ハト100羽vs男子小学生ふれあい公園金網デスマッチ

だいたい二年くらい前から毎日都会の方に電車で通うようになった。
朝の電車は混むがそれ以外に不自由は感じていない。むしろ大手コンビニが全部徒歩圏にあるので満足しているくらいなのだが、やはり私の住むまちと都会ではぜんぜん違うなと実感する。交通の利便性もそうなのだが、何より、

ハト、逃げなすぎ。

都会のハトというのは基本的に人間をナメている。
都会の人は忙しいのであんまりハトに興味がないし、興味がある人はだいたい経済的に気持ちの余裕がある人なので、近くのコンビニで購入したばかりの食パンをちぎってノーバンでハトにあげている。
ハトからすればちょっとした朝食ビュッフェだ。環境が良すぎる。ハト業界でも屈指のQOL水準じゃないだろうか。
その結果、ハトは人間のことを「安全かつたまにパンをくれるでかい何か」だと思い始め、そのでかい何かに対する警戒心はもう完全に失われてしまっている。生物の適応力というのはすごい。危険のギリギリを攻めて強かに生きているのである。

しかし一方で、この都会のハトたちに対する人間もまた存在する。
ご存知、男子小学生である。
男子小学生はすごい。コスパや効率などという概念を一切度外視して、己の純粋な探求心のみをエネルギーとして稼働している。デカい棒が一本あれば我先にと登りだし、奇抜なアイデアでルールが死ぬほど盛られた鬼ごっこを生み出し、うんこの三文字で小一時間は笑っていられる。
男子小学生には「常識」などという言葉は通用しない。この世で一番自由なのはルフィでも悟空でもなく、男子小学生なのだと思う。
そんな彼らがハトなんかと出会ってしまった日にはもう大変である。群れに忍び寄り、突然足を地面に叩きつけて奇声を上げ、ハトを飛ばす。もちろんその時にはランドセルを腹側に回した「無敵スタイル」で望むだろう。なんたって男子小学生は無敵が大好きだ。

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【対決プレビュー】

ハトサイドとしては、正直男子小学生がかなりやりづらい相手であることは間違いない。
今までの穏やかなサラリーマンとは比べ物にならない凶暴性。そして何より一手先がまったく読めない自由奔放な攻撃スタイル。序盤の主導権を握られることはほぼ確実だろう。
しかし、全く勝機がないわけではない。ポイントは、男子小学生の飽きっぽさ。男子小学生は常に今よりも強い刺激を追い求める。試合の中盤、ハト飛ばしに飽きはじめた頃にカードゲームなどで上手く気を引き、時間いっぱいまで逃げきることができるかが勝敗を分けるカギになってきそうだ。

いっぽうの男子小学生。感情のままに動くスタイルが強力なのは確かだが、やはり先述の弱点に代表されるような成熟する前のメンタルに不安が残る。
給食のメニュー、母親とのかねあい、好きな女の子の動向………
本来の力が存分に発揮できるコンディションが整っているかどうかが重要なファクターとなってくるだろう。
当たれば強い最強のロマン砲、大爆発を期待したい。


相対する2つの勢力。

強かさと、奔放さ。真正面からぶつかったその時、我々は何を目にするのか。

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こういう企画を今度の町内春祭りでやろうと思うんですけど、どうですかね、町長。

え?金網が危ない?


いやでもそこはデスマッチなんで…………

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