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【この本を読んで考えた】思い出トランプ

名前は以前から知ってて気にはなっているけれど、まだ一度も作品を読んだことがない作家さんがすごく多く、向田邦子氏もその一人だったのだが、今年の新潮文庫のプレミアムカバーのシリーズに入っていたことから、この本を手に取る機会に恵まれた。

この短編集の作品は日常の中のたった数時間であったり、数日の間を切り取っての話だったりするのだが、情景の描写もすっと入ってきて、登場人物に至っては、もし映像化するならこんな感じの俳優がこんな表情でと想像してしまうほどである。

退屈な隙間が全然なく、一編読み終え、新しい扉を開く度にワクワクした。

この小説の中の夫は全部ではないが、だいたいが寡黙でどーんとしていて、実情はともかくとして、たいてい妻の方が従っている雰囲気で、そういえばうちも父親が偉そうにしてたなあと思い出す。

母親が言うには、父と一緒にいる時に、母がそばで手芸などをしていてもダメで、何もしていない状態で側にいなければ気に入らなかったとのこと。

後に私にこぼしてたくらいだから、母も言われるように側に控えさせられながら、実は色々思うところがあったのだろう。

父親の暴君については、どうせ自分が上だと偉そうにしたいだけなのだろうけど、そういう表に出ている面と、対する胸の内とを手にとるように見せてくれるのが、この作品たち面白いところだ。

もし、向田邦子氏が平成、令和と書き続けておられたら、どんな夫婦、どんな家族が描かれていたのだろうと思う。

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