昼下がりの駅のホームに、私は私の小さな犬を見た。今にも語ろうとする犬。おまえの犬は犬ではないと言われたけれど、私の犬は紛れもなく犬で、私は私の言語を持たない。犬を抱えたままバスに揺られた。私たちはみんな犬を抱えていて、マスク姿で街を歩く。犬を撫でるやさしさで、これでよいと思う。

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