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『フォートナイト』がガイドライン違反を理由にApp StoreとGoogle Playから削除。

The vergeによくまとまった記事が載っていたので、翻訳しました。
(意訳です)

↓原文を読みたい方はこちら
https://www.theverge.com/2020/8/14/21368651/apple-fortnite-ios-app-store-ban-lawsuit-epic-games-payments

【まとめ】
① Epicの動きは唐突なものではない。(業界のコンセンサスが取れている)
② 独占禁止法の絡んだ動きである
③ GAFA内ですら内輪もめしている。
④ Epicは昔からかなりやんちゃ。(Tim Sweeneyがそういう人なんだろう)

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08月13日、Epic はかつてない野心的なFortniteのライブイベントを(現実で!)行い、AppleとGoogleの両方が世界で最も人気のあるゲームの1つをアプリストアから削除するようにわざと誘導した。
このイベントは非常によく練られており、アップルとグーグルが(特にアップルが)、アプリストアを壁で囲み支配していることを非常に分かりやすく示した。
Epic はAppleとGoogleの双方を相手に訴訟を起こしており、この戦いは数ヶ月に及ぶことになりそうだ。Epic は、このスタントを成功させるために独自の立場を築き上げてきており、Appleの仕組み、特にApp StoreとiOSが今後どのように運営されていくかについて、深刻な影響を与えるだろう。

元々App Storeは、iPhoneに付加価値を与え、より多くのiPhoneを販売するために開発されたものだった。スティーブ・ジョブズ氏(補足:アップル創業者。2011年死去)は2008年にApp Storeを立ち上げた際に、ウォールストリート・ジャーナルにこう説明している。

「App Storeを運営するにはお金がかかります。アプリは保存にも、配信にもお金がかかります。無料・有料にかかわらず、アプリである限りそれは同じです。無料アプリを維持するために、コストを支払う必要があります。この仕組み自体が大きな利益を生むとは考えていません。この仕組みは、iPhoneに付加価値を与え、iPhoneがより多くのユーザに求められるためのものです。」。

しかし、 App Storeは現在、5190億ドルの巨大なエコシステムとなっており、Appleがサービスを行う企業として、次なる成長を行うための重要な部分となっており、iPhoneの販売事業につぐ、大きい事業となっているのだ。.

アプリ内での購入に関して、Appleは30パーセントの手数料は10年以上搾取してきた。これは、ディベロッパーを長年悩ませ続けているルールであり、今回のEpicの挑戦のポイントでもある。

今回の論争は、Epic が Fortnite でスキンやその他のバーチャルグッズを購入する際に使用する通貨 V-Bucks に「恒久的な割引」を導入したことが始まりだ。EpicはiOSとAndroid上のFortnite内で独自のアプリ内支払いスキームを経由することで、20%の割引を得られるようにした。
これは、GoogleとAppleのアプリストアのガイドラインをあからさまに回避したものであった。AppleとGoogleは、長年にわたり、ディベロッパーに独自のアプリ内課金スキームを強制的に使用させることで、アプリ内購入の30%を手数料として渡させていた。(なお、サブスクリプションの場合、最低1年間契約させることで、15%までさがる。といっても15%なのではあるが)

アップルとグーグルは、「30パーセントという巨額の手数料は、アプリストアとそれが提供するセキュリティとシンプルさを維持するために必要である」と主張してきたが、この説明に納得した者はいない。
これまで多くのディベロッパーが、ユーザにApp Store以外からサービスを使わせることで、Apple税に対抗しようとしてきた。そして、幾つかは妥協し、iOSでの価格での価格を吊り上げることで、この手数料分を回収してきた。

このルールこそが、 Apple および Google との戦いの中心となっているが、それだけではなく、これは、権力、支配力、そしてゲームと App Store に対する Apple のアプローチが問われる戦いである。Epicは、世界中で3億5千万人以上がプレイしているゲームで、アップルとグーグルと戦うためのユニークな立場にあるからだ。

iOSやAndroidアプリは、AppleのApp StoreやGoogle Play Storeで承認を受けなければ更新できないが、両社はゲームに対して例外を設けており、シェルアプリ内で定期的に更新できるようにしている。小さめのコンテナアプリをあらかじめダウンロードさせ、このアプリがゲームファイルをダウンロードするというものです。Epicはこの例外を利用して、AppleやGoogleの承認なく、アプリ内購入システムを実装しました。

このあからさまなルールの無視により、AppleとGoogleはFortniteをアプリストアから削除せざるを得なくなったが、Epicの迅速かつ明らかに計算されたアクションは、Epicの真のターゲットがAppleであることを示している。

