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バター味のアメリカン・サイコ

こんにちは。バイトが暇過ぎて日々、お客様の声 お怒り ご立腹とかでログ検索に勤しむモチヅキアキオです。私の大好きな陰謀論を真面目に語る人もいて、実にゆーいぎな職場環境に身を置いています。

前回の援交小説についてのnoteを読んで下さってありがとうございます!今日は前回の続きっぽくいきます〜。また話があっちこっち飛んでいきますが、暇つぶしにでも読んで下さる方、よろしくお願いします🙇‍♀️(以下、敬称略)


アリアナ・グランデの「7rings」を聞いて、本棚から引っ張り出してきたのが、これ

首都圏連続不審死事件で逮捕された木嶋佳苗の自伝です。婚活で知り合った男性達から多額の金銭援助を受け、殺害したとされています。婚活殺人事件とも言われ……知らない人はwikiでも見てね!(説明の放棄)

※もちろん気をつけるのは、アリアナは自分の力で成功したということ。だから「7rings」で幸せは金で買えると歌えるのです。今回取り上げる木嶋佳苗は、被害者から金を搾り取るための努力はしたかもしれません。ですが刑務所にぶち込まれています。その点を留意して、以下エッセイもどきにお付き合い下さい。


幸せはルブタンの値段くらい♪なんでも買っちゃう♪欲しくなったら買っちゃうの♪ちゃらら〜


自伝と謳われる木嶋佳苗の「礼讃」。しょっぱな冒頭から飛ばしてます。父親には溺愛され、母親との確執をねっとり書き、家の食器のブランド云々カンヌン……描写が緻密だから、大ボリュームな本になってます。本の角で殴ったら、人のこめかみからちょっと血を出せるぐらい分厚いです。

写真を見てるのかと思うほど、記憶力すげぇ!と驚きましたが、後半から怒涛の展開と共に違和感が膨れ上がっていきます。グルメ、ブランド、美意識……これでもかと言うほど、食!ブランドのあれ!これ!それ!が書かれています。合間に幼少期から高校受験〜上京〜出会ってきた男性の数々〜一流に囲まれ、ハイソサエティな暮らしぶりを語る「礼讃」。彼女の豪奢で豊かな暮らしを支えるのは男性達の金。高級志向の彼女は、自分に見合う一流のものを欲しがります。金、男、全てを手に入れても、また欲しくなったら買っちゃう……カルティエで幸せは買えたのかな?

彼女が否定しているので、この「礼讃」には全く殺人の供述はありません。全て、数多いる男性達からの「援助」。自分を愛する一流の男達によって支えられ、彼女の生活がいかにレベルの高いものかと、永遠に綴られています。

この自伝だと触れ込みの礼讃を読みながら、関連本を読んでいくと、ぞっとすることが多いのなんの。

毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ

こちらは木嶋佳苗を語る会談形式で、彼女の生い立ちから逮捕されるまでがまとめられています。自伝同様、こちらでも木嶋佳苗は食に精通し、料理の腕前もかなりのものだったと語られます……が、こちらの会談形式を読むと、被害者の死亡解剖をした結果、まだ消化されていない木嶋佳苗お手製ビーフシチューが胃に残っていたとあり、キレのあるパンチを喰らいます。

この自伝だと言う礼讃、思いっきり「信頼できない語り手」状態になってるんですよね。これと関連本を読んでいくと、一見、上品な語り口で綴られる「礼讃」の綻びが見えてきます。グラグラと土台が崩れていくような、不安な気持ちにさせられます。

毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判

力士工 婚活詐欺事件

で、前置き長くなりましたがやっと本題。というかnoteの題名に突っ込んでいきます。

アリアナの「7rings」から流れて、お気づきの通りヘッダーの画像はみんな大好き、映画「アメリカン・サイコ」のワンシーンになります。予約の取れない高級レストランに行けた同僚に嫉妬した主人公のパトリック・ベイトマン!ブチ切れて斧でぶっ殺すシーンからは目が離せなくなります。

原作はブレット・イーストン・エリス作「アメリカン・サイコ」刊行は91年。

アメリカン・サイコ〈上〉 (角川文庫)

アメリカン・サイコ、面白い〜……と言いたいところですが初見、3回は寝落ちしました。ページを捲るたびに、服が、靴が、生地の素材は……頻発するブランド名。カタログか?と言いたくなるほど固有名詞がずらずらと記述されています。ブランドに疎い自分は全く想像できず、読むのに苦戦。

もう有名過ぎるほどの小説ですから、今更あらすじとか書く必要はあるのか……?て感じですが、かいつまんで。

ウォール街で成功したベイトマンは、立場に相応しい一流ブランドを身につけ、精力的に仕事をこなしている風です。高級スーツを着た自分はどこからどう見てもイケてる。ブロンドの婚約者を従え、売春婦と3P。似たような背格好をした同僚達と、スーツが〜名刺が〜とエリート()な会話を繰り広げ、会食、ランチミーティング、カフェ……仕事何してんだ?イケイケどんどん主人公の憧れはドナルド・トランプ。ビジネスで成功した俺はもっと上にいけると野心満々。全てが順風満帆な人生……の……はず……?

