いつかくるさよなら
ここ最近、恋人に対しての自分の気持ちに変化があった。
付き合って約8ヶ月。たった8ヶ月。
これまでずっと、というか恋人が他の女の子とデートした件で喧嘩してからずっと、恋人はいつかきっと浮気するだろうし別の女の人を好きになってしまうだろうし、未熟で頼りない中身も、きっとずっと変わらなくて喧嘩を繰り返すんだろうし、わたしもそれにうんざりして同い年だったり年上だったりの人を好きになるだろうし、とりあえず6つも年下の男の子にうつつぬかしたりするようなことはないんだろう、とか、恋愛と結婚はきっと違うものだから、今の恋人とは結婚することはないんだろうな、なんてとても悲観的なことばかりを考えて過ごしてきた。
それが恋人に失礼なことも承知している。
でも恋人の誕生日くらいを境目に、だいぶ気持ちに変化が現れた。
いつも、何があってもどんな喧嘩をしても、
「ぼくはてちさんのことが好きだよ、離れることはないよ」
そう言ってくれる恋人の、その
「ずっと」を信じたくなったのだ。
もともとわたしは、いつかどうせ終わりはきてしまうものだと思いながら物事と向き合う性分で、それは恋愛においても同じだった。そんなわたしに恋人は「絶対はないけど、ぼくはずっと一緒にいたいと思ってるよ」とよく言うのだった。
恋人の誕生日に贈る動画を作成している時、自分で確認しながら何度も泣いた。恋人が愛おしくて、何度も何度も。
これまで、誰かが愛おしくて涙を流したことなんてない。
だからこそ、なぜわたしは恋人のことをこんなにも好きなのか、はたまた恋人もなぜこんなわたしが好きで一緒にいてくれるんだろうかと、不思議でたまらない瞬間がたくさんある。
それでもお互いに好きだと思うのだから仕方ない。
だから一緒にいる。
でも、恋人がわたしの夫に、わたしが恋人の妻になったときのことを考えてみたり、子供ができたときのことを考えてみたりすると、どうしても恋人の未熟さが邪魔してうまく想像ができずにいる。
恋人には、これから先社会に出たとき変に困るような大人になって欲しくないし、できることならたくさん褒められて自己肯定感が上がるような人生を送って欲しいと思う。ただ、そう思うばかりにそれが裏目に出て説教じみたことしかできずにいる。とても反省している。
話は戻るけど、それでもわたしは恋人といたいから、恋人の「ずっと」を信じようと思えたし、そう決めたところだった。
昨夜、2人で手を繋ぎながらコンビニに行ってお酒を買って帰り、ほろ酔い気分でいたときに恋人が突然話し始めた。
それは、恋人の価値観とわたしの価値観の話だった。恋人と喧嘩したりすれ違ったりしてしまった時は大抵、恋人とわたしが一緒にいるためには、恋人が的外れなことばかりをしてしまったのが原因なことが多い。
そういうときはわたしが毎度毎度、「こうこうこうでこうだったらこうだよね、こういう気持ちにならない?」と恋人に一つずつ話をしていくのがデフォルトになっている。
恋人からの話は結果的に、「価値観の違いをお互いに理解していきたい」というような着地点だった。
わたしはこの時頭の中では「わかってる、そうしていかないと一緒にはいられない」と思っていたのだけど何せ酔いが回ってまともな状態ではなかったので自分でもその時どういう言葉を言ったのか覚えてない。けれど、また自分の価値観を押し付けた。
結局、話はまとまらないまま、寝ることにした。
恋人はトイレに入り浸っていたのでわたしは先に寝た。
ふと目が覚めた時、恋人はベッドに入っていたがまだ起きていて、携帯のメモアプリに長文を打っていた。寝ぼけ眼で、視界に入ってきた霞む文字を読んだ。
かいつまんで理解した内容は、別れようということだった。ただ、そこに見えた"1年と少し"という文字にとてつもない違和感を感じて目が覚めた。
わたしたちはまだ8ヶ月しか一緒にいない。
出会った時のことを合算しても1年経っていない。
要するに恋人は、1年と少し経ったときにわたしに送るための別れの文章を、8ヶ月の今、打っていた。
身体中の筋肉がこわばって、震えて、腰から下が変に痙攣するのがわかった。恋人に背を向けながら「どうせ別れるなら今別れようよ」と言った。恋人は、違うよ、これはいつか送るときが来たらと思って打っただけで今送ろうとしてるわけじゃないよ。送らないよ。と言ったけど、そんな文章を打ってる時点でもう終わりだよ、としか思えないわたしはおかしいのか。
あなたが終わりと言うならそうしよう、今日で終わりにしよう。
そう言われて、未だに筋肉はこわばった状態だったので、どうにか落ち着かせて、泣かないように、声が震えないように、話した。
-いつから思ってたの?
