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情報のさばき方ーありがとう、外岡さん

朝日新聞の外岡秀俊さんが亡くなったという記事を読んだのは数日前のこと。
「なんか聞いたことがあるな…」と思った程度でした。
その後、尊敬する記者の先輩達がSNSでR.I.P.投稿をしているのでやはり気になって書斎へ。
ありました。

「情報のさばき方」(朝日出版社)。

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思い出しました。僕はこの方にお会いしたことはないのですが、20代に記者時代この本に出会いたくさん助けてもらっていたのでした。


「自分の位置情報を確認しろ」。

これがこの本のテーマの一つでした。
人間は様々なバイアスのメガネをかけてたくさんある情報から批評や判断をしています。
めちゃくちゃ調子いいと思っていても実は他者のおかげだったり、利用されているだけかもしれません。
相対的に様々なスタンスを比較し、全体の文脈の中で自分はどこにいるのかを知ることの大切さを教えてくれました。
それから、特ダネを手に入れた時ほど、この人はなぜ自分にだけ情報をくれるのか、自分との位置情報を考える癖がつくようになりました。それからは、知っても書かないこともありました。


その後、「位置情報」という言葉はずっと僕の芯の部分に刷り込まれていました。いまでも、他人の人生を生きるのではなく、自分で選択した自分の人生を生きる為にどうすればいいかと考えるときに、位置情報という言葉が不思議と浮かんできます。九州大学で講義したときも、「位置情報」という言葉を使いました。外岡さんすみません!


この本が書かれたのは2006年。
まだiPhoneも生まれない時期ですが、外岡さんはITの時代にメディアは権威から信頼が影響力のバロメーターになると予言しています。


「人間の持ち時間は、どれほど便利になっても、一日に24時間しかありません。人間の情報の吸収度や咀嚼度も、技術の進展に比して飛躍的に高まるというわけでもありません。情報の量が増えるほど、メディアの種類が増えるほど、人は逆により厳しい情報の選択を迫られるという皮肉な現象が起きてしまいます」


外岡さんありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

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