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僕と母ちゃんの”われわれ意識”を広げれば、お金の問題は解決できる

僕と母ちゃんの“われわれ意識”

僕「母ちゃん、お菓子の値段が上がってるから小遣いあげてよ」
母「我慢しなさいよ。父ちゃんも母ちゃんも給料上がってないのよ」

現代社会では“われわれ意識”が失われていると宮台さんは言う。
このわれわれ意識とは、お互いの幸せのことを考えられる関係のことだと僕は解釈した。そして、このわれわれ意識を明確に持てないことが、経済問題の理解を妨げていると思うのだ。

冒頭の親子の会話を聞いたとき、”僕”はどう思うだろうか?
この親子がまともな家族であれば、小遣いを上げる交渉はあきらめる。
自分の幸せの追求が他の家族を圧迫することが目に見えているからだ。
家族の他のメンバーを含めてわれわれと感じていれば、あたり前の判断だ。

国内経済に関する経済問題について考えるときも、この家族の経済の話と本来は同じはずなのだ。ところが、国内経済の話になると迷走し始める。

デフレを退治する
インフレは勘弁してくれ
金利を下げて円安誘導だ
金利を上げて購買力を上げろ

なぜ、迷走するのか?

家族について考える場合、われわれである一人ひとりの家族の顔が想像できるから、何をすればいいのかが明確に分かっている。
ところが、日本国民について考えるとき、われわれが明確に想像できないから、何をすべきかが正しくイメージできなない。

家族の内側と外側ですべきこと

まともな家族であれば、その内部においては、協働して全員の幸せを最大化する努力ができる。わざと服を汚して、洗濯物を増やすことはしないし、せっかく作ってくれた料理を粗末にするようなことはしない。あたりまえのように助け合ってお互いの幸せを考えて生活することができる。

しかし、家族の内部の助け合いだけでは、生活することはできない。外部から食料や衣類を買ってきたり子供を学校に通わせたりしないといけない。外部の助けを借りるためにお金が必要になる。

お金を支払って、外部から物や労働を提供してもらうのだ。そして、このお金を手に入れるためには、家族の中で余っている物や労働を提供する。サラリーマン家庭なら、労働を提供して給料をもらうし、農家だったら米や野菜を売ってお金を手に入れる。

家族の幸せだけを考えるのであれば、この外部とのやりとりにおいては、なるべる高く物や労働を売った方がいい。米の価格も給料も高ければ高い方がいい。一方で、外から買うものは買い叩いてでも安い方がいいのだ。
ここまでの話が納得できないのだとしたら、それは家族の範囲においてもわれわれ意識がもてないと言うことを表している。家族を自分に置き換えて、読み返していただければ幸いだ。

この図のように、われわれと外部とのやりとりでお金が必要になる


「われわれ=日本国民」と考えられないわれわれ

われわれを日本国民の範囲に広げても、基本的には家族の場合の相似形になるはずだ。その内部においてはみんなが助け合って、幸せを増やすことを考えるべきだ。また、外部つまり外国に対しては商品やサービスをなるべく高く売ったほうがいいし、外国から輸入する品物はなるべく安い方がいい。

しかし、家族とはちがってわれわれが日本国民に広がると、われわれ意識はかなりあやふやになる。

「われわれの生活を守るため食料品の価格を下げて欲しい」と考えるとき、
われわれ=日本国民ではない。われわれ=消費者だ。
消費者だけのことを考えていて、酪農家の田中さんや、八百屋の鈴木さんのことを気にかけていない。

「われわれの生活を豊かにするため賃金を上げて欲しい」と主張するとき、「われわれ=日本国民」ではない。われわれ=被雇用者だ。
会社経営者の後藤田さんや、株主の山田さんのことを考えていない。その賃金が新聞社の賃金なら、購読者の吉川さんのことを排除しているし、公務員の賃金であれば、納税者の川崎さんのことを無視している。

