言葉のタイムカプセル

実はこのブログを書く前、別のブログを書いていたことがある。

いくつもブログがネット上にふわふわ浮いているのはどうかと思い、削除でもしようかと読み返していたところ、なんとも消しがたい良い文章がいくつかあったので、ここに転載して残しておくことにする。

これは、2018年の夏休み、大阪にひとり旅に行った際のブログである。



私は元気に新大阪に向かっています。

安定の寝坊(それも2時間)でスタートしたこともあり、準備できているのかも把握しきれていないまま家を出た。

なんばでお笑いを予約しているため、そこまでの到着はマスト。今日唯一の確定した予定である。

12時30分の新幹線にのれれば大丈夫だと安心していたが、東京駅は息苦しいほど混んでいた。

そう、今日はお盆休み初日だ。

実家からおばあちゃんの家まで車で5分or隣の家。一人暮らしの家から実家まで在来線で2時間の僕にとって帰省ラッシュは日常ではない。

ああ、こうやって自分の関係ないことが常識から抜け漏れていくんだなあとフワフワしながらチケットを購入した。

12時30分発、残り指定座席ひと席!

これしかない!と思い切って購入。

ふと時計を見るとすでに12時25分。

走って改札へ。

何故東京駅構内は冷房が効いていないのだろう。と思いながら改札を通るとここでも僕の抜け漏れた常識が。

乗車券を買い忘れていた。

親切に教えてくれる駅員さんにひどい態度をとってしまった。

だって、あと3分で出発してしまう。

そうなればチケットもお笑いもおじゃんなのだ。

優しさに必要なのは余裕。これに尽きる。

ごめんなさい駅員さん。ちゃんと乗れました。ありがとう。

最後のひと席。もちろん3人席の真ん中。

トイレ芸人の僕にとって厳しい闘いになる。

僕の両脇は2人ともご飯を食べていた。

お弁当を置いているテーブルを片してもらい真ん中の席に入り込んだ。

早速ご迷惑をおかけし、トイレに行く時の申し訳なさが際立つ。

と思ったのもつかの間、座った途端に寝てしまった。2時間も寝坊したのにである。

ビールとシュウマイ弁当を食べていたそのおじさんは僕が眠りについていた間に降りていた。

その人と入れ代わりで入ってきたのはお母さんと娘の親子2人。娘は3歳くらいだったと思う。

あら、ひと席しかないけど大丈夫?

と思っていたらなんてことはない。

女の子はちょこんとお母さんの膝の上に座った。その2人の形がなんだかあまりにもしっくりきていて、しばらく見てしまう。

ああ、君にとってはどんな席よりお母さんの膝の上が特等席なんだね。

とっても居心地が良さそうだもんね。

そんなこともあって少し隣の親子を気にしていたら、お母さんが娘さんにマフィンみたいなものを出して「こちら、どうでしょうか?」と言った。

そしたら娘さん、大きな声で「いいです!」って。いつもやっているやりとりなのか?今アドリブでやったのか?

どちらにせよ、あまりに可愛いひと幕だった。

しばらくして、女の子の足が僕に当たった。

お母さんは申し訳なさそうにすみません。

と娘さんの足を手で抑えた。

すると娘さんはその手を持って自分の顔まで持っていった。

手を繋ぐのかな〜と思って見ていたが、

娘さんはお母さんの指を食べた。

あまりの面白さに吹き出してしまった僕は

笑いながらすみませんと言った。

するとお母さんも爆笑しながら

すみません。

と言ってくれた。

2018年、これよりも素敵な"すみません"を聞けることはないだろう。

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