのなかから生まれてくるのかな。


いつもその瞬間ごと、

まるごと感じて生きている。



はぁ、今日も生ききった。


表紙の写真はパートナーの井手大撮影。









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