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モスキート・ジョー

モスキート・ジョー

戦力分析室に小柄な男が出入りするようになった。弁護士だそうだ。金曜日の夕方に来て、数時間、資料室で何やら作業し、ABCクラブに寄ってウイスキーのロックを数杯飲んで帰っていく。無口な男だ。
興味を持った私は、何人かに声をかけて探ってみた。ブルーローズが知っていた。
午後8時頃だったろうか。彼はABCクラブの片隅にいた。

少し、いいかな?
ああ、配管さんですよね。コラム、読んでいます。
何をしているんですか?
敗戦処理の準備です。総力戦で負けた時のことを想定して、資料を作っています。
負けるのですか?
最悪の場合を想定しているだけです。勝ち負けは、僕には解りません。・・・僕がしていることを公にはできません。
承知していますよ。
・・・総力戦で負けた時、戦士は半分以下になります。多分、三チームも編成することはできないでしょう。戦えません。・・・敗戦の代償を払わなければなりません。僕は、組織の解体は避けなければならないと思います。そう考えているのは、僕だけではありません。再び戦うことができるように、全面降伏は避けなければならない。それが、僕の仕事です。
できるの?
交渉ですよ。そのために、過去のことを調べています。今日は、少し早めに切り上げました。もう少し飲んだら帰るつもりです。・・・配管さんとは話したいと思っていました。今日は、考えがまとまらないので、改めて機会を作ってもらえたら有り難いです。ひよっこサムやスリーピーJとも話してみたい。優秀な女性陣とも面談したいですね。楽しみです。
・・・煙草を吸っても?
どうぞ。気遣いは無用です。・・・配管さん、土曜日戦争はどうなるんでしょうか?
個人的に考えていることがあります。総力戦で、私たちは負けるでしょう。君の考えていることと同じです。でも、それが終わりではありません。必要な時を経て、再開します。
土曜日戦争は必要なんですか?
私は、必要だと思っています。・・・ひよっこサムは賢い男でね、敵が何者なのかを探っていました。
解ったのですか?
いいえ。それで、サムは戦いに集中するようになりました。目の前の事に・・・。手が届かないということが解った。私たちが想像することもできない、大きな存在です。今のところ、戦うことによってしか触れることができない存在です。・・・ボクシングをしていたそうですね。
はい。高校の時に少し・・・。
強かったんですか?
それほどでもありませんでした。一番軽いクラスで勝ったり負けたりしていました。で、付いたあだ名がモスキート・ジョー・・・。スピードとテクニックには自信がありましたが、勝てない時もありました。
弁護士になったのは?
チャレンジ精神ですかね。僕、母子家庭で育ちました。母が苦労して、僕を育ててくれました。僕は、そこそこ勉強ができることを鼻にかけて母を蔑ろに思うような罰当たりでした。中学の時、そのことがバレて、幼馴染みに叩かれました。ビンタ2発、利きましたよ。
・・・・・・。
そんなことがあって、僕は母に認めてもらおうと思うようになりました。高校に行って、ボクシング部に入りました。スポーツ推薦で大学にという話ももらいましたが、方向転換したんです。弁護士になろうと、唐突に思って、幸運なことにそうなれました。・・・僕は、運だけでここまで来たと思っています。
そう・・・いいね。
でも、母を亡くし、生き別れた父とも長いこと会っていません。どこに居るのかも解らない。僕は、孤独です。・・・僕を叩いた幼馴染みは、少し年上の女子でした。そう、バランスのいい体型で、健康そうな美人でした。僕は、叶わぬ夢を見た。
・・・・・・。
もっと話してもいいですか?
もちろん・・・。
僕は、いつも不満を抱えていて不機嫌です。心を病んでいます。
ハハハ、ずいぶん正直な人だ。でも、不機嫌ではいけないんですかね?不満を抱えていてはいけないんですか?
そうですねえ。そんなふうに考えたことはありませんでした。僕が、不満を抱え不機嫌でいれば、母が心配します。精神的な負担を・・・。僕、大丈夫でしょうか?
不満を抱え不機嫌なのは、原理原則に背いているからではないでしょうかね。
配管さん、難しいことを言いますね。
・・・敵は強いです。ですが、私たちに知らしめす事はできません。私たちが、拒否するからです。レジスタンスですね。そうした大きなうねりの中では、私たちのちっぽけな感情はなんの意味もありません。
・・・・・・。
偉そうなことを言いました。まあ、君より長いこと生きてるということで、ご容赦下さい。
・・・僕は、原理原則に背いているんでしょうか?
そうですね。私には、君が、より大きな存在に背いているように見えます。穏やかな物腰の中に傲慢な気持ちが潜んでいるように見えます。悪いことではありません。意思の強さを感じます。・・・ですが、同時に不満を抱え不機嫌でいる。そうしたいですか?
・・・僕、飲み過ぎたようです。少し、混乱しています。
そうですか。では、話の続きは次の機会にしましょう。今夜は、話せて良かった。なんか、押しかけたようですみません。
いいえ。良いお話を聞くことができました。・・・僕は、自分の力を示すために勝ちたいと思いました。でも、負けて、慎み深くなれと・・・教わったように思います。
そうですか・・・。近づいていますね。・・・私たちは勝ち続けることはできません。君は、負けて、慎み深くなれと教わったと言いましたが、本心とは思えない。内なる自我に向き合うことなく物事を解決することはできません。隘路ですね。
・・・・・・。
私には理由があります。・・・私には理由がある。・・・除隊申請をする前に、ずっと考えていました。まだ戦える、私には戦う理由があると・・・。老兵の意地ですかね。
・・・配管さん・・・。
でも、戦線を離れ、ライターの真似事をするようになって、自分と向き合うようになった。・・・これが、なかなか厄介でね・・・。
配管さん、土曜日戦争について、知っていることを教えて下さい。
はい。今、言えることは、総力戦で負けた後、必要な時を経て再開する・・・それくらいでしょうか・・・。
ありがとうございます。

