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上海乗り継ぎRTA【芋頭monkeyのオーロラハント#3】

このnoteは芋頭monkeyのオーロラハント#2の続きです。

生物は危機に瀕すると、瞬発的に凄まじい能力を発揮することができるといいます。
いわゆる火事場の馬鹿力というやつです。

今回の旅でも、2週間あればいつかトラブルに見舞われることもあるだろうなと思ってましたし、その時は火事場の馬鹿力で乗り越えようとも思ってました。

スタート地点が火事場でした。

成田空港


今回の旅の開始地点は成田空港でした。
羽田が新しくなってからというものなんだかNo.2的なイメージのある空港ですが、やっぱり空港というのはワクワクします。

今回の往路の航空券は以下のタイムスケジュールでした。

9/5 19:30 成田空港発
ー3時間20分のフライトー
9/5 21:50 上海空港着
ー3時間10分の乗り継ぎ時間ー
9/6 1:00 上海空港発
ー12時間10分のフライトー
9/6 7:10 ミュンヘン空港着
(全て現地時間)

やっぱりヨーロッパは遠いですね。
ただ、夜のうちに飛んで現地時間の翌朝に着くことを考えると時差ボケも少ない気がします。

成田空港には出発の2時間前に到着しました。
それでもチェックインカウンターには長蛇の列。
今回は窓口で聞かなくてはいけないことがあったのでオンラインチェックインや自動チェックイン機は使いませんでした。

のんびり列に並んでいたら、前のご家族が話しかけてきました。
大学2年生の青年とそのご両親です。どうやら青年が初めてのドイツ1人旅行らしく、ご両親はお見送りに来ていたようです。
エアチャイナのチェックインの仕組みがよくわからないらしく、僕に色々と質問をしたというわけです。
ジャージ姿にバックパックを背負って1人で立ってたので旅の上級者にでも見えたのかもしれません。
エアチャイナのチェックインの仕組みは事前によく調べていたので色々と教えているうちに青年と仲良くなりました。

基本的に一人旅は寂しいので短い間でも話し相手ができたのは大きな収穫でした。
そのまま特に何ごともなくチェックインを済ませて搭乗口まで進み、SIMカードの入れ替え設定も終えて飛行機に乗り込みました。

さて、待ちに待った旅が始まります!
このために何ヶ月もコツコツとバイトをしてきましたし、たくさん準備をしてきました!!
もう脳内にはドラゴンクエスト序曲が流れています!!!

なんか、機内アナウンスも流れてきました。

トラブル発生

機内は帰国の途につく中国人観光客で満席でした。
隣の中国人のおっさんが機内エンターテインメントの操作方法が分からなくて困っていたので、ボディーランゲージで操作方法を教えてあげたりして、のんびりとした雰囲気。

…いや、のんびりしすぎじゃね?
もちろん離陸には時間はかかりますが、そのレベルじゃないほど飛行機が動きません。

そこに流れる機内アナウンス。

アナウンス「&#☭〄;$※♂☞?」
周りの中国人客「ア゛ァ!?」

え?なになに??なんて?

エアチャイナはもちろん中国語からアナウンスが始まります。
何言ってるかなんて一ミリもわかりません。
脳内に中川家の礼二が出現します。

礼二「○%×$☆♭#▲!※」
隣のおっさん「はぁ〜(荷物をまとめはじめる)」

いやいや、は??
とりあえず僕も荷物をまとめます。集団心理。
ここでやっと英語アナウンスになりました。
どうやら機材トラブルで今から機材の交換をするから一旦降りろとのことです。

え?降りるの??

とにかく成田空港の搭乗口まで逆戻り。
カウンターにはバチボコに文句を言う中国人観光客の列。
その様はまさに中国大陸を横断するシルクロード、いやむしろ怒りのデスロード

僕の目的地は上海ではなく、そこで乗り継いでミュンヘンに行かなくてはなりません。
予定していた乗り継ぎ時間は約3時間、時間的余裕があるので手持ちのお金を少し元に変えてお買い物でもしようかと考えてました。
しかし、もしこの遅延が3時間以上かかる場合、そんな呑気なことは言ってられません。
ただ滑走路が混雑してるくらいならいいですが、機材を交換すると言われると嫌な予感がします。

