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鼓動の音(エッセイ)

部屋にある押し入れの整理をしていた時のこと。

段ボールの中にあったのは、お腹の中にいる赤ちゃんの鼓動を聞くことが出来る簡易的な聴診器。

簡易的なものでありながらも、お医者さんがちゃんと普段使っている様な形の聴診器で、年月が経っていてもちゃんと使えた。(当たり前ですよね(笑))

そんな聴診器を見つけた私は、もう赤ちゃんではないけれど(笑)自分の耳に聴診器の聞く部分を入れ、そっと自分の心臓の部分へと聴診器を近づける。

すると、直ぐに聞こえてくる。

完璧な聴診器ではない為、音自体は鮮明ではないものの、『ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ』と、私の心臓の音が聴診器を伝わって私の耳へと届く。

ドクッ、ドクッ、ドクッ

ドクッ、ドクッ、ドクッ


ドキ、ドキ。ではなくて、ドクッ、ドクッ。

心臓の鼓動の音。

血液を動かしている音。


………心臓、動いてるな……。

ただ、そう思った。

ドクッ、ドクッ、ドクッ。

心臓の音。

ドクッ、ドクッ、ドクッ。

鼓動の音。


命の灯火が…そっと旅立つその時まで、動き続ける心臓の音。


いのちの音。

記憶の音。


そんな事を、改めて…赤ちゃんの鼓動を聞くための聴診器を自分の胸に当てながら思った。

空は、青空だった。



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