母と子の絆

おばさん?
ああ、紀ちゃん・・・。
どうしたの?
ジョーの奴、最近、難しくてなあ。.
思春期の男は、みんなそうですよ。
ジョーは、その、学校ではいいのかい?運動ができるとか、勉強ができるとか・・・。なんせ、チビで、見た目もパッとしないだろ。心配なんだよ。・・・あいつ、私を恥じるようなこと、言ってなかったかい?
・・・おばさん・・・。学校のことなら、心配ありませんよ。勉強は一桁、順番は片手で足りる。
片手って?
5番以内ってことです。足も速いし。
それって、いいのかい?
学年100人の上位5%、もし、私がそうなら、お父さん、舞い上がっちゃうよ。とても出来のいい子です。
そうかい。あたしは、そういうことには疎くてね。
おばさん、後でジョーを締めておくね。母親を馬鹿にする男は最低だ。
お手柔らかにね。
ジョーはお母さん思いですよ。シャイだから、言えないだけです。
そうだといいなあ。・・・そうだと・・・いいよなあ。

ーーーーーー

紀子、何だよ。こんな所に呼び出して・・・。
おまえ、お母さんを馬鹿にしてないか?
してねえよ。
本当か?漢字が読めないとか言ってないか?・・・二度と母親を馬鹿にするな!解ったか?
解ったよ。
解りました、だろ!
何でそんなに怒るんだよ?・・・俺と母ちゃんの問題だ。
母親を馬鹿にする男はクソだ。勉強ができたって、根が腐ってちゃダメなんだよ。ビンタ2発だ。おばさんと私からだ。いいな。
ああ。
踏ん張って、歯を食いしばれ!
(紀ちゃんは、本気でジョーの頬を叩いた。よろめいて、体勢を直したところにもう一発。唇が切れた。)

ーーーーーー

どうしたんだい?
紀子に叩かれた。
叩き返さなかったのか?
紀子は大きいけど女だ。
納得して叩かれたのか?
ああ、紀子を怒らせてしまった。
お尻でも触ったのか?
そんなんじゃねえよ。・・・母ちゃん・・・俺、生意気か?
そうだな・・・。でも、悪い奴じゃない・・・あたしの誇りだ。
・・・・・・。
・・・ジョー・・・男が泣くのは人生で二度だそうだ。生まれた時と、母親が死んだ時・・・。
・・・覚えておくよ。

ファミレス

紀子、高校に行ったら、バイトできるか?
校則にもよるかな。お金が欲しいの?バイトのお金、高が知れてる。
俺、母ちゃんの収入を調べた。生活保護レベルだよ。俺、イディオットだった。何も知らずに、のうのうと生きてた。恥ずかしいよ。
ジョー・・・。
貧乏の意味を知ってるか?
知ってると思うけど・・・。
フッ・・・。骨の髄で解ってるかってことだよ。わずかな金にしがみついて右往左往する。それでも、未来があればまだましさ。母ちゃんは、歳をとる・・・。このまま、終わらせるわけにはいかないんだよ。
・・・ジョー・・・。中坊のお前にできることはないよ。自分の役割を忘れるな。
ジャガイモ飢饉の話、知ってるか?
・・・・・・。
19世紀のアイルランド、食料の奪い合いがあった。人に向けていたピストルを、最後は自分の頭に向けるんだ。俺、ショックだったよ。彼らの末裔に、JFKとレーガンがいたそうだ。図書館にはいろんな本があって、インターネットも見れる。休みの日は見れないがね。
なら、私のところにおいで。
甘えていいのか?
・・・昼食、奢るよ。行こうや・・・。
俺、ハンバーグ、食ってみたい。
いいよ。

