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骨、つぶれる。

 こんにちは、あるいは初めまして。2021年春、骨が潰れたのでnoteを始めます。

骨って潰れるの?

 潰れます。

骨折したってこと?

 いいえ、骨が折れた状態とは違います。文字通り、ぐしゃっと潰れました。

なんで?太り過ぎ?

 潰れてしまった原因のひとつではありますが、根本的な要因ではありません。詳細は後述しますが、簡単にいうと骨が死にました。

どこが潰れたの?

 大腿骨頭という、股関節の骨です。骨盤に収まっている丸い骨で、脚を動かすだけでなく体重を支える重要な部分でもあります。なので、ここが潰れて痛むとQOL低下どころか普通に寝たきりになります。

痛いの?

 バチクソに痛いです。ただ、症状の進行具合によって痛む箇所や程度がかなり違います。歩くのがつらかったり、階段の昇降が難しくなります。日常のちょっとした動作でも、太ももや腰に力を入れることは意外と多くあり、思わぬ場面で激しい痛みに襲われ絶叫することになります。

……治るの?

 ほとんどの場合、自然治癒は見込めません。痛みがあれば鎮痛剤による抑制と運動制限により保存的治療を行いますが、日常生活に著しい支障があり患者本人が希望する場合、骨切術という手術を受けるか、人工関節を入れることになります。

怪我なの?病気なの?

 「特発性大腿骨頭壊死症」という病気です。

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 お読みいただきありがとうございます。
 2021年8月上旬から血糖コントロール期間を含めた術前入院をすることになりました、りおりおです。
 診療科は整形外科、人工関節置換術を受ける予定です。

「特発性大腿骨頭壊死症(とくはつせいだいたいこっとうえししょう)」、字面がイカついですが「原因はよくわからないけど股関節の丸い骨の一部に血流が届かなくて骨が壊死しちゃいました」という意味です。発病メカニズムが解明されておらず、難病に指定されています。大まかな発病リスクとしては、

①アルコールの多飲歴がある
②ステロイドの多量内服治療歴がある
③減圧症

の3つがあるそうです。
 わたしはお酒が大好きで、妊娠するまで毎晩のようにアルコールを愛飲していました。さらに、昨年重症薬疹の疑いで入院し、多量のステロイドを内服する治療を受けました。
正直どちらで発病していてもおかしくありませんが、壊死を見つけてくれた医師いわく「恐らくステロイド性」とのことでした。ここからはステロイド性の骨頭壊死について話していくこととします。

発病と発症はちがう

 左股関節に痛みが生じたのは2021年の春ごろ。中毒疹の治療を終えてから1年ほど経っていました。歩くとピキッとした痛みが走るようになり、それは一歩を進むごとに強くなりました。心なしかあぐらの姿勢も取りづらくなり、すっかり暖かくなるころには、左脚は右脚の半分ほどの高さまでしか上げられなくなっていました。

 わたしの骨はこのとき死んだのでしょうか?

 答えは否です。痛みを感じるより前に、大腿骨頭の一部は血流が滞ったことにより壊死に至ります。腐ってはおらず、壊死した骨組織は骨としての機能を喪った状態です。この時点では自覚できる症状がありません。しかし、身体には病変が生じているので発病ということになります。
 その後、何かの拍子に壊死した部分が潰れると、股関節に痛みが生じるようになります。痛み、という症状が発現したので、ここで発症となります。いつ壊死したのか、何が原因で血流が滞ったのか、詳しいことはわかりません。

 発症したころのわたしは、甘えたい盛りの子どもにねだられるまま抱っこを繰り返していました。利き手と反対の左半身で、文字通り小脇に抱えるようにして、10kgをゆうに超える身体を毎日何度も持ち上げては下ろして。そのうち、左股関節が少し痛むような気がしてきましたが、そんなことには構っていられませんでした。今にして思えば、あのときの無茶が圧潰の大きな原因だったのだと思います。 

