手塚治虫『火の鳥(ヤマト編・異形編)』
はじめに
この3巻は案外と面白い話である。
「ヤマト編」の場合は、特に大王が面白いのであろう。
まるで、ハックション大魔王かのような感じだった。
「異形編」はいかにも教訓を得られるような、怪談に近そうな内容だった。
その人を殺すとその人と同じ運命に辿りますよと火の鳥が教えているかのようだ。
『火の鳥(ヤマト編・異形編)』を読んで
『火の鳥』3巻目。
「ヤマト編」(古墳時代)と「異形編」(平安時代)。
「ヤマト編」はヤマトとクマソとの関係性に基づいた話である。
王族はなぜ、立派な古墳を建てるのに人々を生贄にして犠牲にするのか。
ヤマトとクマソは敵同士だけれども、クマソ
の娘(女戦士)の嫁になって、クマソ自体が歓迎するはずだが、ヤマトはそうは行かずに火の鳥の指示に従って、クマソを殺した。
火の鳥っていうのは、人間以上恐ろしい力を持っている神の存在なのだ。
「異形編」の話がこの巻の中で一番好きなストーリーなのである。
最初、左近介は美青年の男性かと思ったら、女性だったので驚いた。
男装だったのね。
美青年の男性にしても、画策が手塚治虫ぽい感じはしなかったけれども、読んでいくうちに後で女性だと納得した。
でも、手塚治虫の女性の書き方って、そんな今風漫画的な感じがしなかったハズ(娼婦や踊り子は別だが)。
顔が似ている尼に嫉妬しているので、殺そうとしたのだが...。
左近介は尼さんの呪いで、自ら尼さんと同じ運命に辿ることになる。
つまり、自分の顔に似た尼さんは自分って言うことかな。
こうやって、逃れない運命はループ状に繰り返していくんだね。
自分がやった過ちは自分に戻ってくる。
これはもう、宗教的要素が含まれたストーリーなのだ。
左近介の父親って猿田彦に似ているけれども、これはもしかしたら、先祖が猿田彦って言うことかな。
最初、ジャイアンみたいなガタイの大きな武将が現れて、最終的には鼻がデカくなるっていう。
鼻が大きくなるのは、あれは病気か。
左近介の父親は平清盛か武田信玄っていうのを推測するが違うか。
実際上の歴史人物は鼻がでかくなりません。
父親から男性として扱われ、ほぼ虐待かのように厳しい訓練を受けられていた左近介は、本来は女性の姿をしているので、普通に女性として生きたかったというトラウマを抱えていた。
尼さんの斬殺の過ちで、尼さんと同じ運命に辿ることになった左近介は飢餓、戦死者そして百鬼夜行の妖怪等を次から次へと治療して、その分の罪の償いから責任を果たしたということが良かったと思う。
おわりに
人間っていう生き物は欲情に溢れた者である。
人間が人間を殺したり、残虐な行為をすると、結局は自分に戻ってくる。
まるでブーメランかのような感じ。
だから、人の命は大切にしなさいと火の鳥は人間に対してそう思っているからである。
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