ーーーーーー

俺、初めて入る。
私についておいで。オドオドするなよ。
うん。

ーーーーーー

何を頼んでいいのか解らない。
いいんだ、私に任せな。ハンバーグだったね。

ーーーーーー

ナイフとフォークで食うのか?
それが作法のようだ。私の真似をしてみな。・・・ほら、簡単だろ。切って、食べる・・・。
飯に塩をかけてもいいか?塩をかけると美味いんだ。
いいよ。自由にすればいい。あれこれ考えてちゃ、食事を楽しめないだろ。
食事は、楽しむものなのか?
・・・・・・。ドリンクバー、入れといたから、飲み物フリーだ。
自由に飲んでいいのか?
そう。・・・一緒に行こうか。
助かるよ。
過ぎると、腹を壊すぞ。
そうだよなあ。・・・紀子、お前、いい匂いがする。香水か?
そうだよ。
男がいるのか?
いるかもしれないし、いないかもな。お前には関係がないことだ。

ーーーーーー

紀子、お前は見た目がいいし健康そうだ。言い寄ってくる男も多いだろう・・・。
なんだ、私の裸を見たいのか?・・・なんなら、あそこを見せてもいいよ。
露骨だ。公共の場所だぞ。口を慎め・・・。・・・本気か?
私は、いつだって本気だよ。
・・・・・・。

ーーーーーー

紀子、ありがとな・・・。・・・ありがとうございます。
ジョー、おまえは、だから、生意気なんだよ。感謝するのは、感謝すべき時だ。ハンバーグ一皿は、その時じゃないよ。
・・・・・・。
おいで。唇の味、教えてあげる。
・・・・・・。
お前は、私が初めてキスした男だ。まあ、男かどうかは微妙だが。
嘘だろ?
ハハハ、そう思えばいいじゃないか。

・・・紀子、ホームってどう訳す?
家庭だろ?
ホームタウンは、家庭街か?
そんな日本語ないだろ。
野球の、ホーム・ベースは?
私を試しているのか?
・・・俺・・・どんなにひび割れても・・・乾いた場所でも・・・留まる・・・そして、帰るべき場所かなって思ってさ。
自分が、依って立つ場所だと言いたいのか?
・・・そうかもな・・・。
じゃあ、帰ればいいや。レッツ・ゴー・ホーム・・・。ほら、手を貸しな。私が連れて行ってあげるよ。

恩師

丈治、ちょっとおいで。
先生?
お前の将来に関することだ。
・・・・・・。
・・・つまり、その・・・俺にも少しは力があってな。お前を大学に推薦することができる。スポーツ推薦だ。どうかな、と思ってな。
ありがとうございます。僕は、先生のおかげで、プライドを失うことなく、高校を終えることが出来ます。でも、ボクシングはやめようと思います。大学に行っても、ライト・フライの真ん中辺がせいぜいでしょう。続けることは出来ません。
そうか。
進学するつもりですが、学費は自分で何とかします。
出来るのかい?
わかりません。でも、先生、教えてくれたじゃないですか。左がダメになったら、右一本でも戦えって。僕、負けません。
刀折れ、矢尽きてもか。俺、パワハラ・コーチだな。
ハハハ、そうですね。・・・先生は、ご立派です。
なんでよ?
働いてるし、ご家庭もお持ちだし。それは、先生が頑張っているからだと思います。
誰でも、そうしている・・・。
いいえ・・・当たり前のことではありません。
解った。気が変わったら来てくれ。
はい。ありがとうございます。

母の想い

先生、丈治がなにか問題でも?
いいえ。・・・先日、彼に推薦入学を打診しました。断られましたが。・・・そうした、選択肢があることを、お母さんに伝えるべきだと思いましたので。
息子は、なぜ、先生のご好意を断ったのでしょうか?
ボクシングをやめると。・・・大学は、その、学費がかかります。彼は、自分で何とかすると言ってましたが、友達と遊ぶことも出来ない、眠る時間さえ削らなければならないかもしれない。茨の道です。
私、息子を説得すべきでしょうか?
いいえ、彼の意思は尊重しましょう。
まあ、丈治は頑固で・・・。自分で始末をつけられなければ男じゃないし。
そうですね。・・・ご足労をおかけしました。
気にかけていただき、感謝しています。

ーーーーーーー

母ちゃん、学校に行ってたのか?
そうだよ。推薦を断ったんだって?
うん。俺、ボクシングはやめる。だから、推薦を受けることはできないよ。・・・俺、先生や先輩の言うことを聞いて、やってきた。続けることが出来たのは、この地区でトップ・ランクに近かったからだ。大学に行けば違うよ。強い奴がいっぱい居るだろうし。
お前、もうダメなのか?
そうは言ってない。別の道を行くんだ。
(母は、左の拳を握りしめる息子を見ていた。)
何をするんだ?
今は、言えない・・・。俺、高校に入った頃かな、父ちゃんに会ったんだ。
あたしに黙ってたのかい?
言えねえだろうよ。女作って出て行ったゲスだ、母ちゃんにも辛く当たってたし。・・・俺、言われたんだ。「なあ、丈治、地べた這いずり回って、泥水啜っても生きろや。」ってね。寂しそうでしたよ。・・・黙ってて、すみませんでした。
いいよ。大方、女とうまくいってねえんだろうよ。
父ちゃんのこと、悪く言うな!・・・もう、それほど会うこともないだろうし。
そうだな・・・。
・・・母ちゃん、俺、負けねえよ。(右がダメなら、左一本でも戦う。両方ダメになっても、必死で舞う。刀折れ、矢尽きても・・・心は折れない。)