まずは乗り継ぎがちゃんとできるか確認するために僕も怒りのデスロードの最後尾についてV8。
聞いてみれば、「乗り継ぎの余裕があるかはわからない、現地に着いてからそちらのスタッフに聞いてくれ」の一点張り。

そこでまたもや礼二アナウンス。中国人客は肩を落とします。
不安は募るばかりです。
続いて英語アナウンス。今は深夜であり、上海空港は24時間営業の空港ではないため、あと数時間で機材トラブルが復旧しなければこの便そのものがキャンセルになるとのことでした。

行きの飛行機にしてこの旅の最大のヤマ場、いや、火事場を迎えました。
この旅のために何ヶ月もバイトをして、準備を重ねてきました。
この飛行機がキャンセルになり、ミュンヘン到着が遅れたら綿密な計画は全破綻です。
次のエアチャイナ便を待つのが定石でしょうが、友人がエアチャイナの振替便を空港で数十時間待った経験があったので正直期待できません。
もし普通のパッカパッカーらしくフレキシブルな旅であれば大したことはありませんが、前もって石橋を叩いて事前予約をしまくり、プランニングの限りを尽くしたことが仇となって、叩きすぎた石橋が壊れかけてます。

なんとかしなくてはならない。
脳内にヤシマ作戦のテーマが流れはじめます。
とにかく、情報収集です。
トラブル対処法から代替便のイロハまでGoogle先生に聞こうとします。

脳内マヤさん「ダメです!スマートフォン、完全に沈黙しています!」
僕「なんですって!?」

SIMカードを入れ替えて設定までヨーロッパ用に切り替えていました。
いま手元にあるのは万能板ではなくただのかまぼこ板です。

そこに現れたのは先ほどチェックインカウンターで仲良くなった青年。
お互い不安ですが、その気持ちを共有し、協力できる仲間がいるということはなんと心強いのでしょう。
2人でエアチャイナのスタッフに色々と質問をしたり、同じスターアライアンスの後発の便がないかを探してみたりします。
ダメです。何も進展しません。

WiFiスポットを見つけました。キャンセルになってもなるべく早くミュンヘンに行ける手段を調べます。翌朝に東京からミュンヘンまで行く飛行機の空席を見つけました。値段は片道約10万円。
無理です。そんな大金を追加ですぐには払えません。

万事休す。八方塞がり。
諦めて成田空港から家までの終電を調べます。
そもそもこんなポンコツ陰キャがバックパッカー1人旅をしようとしたのが間違いだったんだ。日本から出ることすらできないのか。
そんなことを考えてしまうことすら情けなくて、より悲しくなります。
かけていた努力と期待が大きかった分なおさらです。

搭乗口で待つこと2時間以上が経ちました。
予定の乗り継ぎ時間が3時間ほどだったことも考えると、いまさらもし飛んでも乗り継げるか怪しいところ。成田より勝手のわからない上海空港で足止めをくらいかねません。
マッドマックスだった中国人客の皆さんも流石に諦めモードです。

そこに、機内から搭乗口へと、ひとりのキャビンアテンダントが満面の笑みで駆けてきました。いやあからさますぎだろ。
中国語で一言二言何か話すと、ほかのキャビンアテンダントや客も安堵の声をあげます。

どうやら機材トラブルの復旧がギリギリ間に合い、とりあえずキャンセルは免れました。
再搭乗が開始されます。
しかし先述の通り、いまさら飛んでも乗り継げるか怪しく、上海足止めをくらうリスクがあります。しかも上海空港は乗り継ぎの経路が若干複雑といわれている空港なのです。
大人しく帰るか、乗り継ぎが成功する確率に賭けるか、判断の時です。

脳内閣僚「総理、ご決断を!」
僕「……再搭乗を…許可する!!」

このnoteを読んでる方々やバックパッカー上級者からすれば「たかが飛行機が遅れたくらいで大袈裟な」と思うでしょう。
しかし、このクソ臆病者が必死に積み重ねてきた努力が最初の一歩で崩れるか否かで独りぼっちで佇んでいるという極限の精神状態をご想像頂きたいのです。
そこでの前進という選択。
僕は自分で自分を讃えたい。
人間、希望を捨ててはいけません。

改めて座席に座り、飛行機が予定より早く到着することと、乗り継ぎがうまくいくことを祈りながらようやく離陸となりました。

上海空港


エアチャイナは機内食が美味しいと評判でした。
まあ乗り継ぎのことで頭がいっぱいの僕には味が全然わかりませんでしたけど。
とりあえず落ち着くためにお酒を飲みました。

さっきの隣のおっさんがめっちゃ動いて身体がぶつかりまくります。
機内エアロビクスですか?