-さっきだよ。さっき価値観の話をして、それでもあなたは自分の価値観と考えに固執して、僕を理解しようとしなかった。もう無理だと思った。だからトイレでこれを打ち始めた。
そこからは、お互いの嫌いなところの話をした。
あなたのやり方は、誰のことも幸せにしないよ、と言われた。恋人は、何度もわたしと別れる時に送るための文章を作っては消して、を繰り返していたらしい。
そんな状態でもわたしと一緒にいてくれたことを感謝するべきなのか。何だか変な話だよなぁ、と思った。早く言えばよかったのに、って。
わたしがあげたプレゼントは捨ててねと言った。ぼくの好きにさせてと言われたけど、お願いだから捨ててと言った。どうしてと聞く恋人に、あの靴は、わたしがあなたとこれから先いろんなところに一緒に行きたくて、そのためにプレゼントしたからと言うと、納得してくれた。
恋人がくれたハーバリウムも、一緒に作ったハーバリウムも、一緒にどこかに捨てようと言った。
あなたの思ってることは何も聞いてないよと言われたが、きっと恋人の好きは錯覚だったんだよとしか言えなかった。
話せば話すほど、あの時ああだった、あれはああだった、みたいな話しか出てこなくて、キリがないのでお互いにやめた。
今はまだぼくの恋人だって言いながら抱きしめようとする恋人を強く突き放して、「わたしは最後にこんなことしたくない」と言って最後まで自分の価値観を押し付けた。
少し寝たけど目が覚めた。恋人も寝てた。たくさん話したので喉が乾いて水を飲みに部屋を出た。部屋に戻って、恋人にちゃんと布団がかかっているかを確認した。
わたしサイズのベッドと布団なので、恋人はよく足だけ被らないまま寝ている。やっぱり足が出てた。ちょっと笑いながら、足まで布団をかけてあげた。
これが最後かぁ、と思いながら布団に入ったら、やっぱり涙が出てきた。弱いなぁ、でも恋人の前で泣かなくてよかったと思った。
鼻をぐしぐししてたら、隣から「早く寝ろ!」と、少し笑いながら恋人に言われた。
寝たふりしてた、と言う恋人に、恋人の方は一切向かず上を見たまま、いつから?と聞くとずっと。らしい。
また、恋人に抱きしめられた。
「別れたら誰がぼくのあれらをやってくれるの?」と、今までわたしが恋人のためにしてきた許してきたことを、たくさんあげられた。
「別れたら誰があなたのあれらをやってあげるの?」と、今まで恋人がわたしのためにしてくれたこと許してくれたことを、たくさんあげられた。
全部あなたしかいないし、ぼくしかいないよと言う恋人は、あり得ないほどずるい。
まぁ、その話をされているときわたしはきっといつか誰か現れるから大丈夫だよと思っていた。
「やっぱりてちさんだなぁ。」
とんでもなくずるい言葉だ。
なんでと聞くと、「寝たふりしてたって言ったでしょ?あの時てちさんがぼくの足に布団をかけてくれて、やっぱりぼくにはてちさんだなぁと思った。てちさんしかいないなぁと思った。」と言う恋人にわたしは、ほんとにそれでいいの?と思ったけど、もう言うのをやめた。
絶対に、別れるなら早いほうがいいと思う。脆いわたしたちなので、尚更そう思う。今後の雲行きはいつだって怪しい。なんで別れないのって聞かれると、多分わたしはもごもごしてしまう。どこが好きなのって聞かれても多分、もごもごしてしまうと思う。
ばかだねって笑われてもおかしくない。呆れられてもおかしくない。怒られたっておかしくないくらい。
正直、自分の中の恋人に対する感情が安定しなくて、わたし自身混乱している。きっとそれは恋人も同じなんだろう。
この記事は、わたしの考えがまとまったわけでも、わたしたちのこれからがどうなるか決まったわけでも、気持ちが通じ合ったわけでも、なんでもない。
ただの、備忘録でしかない。
わたしはどうすればいいんだろうな。笑えてくるな。
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