紀ちゃん

おばさん、ジョーの奴、推薦を断ったんだって?
そうなんだよ。先生に申し訳なくてね。せっかく気にかけてくれたのに。
心配ないですよ。あの先生は、まっとうな方です。負い目に感じることはありません。
そうかい。いい先生だってことか?
そうです。・・・おばさん、ごめんね?
なんで?
私ね、ずっと、ジョーを助けたいと思ってた。でも、もうできない。ジョーが一人前の男になるのは、まだ、先のことだし、私、待てないと思うようになった。
ジョーを助けるのは、あたしの役目だ。母親の役割を奪ってはいけないね。
すみません。
いや、そうじゃなくて、紀ちゃんには、感謝しているんだ。若い男女がするようなことをさせてくれた。母親には、できないことだよ。ファミレスにも連れて行ってくれたし。
昔のことですよ。
その晩、あいつ、夢精した。わたしは知らないことになってるがね・・・。
卑猥な夢でも見たんでしょうかね?
どうだかね・・・。こないだ、あいつの言ってる意味が解らなくてね、ストイックって。
えっ?
で、職場のインテリに聞いたんだ。だいたい合ってたよ。

ーーーーーー

ちょっと聞きたいことがある。
何ですか?
ストイックって、どういう意味だ?
ハハハ、意外だなあ・・・。そう、いろんなことを我慢して、頑張ると言うことかなあ。
・・・・・・。
息子さん、高校でボクシングをしていますよね。試合前はもちろんでしょうが、普段から食べたい物を我慢して、体重を維持し、頑張る。そういうことを言いたかったのかなあ。
そんなことをして、体に悪くないかい?
部活には、指導者がいるでしょうから、大丈夫だと思いますよ。
息子のことを、知ってるの?
ええ、たまに新聞に出ていますからね。
そうですか。ありがとうございました。
いえ。

ーーーーーー

あいつ、なんか言ってたかい。あたしには、何も言ってくれないんだよ。
高い志を持っているのかもしれません。
知ってるの?
いいえ、私にも言ってくれません。
待つしかないのか?
焦れったいですよね。
いいよ、殴り合いやめるし。・・・生きてるだけで、充分だ。・・・紀ちゃん、結婚するのかい?
う~ん、そうなるかも。
躊躇いがあるのか?
・・・あるかも・・・。
そうかい。
アドバイス、くれますか?
亭主に逃げられたあたしに言えることはないよ。
・・・はい・・・。
自分に嘘をつかなければいいんだ。・・・戯言だよ。忘れておくれ・・・。

諍いの顛末

紀子、結婚するのか?
そうしようと、思ってる。
俺を、捨てるのか?
違うよ・・・。

ーーーーーー

丈治、紀ちゃんは、お前が呼び捨てにするような人じゃない。幼馴染みの気安さがあるんだろうが、男と女の関係になってもいい歳だ。節度を持って付き合いな。
うん。

ーーーーーー

母ちゃんに言われたよ。お前は、高値の花だから、諦めろって。
おばさんが、そんなこと言うわけない。
そう言う意味だ。
・・・・・・。
期待させといて、ひどいじゃないか。
・・・・・・。
何とか言えよ!
ジョー、言葉が過ぎるよ。・・・私を、責めるな!
・・・勝手なこと、言ってんじゃねえよ・・・。
ジョー、おまえは私の弟だ。女は、弟とは結婚しない。
・・・いいさ、好きなようにしろよ。・・・お前は、そういう女だよ。
・・・そういうって、どういう意味だ?・・・ありきたりのクズ女だと言うのか・・・。
・・・そうは言ってない・・・。

旧友

弁護士って、おまえか?
はい。
・・・おまえ、南野高校のモスキート・ジョーだろ?
・・・そうですか。やはり、君だったんですね。名前を聞いた時に、そうかなと思っていました。
覚えていてくれたんだ。
そう、フェザーでしたっけ?良く戦っていましたよね。
よせよ・・・泥臭いドツキ合いしてただけさ。・・・お前のようなフットワークもねえし。
おやおや。・・・また、チビが舞ってるぜ、なんて言ってなかったかな?
・・・軽んじたつもりはないよ。
そうですか。
で、俺、どうなるんだ?
初犯だし、執行猶予がつくでしょう。裁判官の前では、改悛の情を示して下さい。自分の腿を抓ってでも涙を流すとかね。
・・・・・・。
・・・君は、法を犯した。なめた事を考えないほうがいい。取り返しがつかないことになる。ふざけてる場合じゃないよ。
ああ。・・・おまえ、弁護士になったんだ。頭、良かったしなあ。
苦学しました。
そうかい。でも、なれればいいや・・・。
・・・懸命にやって、やっとなんとかなった。そうしているうちに、母を亡くした。合格の報告をすることは出来たけど・・・間に合ったのかどうか・・・。悔やむことは多いよ。
・・・辛くねえのか?
少しは、辛いですよ。でも、人生って、そんなもんじゃないですか。
そうだな。・・・そうなのかな。

