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【詩】温かな泥と祖霊崇拝について



 異国語で形容されていく風景たちが、窓辺で色合いを失い青みを強めていく過程で、泥濘がわたしたちを溶かしてゆく。温めたマグカップに入れた砂糖菓子。いつだったかの祭事で、同じように溶けていった先代たちの眼球を身体の下に発見し、わたしたちはそれらにそっと触れる。まったく知らない語族の語群はただの記号でしかなく、泥の中で偏と旁の結合がほどかれ、助詞たちはするすると文脈から逃げだすのだと聞いたことがある。泥濘の中、わたしたちの瞼はは眼球を覆い、ひそやかな音を聴く。離れていく、音。

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