家族のときと同様に、日本国民であるわれわれにとって価格が重要になるのは外部とのやりとりだ。外国に売る物であればとにかく高い価格で売った方がいいし、外国から購入するものはとにかく安い方がいい。
(誤解の無いように付け加えると、この話はわれわれの幸せを最大化するためにどうすべきかを話している。外国製品を不当に買い叩くのはけしからんなどという頓馬な批判は勘弁して欲しい)

円安、物価高対策をするためには

この“われわれ”を明確に考えれば、国内経済の問題点がシンプルに見えてくるはずだ。
今年に入ってから特に物価が高騰している。そのために何をすべきなのか。賃金を上げるのは、根本的な解決にはならない。日本の外部から輸入している食料やエネルギーの価格が高騰しているわけだから、日本国内の賃金をあげるとしても限界がある。

冒頭の会話を思い出して欲しい。
会社に賃金をあげて欲しいとお願いするのは、
「母ちゃん、お菓子の値段が上がってるから小遣いあげてよ」
と言っている子どもと変わらないのだ。
母ちゃんだって、外部から買う食料品やガソリンの価格が上がって困っているのだ。
小遣いがあがって子どもがよろこんでも、父ちゃんや母ちゃんが苦しむ。

全体の問題を解決するには、父ちゃんや母ちゃんの給料が上がって、外部から入るお金が増えないといけない。
日本国について考える場合、輸出できるものを増やすことや、輸入に頼っている食料やエネルギーを自分たちで作り出すことを考えないといけない。

金利を上げても根本的な解決にならないのも同じだ。金利が上がると円高になるという。
なぜ円高になるのか?
たくさん金利がもらえるから、円を買ってくれる人が増えるからだ。支払われる金利はわれわれの内側から外側に流れていく。

円高になって短期的な解決は図れるが、時間と共に外部に金利が流れていくので、根本的な解決にはならないのだ。

経世済民オイコノミア

「一番大事なのは性愛教育なんですよ」と、宮台さんに言われたランチの席で、同席されていた神保哲生さんに月一回配信で経済番組をつくらないかと打診された。

(そのときの宮台さんとの話はこちらをご覧ください)

神保さんは1999年に日本初のニュース専門のインターネット放送局
ビデオニュースドットコムを始められた。看板番組の「マル激トーク・オン・ディマンド(通称マル激)」は1100回以上も放映されている長寿番組だ。
その中の新しいチャンネルとして、経世済民オイコノミアをこの10月から始めたのだが、第一回のゲストとして宮台さんにきていただいた。
その中での主な話は、上の図で示したわれわれと外部世界の話についてだった。
詳しくは、配信動画を見ていただきたい。


一億人のわれわれのことなんて考えられない

番組の中で、宮台さんがおっしゃっていたのは、われわれ意識をもてるのは、せいぜい2−3万人程度だそうだ。一億人のわれわれなんて考えることはできやしない。

その話を聞いて、あとから思ったのは、ムダな仕事をなくすことはできないのかもしれないということだ。
家族の中では、わざと服を汚して洗濯物を増やして、仕事を増やすようなことはしない。ところが、国の中ではムダな仕事でもあったほうがいいと考える。仕事を奪うようなAIやロボットの存在は、しばしば人間をおびやかし、「雇用を守れ」という言葉が出てくる。

本来なら、ムダな仕事を作ってお金を配るくらいなら、困っている人に直接お金を配って助けてあげればいいはずだ。
しかし、それは実現できないのだろう。宮台さんのいうように、一億人に対してわれわれ意識なんてもてないのだとしたら、
「どうして働いていない奴にお金を渡して助けるんだ!」
という反対意見がでてくる。
合意を得るためにも、ムダな仕事を作り続けないといけないのかもしれない。

機会があれば、宮台さんにお伺いしたいと思っている。

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田内学が、毎週金曜日に一週間を振り返りつつ、noteを書いてます。新規投稿はツイッターでお知らせします。フォローはこちらから。


元々、ゴールドマンサックスでトレーダーをしていた僕がなぜ、教育の話をするようになったのか?
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