懲役1年、執行猶予3年か。
そうですね。・・・執行猶予を甘く考えないで下さいね。
なあ、ジョー、一杯やろうや。俺、奢るよ。
いいね。・・・昔のよしみだ、僕が、酒代を持ちましょう。
世話になったな・・・。俺に出来ることがあったら、言ってくれ。俺、体張るから。
ハハハ、大袈裟だよ。

君は、家業を継いだと聞いていたよ。
ああ、まあ、いろいろあってな・・・。家を出て、現場仕事やってたよ。・・・解雇だろうな。・・・今更、親父に泣きつくわけにもいかないし。
つまらない自尊心は、人生を狭くするよ。
きれい事、言うなよ。
・・・僕たちは、もうガキじゃない。君は、家族のために、努力しなければならないよ。
ジョー、お前、家族いるのか?
いや、母を亡くし、親父とは何年も会っていない。
まだ、独り身なのか?
うん。・・・いや、結婚を考えてる・・・相手はまだだけどね・・・。
そうか・・・。いいなあ・・・。あの、年上の美人さんか?
(・・・紀子なあ・・・振られた。さっさと結婚して、別の所に行ったよ。) 君だって、お相手がいるじゃないか・・・。
・・・捨てられるかもな・・・文句は言えないか。
誠意を尽くせばいいじゃないか。一緒にいたいのなら、引き留めるべきだよ。
・・・もう、5年になるかな。ズルズルと関係を続けて、籍も入れてねえよ。不誠実だよな。
そうだね。男の風上にも置けねえ野郎だ。クズだね。
言ってくれるね・・・。
職を紹介しようか?・・・君に、その気があるなら、僕は役に立てる。
そうかい。・・・やってみようかな・・・。俺、見苦しいな・・・。
馬鹿言うなよ・・・。人は・・・一人では生きていけない。僕も、君もだ。誰かに助けられ、誰かを助けなければならない。僕たちは、誰であれ、誰かに仕えなければならない。
・・・ジョー・・・。

なあ、ジョー・・・。女に会ってってくれないか?
良いよ。

お~い、帰ったよ。
お帰り・・・聞こえてるよ。
弁護士先生に、お茶、出してくれるか・・・?
ああ、先生、お世話になりました。・・・この人、馬鹿だから、まったく手に負えませんよ。ビールにしますか?
いいえ、コーヒーをいただけると有り難いです。
はい。

僕は、○○丈治です。彼とは、ボクシング仲間です。高校は違いました。階級も違うので、直接、グローブを交えることはありませんでした。彼、いいファイターでしたよ。
よせよ、恥ずかしいじゃないか・・・。
本当のことだよ。
俺の戦績、知ってるだろ?
勝ったり、負けたりって、よく言ってたよね。
そうだ・・・勝ったり、負けたり・・・。半分勝って、半分負けた。・・・平凡な選手だったなあ。
僕も、同じだ。
・・・俺、酒買ってくるわ。戻るまで待っててくれよな。
おい・・・。

ごめんなさい。気分屋なの。
・・・・・・。
でも、いろんなことが解ってる人だと、あたしは思うの。彼、これからどうなるの?
奥さんの支えがあれば、大丈夫だと思います。
あたし、奥さんじゃない・・・。でも、長いこと一緒にいるから・・・事実婚って言うの?
そうですね。ご主人は、執行猶予中です。感情にまかせて喧嘩などしたら、たとえ小さな喧嘩でも、大変なことになります。場合によっては、収監されることに・・・。
刑務所に入るってことですか?
そういう場合もあるということです。彼は、耐え忍ぶことを学ばなければなりません。誰でも、そうするように・・・。
誰でも?
・・・そう・・・彼も、僕もです。
あたしもってことか・・・。
例外はありません。・・・でも、あなたは・・・彼の庇護の元で・・・幸せな人生を送ることが出来るように思います。
そう・・・守っているのは、あたしだと思ってた・・・あたしが、守られてたんだ。
・・・すみません・・・何も知らないのに、余計なことを言いました。ご容赦下さい。
いいです・・・そんなこと、言われたことなかったし、思ったこともない。あたし、鈍感だ。
ガテン系の男に、いい女がつくって、本当だったんですね。
あたしを口説いてもダメだよ・・・男がいるからね。
ハハハ、口が滑りました。・・・では、帰ります。
はい。ありがとうございました。

