見出し画像

「原稿が進まない病」からの脱却: マイ工程表

原稿が進まない。

夕方4時、西日がオフィスを照らし始める中、目の前に広がるのは焦る気持ちだけ。企画書の締切はもうそこまで迫っているのに、全く筆が進まない。

おかしい。今回こそはきちんとしたものを書こうと1週間も前からやりくりしてきたはずだ。たしかに、いつもなら雑務に追われているのを言い訳に、やっつけ仕事をその場しのぎでやりかねない。だが、それではマズいと今回はきちんと考える時間をとろうとした。雑務を事前に片付けて、今日は一日考えるデーにして、予定をあけておいた。そこまではよかった。

ところが、いざ朝からやるぞと気合を入れたのも、昼前にはすっかり意気消沈だ。アイデアが生まれない。筆が進まない。気分転換にと外にランチを食べに行き、また午後から考え始める。

午後2時、お昼ごはんを食べすぎたのか、だんだんとまぶたが重くなる。これはイカん。休憩がてら外に散歩に出かける。世の大家は、机の前よりむしろ散歩の途中にひらめきが降りると聞いたことがある。淡い期待をしながら外をウロウロする。が、一向にアイデアの神様はおりてこない。

気がつけばもう夕方。朝一番の気合はなんだったのか。今回も火事場の馬鹿力になってしまうのか…

なにか考えたり、ものを書いたりする仕事をしている人は、多かれ少なかれ似たような経験をしているのではないだろうか。

そんな原稿が進まない病が進行中のあるとき、先輩からこんなことを言われた。

「とりあえず平凡な案でいいから、とにかく出して。」

なにを言ってるのだろうかこの人は。誰でも出せるような案を書いたところで、ボツになるのは目に見えてるじゃないか。

とりあえず言われたとおり案を出す。

「うーん。」

予想通りのリアクションだ。

「これをもとに、明日もう少し内容ひねってみて。」

あれ?作り直しじゃないのか。言われたとおりに少し内容を変えてみた。

「もう少し内容ひねってみようか。」

さらに、少し内容を変えてみる。そんなことを何度かキャッチボールをしているうちに、不思議なことに、ただの平凡な案がそれっぽい企画書になってきた。

「ほら、できたじゃん。」

最後の最後に、ようやく先輩の意図がわかった。

自分はこれまで、長い時間じっくりと考えればアイデアが生まれて、すらすらと筆が進むと思っていた。そこが根本的に違っていた。人間集中して考えられるのは1日せいぜい1時間、いや先輩の言葉を借りると、15分考えて何も浮かばないなら、1日考えても浮かばないのだ。

じゃあどうするか。1日かけてずっと考えていたことを、3日や5日に分けてみるのだ。1日あたり最大1時間。とりあえず完璧でなくてもいいからその日の結果をカタチにして、次の日の自分に託す。そうすると、不思議に何日も考えても進まなかったような難題も、見通しが立ったりするもので。

そこから、マイ工程表なるものが仕事に登場した。以前なら一日かけてやっていたことを、あえて複数日に分ける。そうなると管理が必要になり、ちょっとしたガントチャートらしきものを引き始めるになったのだ。

このマイ工程表制度、筆が進まない多くの人にも助けになるかも。そう思っていた矢先、まさに同じことをされてる方のインタビューを見つけて深く共感する。これはぜひ一読の価値ありである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?