数時間後、少し早めに上海空港に着陸しました。
さぁここからが勝負です。まさに上海空港乗り継ぎRTA。機内から降りる列さえもどかしい。
ターミナルまではバス移動でした。
ターミナルに到着し、いざ全力ダッシュをしようと思いきや、僕の次の便名の書かれた看板を掲げたエアチャイナのスタッフがいました。
以前読んだどなたかのブログで、エアチャイナは乗り継ぎの時に看板を持つスタッフがいることがあるから見逃してはいけないという情報を得ていました。

声をかけ、乗り継ぎが可能か聞きます。
「とりあえず急ごう」といった感じ。乗り継ぎを案内してくれるそうです。
スタッフと僕や他の乗り継ぎ客で上海空港を競歩状態で進みます。

検疫に到着しました。
ハンコだけ押されて秒で終了です。そんなんでええんか。
向こうの焦りも伝わってきます。

続いて二階に連れていかれます。
「ここからはパスポートを見せて進んでくれ」と言われて突然置いていかれました。
そんなことを言われてもどの窓口にパスポートを見せて何を言えばいいかなんてさっぱりわかりません。
とりあえず時間もないので例の青年と共に便名と乗り継ぎをしたい旨を叫びながら全力疾走です。
周りから見れば異様な光景でしょう。
深夜の上海空港を叫びながら駆けるジャージ姿の男達。もうなりふりかまってられません。

窓口を見つけました。そこでなんらかの審査を経て、荷物検査に進み、掲示板で搭乗口を把握しました。

遠い。
またもや全力疾走です。

その結果

なんとか間に合いました。
希望に賭けた再搭乗の判断は間違いではなかったのです。

ミュンヘン行きの飛行機に乗ると、まだドイツにすらついてませんが、既に達成感がこみあげてきました。ドッと疲れも押し寄せます。

僕は座ったまま寝ることが苦手なのですが、今回ばかりは即爆睡でした。

その後はお粥の朝ごはんを食べたり、ミッションインポッシブルを見たりして過ごしました。イーサンハントになりてえ。
この飛行機は新しい機体で快適でした。

現地時間の朝7時ごろ、波乱万丈のスタートを乗り越えてなんとかミュンヘン空港に着陸しました。

エアチャイナを使うなら


前回の「まあ大丈夫だろう」というフラグを見事に回収し、しっかりと大丈夫じゃなかったエアチャイナ。
実は帰りの便でも地獄を見ることになったのですが、それはまた今度。

僕はもう二度とエアチャイナを使わないと心に決めましたが、それでも使うという人がいるかもしれないのでここで少し助言です。

エアチャイナで中国乗り継ぎをする際には注意をしなくてはいけない点がいくつかあります。

①スルーチェックインかどうか要確認
JALやANAでは出発地でチェックインしてしまえば、乗り継ぎ地で乗継便のチェックインをしなくて良いという、スルーチェックインが主流です。
エアチャイナは違います。
スルーチェックインできる航空券と乗り継ぎ地で再び手続きをする必要のある航空券があります。
僕が先ほどチェックインカウンターで確認しなくてはいけないと言っていたのはこのことです。

②荷物の預けなおしが必要か要確認
上とほぼ同じですが、稀に乗り継ぎの空港で荷物を一度ピックアップして預け直さなくてはならないこともあるそうです。
こちらもチェックインカウンターで確認しましょう。

③モバイルバッテリーは要注意
100Whを超えるモバイルバッテリーは問答無用で没収されます。
また、Wh数が明記されていないモバイルバッテリーも没収です。
Wh数が明記されているか確認しておきましょう。

おまけ動画


おまけっていう音の響きが可愛くて好きです。
成田空港からミュンヘン空港までを短い動画にしました。

次回予告


今回はなんとかピンチを乗り越えました。
次回から初の海外ユースホステル暮らしが始まります。ビールが待ってます!
ただし、調子に乗りすぎると…

よろしければサルにバナナをくれてやってください。