なんだよ、帰るのか?
ああ、いろいろやらなければならないことがあるんでね。
今日は、悪かったな。
何言ってんだよ。
俺たち、マブダチだと思っていいのか?
当たり前だろうよ。
そうか。ありがとな・・・。

ごめんな・・・。

勝手にダチ連れてきて、相手させた・・・。
いいよ。大切なダチなんだろ?
そうだな。そうだったよ。・・・お前、俺と一緒にいてくれるのか?
・・・ば~か、何年一緒にいると思ってるんだ。あんたが、あたしを捨てるなら、文句は言わない。あたしは、恩知らずじゃないからね。・・・あんたが、捨ててくれって言うんなら、そうする。
・・・すまん・・・忘れてくれ。・・・俺と、一緒にいてくれるか?・・・俺と、結婚してくれ。
・・・ずいぶんと、はんちくなプロポーズだね・・・いいよ。・・・本気なら・・・。
ああ・・・本気だ。
そうかい・・・。
俺で、いいのか?
諄いよ・・・。諄い男は・・・疎まれるんだろ?
・・・そうだった。・・・そうだよなあ。
・・・もう少し、飲むかい?(泣いてる場合じゃないよ。)

再会


ジョー・・・。
紀子か?・・・痩せたね。
・・・・・・。
しばらくだね。
おばさんの葬儀で会ったっきりだ。ろくに話もできなかった。・・・ジョー、逞しくなったね。仕事はどう?
まあまあかな。
所帯、持ったのかい?
いや・・・。俺を振ったのは、おまえだ。
まだ、そんなことを言うのか?
事実だよ。
否定はしない。・・・ジョー、ハグしてくれるか?
・・・人目のない所なら良いよ。
私のとこに来るかい?
旦那の留守にか?・・・そりゃあマズいだろ。
・・・離婚したんだ。もう、半年過ぎた。一人暮らしにも、慣れたかな。
・・・・・・。


良い部屋だね。・・・家具が少ない。・・・酒が多いな。冷蔵庫にはビールがたんまりかい?
ジョー、目敏いね。そんなとこだよ。
離婚の原因はなんだ?
夫の浮気・・・。
我慢できなかったのか?
なあ、ジョー、忍耐にも限界がある。そうは思わないか?・・・ジョー、ハグして。人目のない所なら良いんだろ?
良いよ。
・・・・・・。
紀子、おまえ、良い匂いがする。変わらないね。
ジョー・・・私を助けて・・・。今更、頼めた義理じゃないけど・・・。
よせよ・・・。条件がある。
なに?
二度と俺を裏切るな。それが条件だ。
・・・はい。
なら、良いよ。・・・俺は、おまえを助ける。
信じて良いのか?
・・・二言は無いよ。・・・望みは何だい?


ジョー・・・一緒に・・・暮らしてくれないか?
・・・・・・。
女が居るんなら、忘れておくれ。
・・・女は居ない・・・。居たこともない・・・これからも居ないと思ってたよ。
どうして?
勉強とバイトに明け暮れた。社会に出てからは、仕事に専心した。今は、土曜日戦争の弁護士もしている。・・・余裕のない生活だ。性に合ってる。
・・・・・・。
母ちゃんを亡くして、帰るべき場所も失った。今は、賃貸のアパート暮らしだ。・・・なんか、俺だけしゃべってるな。


私は、離婚して、この部屋と車、それと慰謝料を少し得た。子は居ない。今は、近所のスーパーで働いてる。非正規労働者だね。なんとか生活してるよ。だけど、時折、気が狂いそうになるんだ。・・・情緒不安定です。
それで、俺と?
そう、恥を忍んで頼んでみたよ。
・・・良いよ。俺で良ければ・・・。まあ、仲良くやろうや。
はい。

同棲


(何日かして、日曜日の午後、デイパックとブリーフケースのジョーが来た。)
本当に、来てくれたんだ。
約束したじゃないか。気まぐれで誘ったわけじゃないよな?
来てくれるまで、不安だった・・・。
約束したのにか?
まあ・・・。荷物は、それだけかい?
後で、スーツと本が届く。それで全部だよ。・・・自分の部屋が欲しいんだが。
洋間に机がある。そこで良いかい?
良いね。Wi-Fiはあったよね。
うん。
荷物を解いてもいいかな。パソコンをセットしたい。
良いよ。見てても良いかい?
勿論だよ。