昔なので、予告とかないだろな〜と思っていたら、YouTubeに上がってました。

実はスーツでキめたベイトマンは殺人衝動が抑えきれないのです。ホームレスや娼婦を襲って憂さ晴らしをしていましたが、同僚が予約の取れない高級レストランに行っちゃって……で、ヘッダー画像みたく殺人衝動が加速していきます。

アメリカン・サイコは消費社会への警告とか、様々な視点から語られることが多い作品です。私は難しいことはわからないのですが、「高級」レストランにこだわって同僚をぶっ殺す主人公に木嶋佳苗を重ねてしまいました。

ではでは、バター味のアメリカン・サイコと付けたので、柚木麻子の「BUTTER」の話を。

BUTTER (新潮文庫 ゆ 14-3)

あらすじ……男達から金を搾取し殺害したとして逮捕された梶井真奈子。世間は彼女の美しくない容姿と体型を嘲笑いながら、どうしてこんな女が?!と熱狂します。週刊誌で働くバリキャリの里佳は取材を取り付けることに成功しますが……

木嶋佳苗がモデルになった小説です。題名にあるように、バターを使った料理が出てきます。バター醤油ご飯とかたらこパスタの描写は、読んでるだけでお腹が空いてしまう……食べてもいないのに、読んでるだけで、バターのねっとりした重たい味に頭を支配される「BUTTER」。

私この小説、とても温かみがあるなと思いました。里佳は梶井真奈子と面会を続けていくうちに、仕事だけでなく、私生活まで変わっていきます。途中までシスター・フッドというか、愛憎百合って感じなんですが終盤、裏切られます。そして里佳はある決心をしますが……私は柚木麻子の小説からいつも、元気を貰っています。なんというか、物語の根底に人を信じる強さを感じるからです。

なので、無機質で温かみのない、どこまでも突き放した「アメリカン・サイコ」と一緒に並べていいんか?って思ったりもしますが……(アメリカン・サイコはどこまでも冷たいからこそ、最高の作品なんだと、勝手に思っています。)

「アメリカン・サイコ」の伏線とか、考察は評論家の話とか見て欲しいです。私は正直、浅い見方しかできませんが「アメリカン・サイコ」も信用できない語り手状態というか、主人公のベイトマン自体、存在してるのか?って、わけわかんなくなる物語なんですよね。序盤からちょいちょい、変な感じ。ベイトマンが殺したホームレス、娼婦……嫉妬からぶち殺した同僚の家を根城にしていたベイトマン。様子を見に行くと、殺してきた娼婦の死体の山……じゃなくて、不動産屋らしい女性が。

「ここはポール・アレン(同僚)の家じゃないですか?」

「いいえ。ちがいますけど」

とうとう、メンタルが壊れ、顧問弁護士ハロルドの留守電に、殺人を告白するパトリック・ベイトマン。翌日、ハロルドに出会います。

「おれのメッセージは受けたか?」

「おう、デーヴィス。そうだ、あれはスッゴイね。お前だったのか」

????俺はベイトマンだよ!殺したんだよ!ポール・アレン殺しちゃったんだよ!おいおい、何言ってだ。ポールならロンドンで会ったよ……

ベイトマン、作中でハルシオン摂取しまくってるしね、いや、薬中はデーヴィスか?同僚なんていなかったのかも。だって皆、同じ背格好で、人違いってやり取りが、作中で何度も出てくる。誰が誰だか、分からない。ハロルドは人違いしたのかも、てか同僚て???誰、それ……娼婦を殺したのも、全部、ベイトマンの……デーヴィスの妄想なんでしょう。そんな些細なこと、誰も気にしない。お前がベイトマンか、デーヴィスか、どうでもいい。ヴァレンティノのスーツさえ着ていれば、それでいいんだ……


「BUTTER」の梶井真奈子は本当に人を殺したのか?はネタバレになるので……代わりに私が読んで、胸にストンと落ちてきた箇所を以下、抜粋。

「何が嘘で何が真実か。そんなものに大した違いはない、だったら自分が美味しいと感じる方を選んで何がいけない?」



ここまで約3500字読んで下さってありがとうございます。更新するたびに文字数増えてますね……「BUTTER」読んで腹が減ったので、次回は私が死ぬまでに、ど~~しても食べたい料理が出てくる短編集の話をしたいと思います。

自分は読んでこう思ったよ!ってお気軽にコメント頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。














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