EpicはAppleの象徴的な「1984年」のMacintoshのCMをオマージュした抗議ビデオをゲーム内ですぐに公開しました。
このCMは、全体主義的政治体制に焦点を当てたジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984」をベースにしたものであり、 アップルはスーパーボウルにてこのCMを使用し、1984年のIBMの独占的な優位性を強調し、アップルの正当性を訴えった。
Epicは、Appleは、市場を支配し、競争を阻害し、技術革新を阻害しようとする巨大な存在であると、かつてアップルがIBMに憤慨していたようにAppleが往年の独占企業よりも大きく、より強力で、より定着しており、より悪質な存在であると訴えている。

またEpicは、Fortniteプレイヤーに対して、#FreeFortniteというハッシュタグを付けてAppleに対してツイートするよう呼びかけています。Epicは、Appleの支配力と権力性を訴えるマーケティングキャンペーンを総力を持って行っている。一方、Googleに対しては、このようなバイラルビデオやキャンペーンを行っていない。

GoogleがAppleのApp Storeを大きく踏襲していることを考えると、Epicの焦点がAppleをターゲットにしていることは理にかなっている。またGoogle Playストアを経由せずとも、AndroidでFortniteをプレイすることができるのもポイントだ。一方で、iOSではApp Store以外にiOSアプリをインストールできないことが問題であるという考えているようだ。

近年、今回の訴え以外にも、App Store上のAppleによる抑圧に対する訴えは表出している。今年初め、Spotifyが、App Store上でルールを強制させることで、技術革新を抑圧し、消費者の選択を害していると、欧州連合(EU)に正式な独占禁止法違反の苦情を提出したのがこの始まりだ。

そして、EUはApp StoreとApple Payの慣行について正式な調査を開始した。このSpotifyの動きに対して、Epic 、Match Group、Rakutenが協賛し、AppleのApp Storeの料金に抗議していた。

その他にも、同時期に、Appleは新しいサブスクリプションメールアプリHeyをめぐる論争に巻き込まれていた。 年に一度の大事な開発者会議の数日前にだ。アップルは当初、App StoreでHeyを承認したものの、追加で行われたバグフィックスアップデートを拒否た。このバグフィックスに、アプリ内でのサブスクリプション契約が含まれていなかったからです。(補足:Heyアプリは外部はサブスクリプションサービスであり、外部サイトで契約することを求めている。当然、この契約は外部サイトで行われるのでアップルには手数料が入らない。)この事件は、どれだけディベロッパーがAppleを恐れているかを明らかにし、論議を呼んだ。

このHey事件はAppleはいじめっ子であるというレッテルを貼りつけ、下院反トラスト委員会の委員長に、「AppleのApp Storeの料金は 高速道路強盗(highway robbery)である」と言わせました。

結果として、アップルのティム・クックCEOは、その1ヶ月後に行われた下院司法委員会の公聴会にて(ビッグテックの独占禁止法に関する公聴会)、Google、Facebook、AmazonのCEOと共に、GAFAのビジネス慣行が反競争的な独占ではないことを、議会に釈明するはめとなった。

クックの証言は、特に興味深く、Appleのルールがすべてのディベロッパーに対して、公平かつ均等に適用されていると主張した。
 「我々はすべてのディベロッパーを同じように扱う」と言ったのだ。
 そして、「私たちにはオープンで透明性のあるルールがあります。それらのルールはすべての人に均等に適用されます。」と続けた。
これが本当ではないことは明らかで、なぜならAmazonプライムビデオのような一部のアプリにおいては、30%課金を適用しない「プレミアム・サブスクリプション・ビデオ・エンターテイメント・プロバイダー」という特別なプログラムを用意されていたからだ。

もちろん、契約の詳細に関しては、明らかにはされていない。だが、それでも公開された文書では、アプリ内購入において30パーセントの手数料ではなく、アマゾンに対して15パーセントの手数料を支払うというものになっている。(※補足:正確にはサブスクリプションサービスにおいて、1年目から15%の手数料にするというもの。なお、Netflixとも特別な契約があるといわれている)
 
いずれにせよ, それはクックが示した「オープンで透明性の高いルール」ではないことは明らかで、 これはちょうど1例にしかすぎない。
他に Appleは一貫してそのルールを適用していないの例としてあげると、heyの事件では、Heyメールアプリを拒否した理由として、「クライアントアプリ」は、ビジネス用アプリでは許可されるが、コンシューマ用アプリには許可されないとして説明した。ただし、どこからビジネス用でどこからがコンシューマ用であるかについてのガイドラインはない。

これらの矛盾やルールは何年もの間、ディベロッパーの悩みの種だった。 しかし、多くの人は単にAppleを糾弾するのを恐れていたのが現状だ。なぜならこのiPhoneメーカーが、アプリを承認するかどうかの、裁判官と陪審員であるからだ。そして、拒否された場合において、報道関係者の注目を集められるような立場でもない限り、不服申し立てのプロセスがないためだ。Heyは結局、耳目を集めたことにより、App Storeに戻ってこられた(なお、マイナーな機能の微調整を加えている)。これはEpicが今、再利用しようとしている戦略だ。