スマホは事務所の支給品と自分用にもう一つ、パソコンとタブレットは私物だ。高価だよ。・・・賞与で買い揃えた。格好良いだろ。クールだ。
そうだね。
・・・紀子、俺、やっとお前のとこに来れた。・・・感情と時間を浪費したよ。
・・・・・・。
おまえ、離婚してから、ずっと一人かい?
そうだよ。一人で、ここで、自宅サバイバルだ。・・・孤独も慣れれば心地良いって識ったよ。
そうかい。悪くないね。
少し、飲むかい?
ああ、そうしよう。
後で、お蕎麦、作るよ。
ーーーーーーーーーー
ジョー、おまえは、あの頃のままかい?
・・・愚問だな。年を経れば変わるさ。生活も、あの頃に比べれば、いくぶん楽になった。でもな、マインドは変わらん。相変わらず、貧乏性だ。変えたいとも思わないがね。・・・だから、俺と暮らしても贅沢できない。3枚千円の下着を擦り切れるまで履く。・・・そんな暮らしをしたいかい?
ジョー、良い質問だ。・・・とても良い。答えは保留しておくよ。おまえのパンツも3枚千円か?
いや、もう少し高い。
まあ、衣類は男物のほうが高いからな。・・・何故だか知ってるか?
女のほうが、収入が少ない。
残念ながら、そういうことだよ。
(その夜、二人はセックスした。紀ちゃんは、その最中、しくしく泣いていた。)


紀子、今度の土曜日、休めるか?
大丈夫だよ。最近、勤務時間が減ってるんだ。
リストラか?
そうだね。パートのおばさんまで減らして、どうするんだろうね?
時代だな。辞めたらどうだ・・・。俺には、それなりの収入があるよ。専業主婦も悪くないと思うがね。
そうだね。そうしようかな。
で、土曜日なんだが、少しドライブしないかい?
ドライブ?
そう・・・。遠くじゃない。片道、40分くらいかな。
何処へ行くの?
はにわ博物館。帰りに、アウトレットモールに寄ってもいい。食事して、小物でもプレゼントするよ。
どうしたんだい?
夫婦の真似事をしたいと思ってさ。
・・・良いよ。連れて行って・・・。
嬉しいね。
・・・嬉しいのは、あたしだよ。
そうかい・・・。歴博にも行ってみたいなあ。
歴博、近いよ。歩いても行ける。・・・行きたい所がいろいろあるんだね。
人生の・・・スプリング・タイムを取り戻したいと思ってな。
・・・ジョー、おまえは出来るよ。だから、私もだ・・・。
俺は、自慢のワイフを、いろんな所に連れ歩く・・・。
・・・見た目はまあまあだけど、お頭は空っぽ?
ハハハ、そういう意味じゃないよ。

はにわ博物館


私、初めて来る・・・。
俺もだよ。目的は、帽子のはにわだ。
あるのかい?
・・・そう思うけどな。・・・良いのさ。
・・・・・・。
はにわの時代には、アーティストがいっぱい居て、アイディアを競っていた。で、優れた業績を残したアーティストの傑作が、今でも残っている。そう思うかい?
いいえ・・・。
彼らは、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、ウォーホルか?・・・確かめたいと思ってな。


あれっ・・・ビリーだ。
ビリーって、誰?
戦略分析室のサブ・チーフだよ。
奥さん、身重なんだ。
そのようだ。声をかけてみようか。
迷惑じゃない?
大丈夫だよ。土曜日戦争の仲間だし。


ビリー。
・・・丈治さん。偶然ですね。・・・妻のジュンコです。
初めまして。お世話になっております。
いや・・・。俺の連れで紀子だよ。同棲してる、初恋の女だ。
ジョー、そんな事を言うもんじゃないよ。
そうかい?
ごめんなさいね。悪気はない、不器用なだけなの・・・。
ビリーも同じです。口下手なの。・・・丈治さん、高校の先輩ですよね。
そのようだね。・・・邪魔して、悪かったね。
ジョー、私たちが声をかけたのよ。失礼だわ。
・・・・・・。
紀子さん、お気遣いは無用です。


・・・なんか事情がありそう・・・。
ジュンコ・・・。
でも、私たちには関係ない。
・・・・・・。
あの歳で、初恋の女と同棲?・・・おかしいよね。初恋の女なら、とっくに結婚してるよ。
回り道をしたんでしょう。元の鞘に収まれば悪くない。
ビリー、どんくさい。
おいおい、ずいぶんだね。・・・今日は良かったよ。帽子のはにわを見れたし、モスキート・ジョーにも会えた。
モスキート・ジョー?
先輩の、高校時代のニックネーム・・・。ボクシング部だった。地区大会の決勝まで行ったことがあるそうだよ。最軽量のクラスで戦っていた。大学のスポーツ推薦を断って、苦学して司法試験に合格。有能で不屈・・・。そう聞いている。僕とは違う。
凄いんだね。あんたの周りは、凄い人たちだらけだ。
そうだね。でも、人だよ。・・・人には、人に接するように接する。チーフKの持論だ。
・・・賢い人も多いようだ・・・。