健康な股関節と骨盤 骨頭は軟骨に覆われています

発病 白い線より上が壊死範囲です  水分も溜まっています

体重のかかる部分から潰れます 潰れた骨頭により軟骨もダメージを受けます
これ以上進行すると股関節が変形してしまいます

画像は自分のCTやMRI画像を参考にしました。かなり簡略化していますが概ねこんなイメージです。

“ステロイド性“ということ

 ステロイドとは、強い抗炎症作用のある薬です。医療従事者ではないので詳細な説明はできませんが、体内で作られているホルモンを薬として投与し、炎症を抑えたり免疫を抑えたりします。大きな炎症があるときや免疫異常があるとき、一定量を一定期間内服、または点滴することによって症状を抑えます。

 わたしの場合は、頓用した薬によるアレルギー症状が疑われる発疹が全身に発現し、紫まだら人間になってしまったため即日入院。治療はステロイド錠剤を1日60mg×3日間→55mg×3日間と、3日で5mgずつ減らしていく漸減療法をとりました。

 これが後に、骨頭壊死を引き起こします。

 大腿骨頭周辺の細い血管に何らかの理由で血が通わなくなり、骨が死にました。この「何らかの理由」にステロイドの多量内服治療が関係しているようだ、ということしか判っていないのが現状です。
 自分は紫まだら(多形紅斑といいます)を治しただけです。なのにそれが原因で人工関節を入れることになるとは、夢にも思いませんでした。痛いし、うまく歩けないし、子どもの相手も満足にしてあげられないし、息抜きに出掛けることもできない。思うように動けないストレスはわたしを苦しめました。

今できる最善を尽くすこと

 ここで大切なのは、この時の入院治療において「ステロイド内服による治療は適切だった」ということです。全身が紫のまだらになるのは普通にやばいです。そしてどんな病気の治療でも、ゼロリスクはあり得ません。ステロイドの内服によって副腎という臓器の働きが鈍くなるかもしれない、という説明も受けました。幸いこちらは正常で退院できましたが、鎖骨周りの毛穴という毛穴が嚢胞(ニキビのような吹き出物)になってしまい、その後しばらくは皮膚科でお世話になったりしました。
 それでも、ステロイド治療をしたことは後悔していません。そして、それは大腿骨頭壊死が見つかった今も変わりません。
 なぜなら、治療にあたってくれた医師はその時々で最善の方法を考えてくれているからです。紫まだらは1週間もすればすっかりキレイになり、ステロイドを飲み切った後は再発もありませんでした。この時点でわたしの大腿骨頭が壊死するとわかっていた人は誰もいません。そしてそれがわかった今、今度は整形外科で手術をするという、今できる最善の治療をしています。
 運が悪かったと思います。どうせ引き当てるなら宝くじ100万円当選する方に運が向いてほしかったし、誰も何も悪くないから理不尽な怒りや悲しみを向ける矛先がなくて、周りの人に八つ当たりもしました。体重も増えて楽しみも減って、泣くほどつらかったです。
 でも、起きたことは起きたこと。今できる最善を、その時々で尽くすしかありません。

気になる痛みは病院へ

 椎間板ヘルニアの気があるわたしは、この痛みをすっかりヘルニアの悪化だと思い込んでナメてました。実際、重い腰を上げて病院で検査をしたところ、やっぱり軽いヘルニアが見つかりました。その後1ヶ月自宅で安静にしていましたが、左股関節の痛みだけはどうにもならず、改めてMRIを撮ったところ骨頭壊死が発覚したのでした。
 痛みがあるということは、十中八九潰れ始めているということ。壊死の範囲にもよりますが、放っておくとあっという間に圧潰が進んで股関節が変形してしまいます。
 また、過去に股関節付近を骨折したことのある方は「外傷性大腿骨頭壊死症」という「原因が過去の骨折だとはっきりしている骨頭壊死」が起こることもあります。名前が違うだけで同じように骨頭が壊死します。こちらは指定難病ではありませんが、痛いことには変わりないので、気になることがあったらすぐに病院で診てもらうことを強くお勧めします。

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