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11/14 『機龍警察〔完全版〕』を読んだ

面白かった。聞いてた評判通り、そして「2010年代最高の国産ミステリ小説シリーズ」とオビに書かれている通り、面白かった。
最初、カバー折り返しの登場人物表を見て、そのずらっとした人名と階級の並びに、これ何度も見返しながら読んでいかないとわかんなくなるやつだ、と思ったのだが、読んでみると思いのほかにズンズンと読めた。というのも、よくよく見れば、組織の各ポジションに2人ずつ、対照的なキャラクターが配置されており、その二者の関係をとっかかりにその組織の、あるいは組織間の関係性などが描かれるので、とても入ってきやすい。組織ものとバディものがくんずほぐれつして、実に効率よく作品世界を描写している。警察ものはまだまだあんまり触れておらずこれからいろいろ読んでいければなと思う所存だが……この書き方というかシステム、警察ものを書く上での最適解なのでは? それとももうとっくに鉄板システムとして膾炙しているかしら?
ただそんな効率的警察システムに紛れ込んだ異物が龍機兵の搭乗者たち。人数も「3」人で、これまたシステムの法則から外れ、異物感が増す。作中においても良い印象はあまり持たれない。
だがそんな3人だからこそ、組織内外の思わぬところと結びつき、特異な反応を起こさせるのであり、そこが面白い。もっとも3人とも、周囲の視線や評判なんてどこ吹く風という顔をしつつ、内心では全員相当に、こう、湿っぽいというか、何かしらに飢えているきらいはある。それぞれに求めるものは違うのだろうけど。
システムの法則外と言うなら(言うならもクソも、俺が勝手に言ってるだけのことだが)、異分子の「3」の一方で、孤高の「1」というのもある……即ち、沖津部長。彼に関しては、めちゃ有能であることはわかるものの、何が動機で何が目的なのか、まるで不明だ。特捜部をはじめすべての始まりであろうに。警察という組織を変えたいのか、混沌激化する社会に歯止めをかけたいのか。今回の事件の黒幕同様に、シリーズ最大の謎になりそうな予感プンプンだ。是非、特捜部ともども、我々をその謎で引っ張っていってほしい。
その特捜部の切り札たる、龍機兵。機甲兵装のイメージはなかなか迷った。ロボと警察ということでパトレイバーや、姿から連想してボトムズのATを想像したが、大きさは3m前後だというからもっと小さい。イノセント・ヴィーナスのアレが一番近いのかな。市街地戦闘やテロに対応すべく二足歩行型の兵器の需要が高まった、という設定はまだわかるが、龍機兵はそこから急に量子結合とか言い出したり、ファフナーばりに機体と同一化したりしており、技術レベルが更に一足、いや二足三足跳んでいる。限りなく現実に近い近未来を舞台にして、この超常兵器は一体どこから来て、何をし、そしてどこへ行くのか。ハァーッ気になりますな。
ラストのコーヒーブレイクタイムは、次巻以降への伏線といったところだろうが……あの秘書さんがコーヒーの秘密教えてきたの怖いな。そもそも「龍機兵の秘密と引き換え」って条件だったんだから、それをあのタイミングで教えてきたってことは、「秘密教えてくれてアリガトね」ってことじゃないの? 怖〜。
次巻が早くも気になるところで、溜まった積読リストがうらめしくなってくるが、我慢できなくなったら無視するとして、なるべく早く戻ってきたい。

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