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梅干しの中には、神様が住んでいるらしい。

「梅干しの種の中には神様がおっど。もっと綺麗に食べなきゃだめだが。」

おばあちゃんが口をすっぱくして言っていた。


小学生の頃、冬休みはおばあちゃんの家に帰省するのが決まりだった。

畳の上で、ちゃぶ台に向かい、仏壇の隣でご飯を食べる。フローリングのうちとは違う食卓には、いつも梅干しが並んでいた。
庭先の梅の木から収穫し、おばあちゃん自ら作ったものだ。

お店で買うものよりも大きくて、とびきりっすっぱいおばあちゃんの梅干し。

当時のわたしは半分ほどしか食べることができず、いつも不恰好に残された梅干しが茶碗に残されていた。

そんなわたしを前に、おばあちゃんは繰り返し梅干しの神様の話をした。

具体的に何をした、とかどんなご利益があるかとかは言わなかった。

とにかく大切にしなきゃいけないことだけは、なんとなく理解できた。

おばあちゃんは神様の話が終わると、ヒョイっとわたしが残してしまった梅干しを口に放り込んだ。

ガリリッごりっごりっ。

ものすごい音を立てて、いつものようにおばあちゃんが梅干しの種を噛み砕く。

「種の中が一番おいしい。」

しわくちゃの顔をくしゃくしゃにして、おばあちゃんが笑った。

神様っておいしいんだ。

おばあちゃんの口をまじまじと見つめ、まだ見ぬ梅干しの神様に思いをはせた。


がりり。

ワンルーム、1人がけの食卓で、梅干しを思い切り噛み締める。

イオンで買った、おばあちゃんのものよりもずいぶんと甘く小さい梅干し。
種を噛み締めてみたけれど、奥歯がじんじんと痛むだけだった。

おばあちゃんが亡くなって、ずいぶんとたつ。

わたしはまだ、神様に会えない。


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書くことを習慣化したいOL。note初心者。少しずつアップデートしていきたい。 趣味で小説を書きます。

コメント2件

梅干しの中の神様の話は、僕も子供の頃聞いたことがあります。すっかりそんなこと忘れていたので、タイトルを見て「おおお!」と思い出し、一気読みさせていただきました!
>りとるけいさん
聞いたことあるんですね!わたしの周りでは誰1人として知ってる人がいなくておばあちゃんオリジナルかと疑ってました笑
コメントいただき、ありがとうございました。
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