ジョー、変わった物が好きなんだね。
好きで見ているわけじゃないよ。
そうか・・・。じゃあ、私のプレゼントを貰おうかな。
良いよ。欲しい物があるかい?
ブランド品の小銭入れが欲しい・・・。
お安いご用だ。
持ち合わせ、あるのかい?
足りなければカードがある。心配するな。おまえに恥をかかせるような事はしない。ハンバーグとファースト・キスのお礼だ。おまえのあそこも見れたし・・・。
ハハハ・・・。ジョー、口を慎め。
・・・公共の場所だからな。・・・紀子、おまえは見た目が良いし健康そうだ。・・・言い寄って来る男も多いだろう。
そうでも無かったよ。・・・パート先で、尻を触られたことがある。
それは犯罪だ・・・気持ちは分かるがな。
おまえも触りたいか?
・・・勿論だよ・・・。
・・・エッチな奴だな・・・。
否定はしないよ。・・・小銭入れを買いに行こうか・・・高価なブランド品をな。
はい。


(帰路の車の中で。)
ジョー、ありがとな。一桁違ってた。値札見て、プリントミスかと思ったよ。
・・・俺もだよ。
私、一人になって、いろいろ耐えてきた。おまえと再会して、心が揺れたよ。
・・・・・・。
欲しくても得られなかった物を欲しがったんじゃない。誰かに見せびらかしたかったわけでもない。私にも持てるんだって思いたかった・・・。
・・・解ってるよ。
私の男って・・・おまえだったんだ。
・・・昔から、そう言ってたじゃないか・・・。

サンデーモーニン


おはよ・・・ジョー・・・。
おはよ・・・何をしてるんだい?
駄文を書いてる。
へ〜え、良いね。インテリに見えるよ。
SNSって言うのかい・・・投稿サイトがあってね。アップしてるんだよ。
ジャンルはなんだい?
小説とエッセー・・・ストリート・ライターだよ。
凄いな。
誰も見やしないよ。
それでも、凄いや。・・・コーヒーとトースト、用意しようか?
・・・私がやるよ。
いやいや、俺にやらせてくれよ。
・・・悪いね。
お安い御用だ。


お待たせ・・・。
ありがと・・・。トースト、上手に焼けたね。
オーブンが、上手に焼いたよ。
ハハハ、そうかい。
・・・この世には、始まりがあり、ゴールに向かっている。・・・紀子・・・そうかい?
そう信じてる人達がいるようだね。
俺も、そうなれるかな?
どうかな。おまえは、ガキの頃から生意気だからな。
遠慮なしだね。
・・・私・・・あなたの・・・ルールに従っても・・・良いよ。
俺・・・そんなこと・・・望んでない。
本当に、そうかい?
どうだかな・・・まあ、ゆっくりやろうや。
・・・はい。


ジョー、今日は雨だね。
・・・うん。
私、雨は嫌いじゃない。・・・パート、辞めても良かったかい?
勧めたのは、俺だよ。
・・・こないだ、面識のない人からメールが来た。私の駄文を読んだって。・・・ハンドル・ネームは、たあぼう。「悪魔に魅入られた、もしくは、悪魔に魅入った男たち」ってテーマで、ちょこちょこ書いてたんだけどね。
それは・・・ター坊だ。
知ってるの?
土曜日戦争の戦士だよ。まだ中学生だと思うが・・・。悪魔を探している。誰もが認めるヤング・マンだ。
へ〜え・・・。
その・・・悪魔に魅入られたのは、どんな連中なんだい?
そうだねえ・・・哲学者、小説家、詩人、ルポライター、画家、犯罪者、その他だね。
評論かい?
いいえ、彼らの経歴を要約したものだよ。ター坊は、数少ない読者の一人だね。
経歴を要約して、どうするんだい?
どうもしないよ。要約するだけ・・・。これが、けっこう面倒でね。ネットでググったり、図書館に行って調べたり・・・。
・・・雨足が強くなった。
降ったり止んだりだね。でも、心配ないよ。私たちは、溺れない。
そりゃあそうだ。


ところがだよ、ジョー。40日間降り続いた雨が、全地球を覆い尽くした。
凄いな、想像もつかない。壮大だ。・・・地上の生物は、死に絶えたとでも言うのかい?
ほとんどな。だがしかし、生き残った生物が居たよ。その内、人は何人だったかな?
・・・・・・。
ヒントが必要かい?
ああ・・・。
船って漢字がヒントだ。
・・・最強のヒントだね。8人かい?
正解だよ・・・ジョー。・・・ノア、エムザラ、セム、セデケテレバブ、ハム、ネエラタマウク、ヤペテ・・・。ん?・・・もう一人・・・いたね。
・・・アダタネセス・・・。
ハハハ、ジョー・・・私達、気が合いそうだ。
そうだね。・・・紀子、俺、おまえが好きだ。
そうかい。だから何なんだい?
言ってみただけだよ・・・。
良いね。
昔から、おまえが好きだった。ずっと一緒に居たかった。
・・・・・・。朝から告ってんのか?
・・・そのようだ。
積極的だね・・・。


   令和3年5月4日


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