Epic はこの流れを実現するために、以前にも、似たようなことを行っている。たとえば、 ソニーが設定したクロスプラットフォームプレイを拒否した問題だ。2017年にRocket LeagueとMinecraftをXboxとPS4間でのクロスプラットフォームプレイをソニーは拒否したが、この問題に対して、EpicはソニーがPS4とSwitch間のクロスプレイを阻害していることを公表し、わずか数ヶ月後に2017年に、XboxとPS4の所有者がFortniteで対戦することを実現した。その後、クロスプレイは『コール オブ デューティ』から『No Man's Sky』まで、あらゆるゲームで一般的なものとなった。

なお、AppleとGoogleに対するEpic のこの反乱は、MicrosoftとFacebookによる、Appleに対する非難のわずか数週間後に発生しているというのも興味深いところだ。
マイクロソフトは、iPhoneやiPad上で新しいxCloudゲームストリーミングサービスが拒否された件に関してAppleを非難した。

「Appleは、Xbox Game Passのようなクラウドゲームやゲームのサブスクリプションサービスを消費者に対して否定する唯一のプラットフォームだ」

とMicrosoftは述べた。

(なお、GoogleはマイクロソフトがxCloudをGoogle Playストアで立ち上げることを許可したが、Androidでのアプリ内購入はSamsungのGalaxyストアでのみ利用できる予定だ。サムスンは他と同様にアプリ内購入の30%を要求しているが、アプリの認証段階で開発者が「代替的な収益シェア率」を交渉できることも明らかにしている。)

AppleのApp Storeポリシーに対するFacebookの批判は、Microsoftよりも一歩踏み込んだもので、Facebook Gamingアプリ内のミニゲームをブロックすることに対する批判だ。Appleの動きは 「ゲーム業界全体で共有された痛みであり、最終的にはプレイヤーやディベロッパーを傷つけ、クラウドゲーミングのような他のタイプのフォーマットのモバイル上でのイノベーションを著しく阻害する」と表現した。

Epicは、自社の利益とゲームコミュニティのより広い利益の両方のために、状況を変えたいと考えていることは明らかだ。ほとんどの小規模デベロッパーは、AppleやGoogleを相手にする余裕はありませんが、Epic は現在173億ドルと評価されており、確実な戦いを挑むことができる。ゲームは、あらゆるモバイルアプリストアの重要な部分であり、App Storeでの収益の大部分を占めている。開発者は、その収益の公平なカットを望んでいますが、これまでと同様にEpicはAppleに対しても変容を促してる。

Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏は次のように述べています。

「私たちは、すべての開発者に平等に利益をもたらすオープンプラットフォームとポリシーの変更を求めて戦っています。この戦いは、Epicが長年準備してきた戦いであり、AppleがiPhone、iOSエコシステム、そしてそれらを束ねるApp Storeを独占していることに対する抗議です」

Epic社は、Cravath, Swaine & Moore社の弁護士に依頼しており、この弁護士には、オバマ政権で反トラスト部門の元米国司法長官補佐官を務めたChristine Varney氏が含まれています。 Varney氏はクリントン政権で連邦取引委員(Federal Trade commission)を務めたこともある人物です。CravathのパートナーであるKatherine Forrest氏もEpicの訴訟に参加しています。Forrest氏は元判事であり、独占禁止法訴訟担当者でもあり、クラバス法律事務所はクアルコムのアップルに対する訴訟に参加しています。

この戦いを巨大企業同士の戦いであるとみなし、Fortniteを台無しにしているものであると見なすのは簡単だが、仮に解決したとすると、Epic だけではなく、モバイルアプリストアに依存している他の多くのディベロッパーにとっても、広範囲に及ぶ結果をもたらすことになる。

Appleは、App Storeのルールを迂回した、2つの価格を並べて表示され、多くの開発者が憤慨している「Apple税」を実証することができる反抗的な競合と遭遇する羽目とあった。Epic は米国での訴訟には勝てないかもしれないが、これは単一の訴訟ではない。Epic GamesはApp Storeポリシーを強烈に強調していて、何億人ものプレイヤーがいるFortniteを変化を要求する手段として武器にしている。

コメント 2020-08-18 011555


ただ、この動きはリスキーといわざるを得ない。モバイルでプレイしているプレイヤーはFortniteの次のシーズンを逃してしまう可能性があるためだ。Epicはこの動きを撤回せざるを得ない。すでに、ほとんどの人がすでに携帯電話やタブレットに Fortnite をインストールしているからだ。幸運なことに、V-Bucksがどれほど安くなるかを知ることができるかがゲーム内で示されたため、コミュニィがすぐに怒ることはないだろう。
ただ、もっと重要なことは、App Store、Apple、Googleといった当事者がスポットライトの下に直接置かれ、訴訟、規制当局、モバイルアプリストアの命運を左右する対決を展開されていることだ。




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