164：📱🔗💻exonemo / Realm-UN-DEAD-LINK02

《Realm》の「白い四角」と《UN-DEAD-LINK 2020》と「黒い四角」．このふたつの四角が気になっている．このふたつの四角はどこかでつながってるのではないだろうか，と考えてしまう．《UN-DEAD-LINK 2020》には，ピアノの椅子の上に置かれた「スマートフォン」というもうひとつの四角がある．この四角＝スマートフォンは，何事もないときは黒いが，Player が殺されたときに白になる．《Realm》で示されている「白い四角」は，スマートフォンに触れたさいの指紋の集積である．白い指紋，白い四角，黒い四角はときに白くなり，そのときに，Playerが殺される．このように考えてしまうと，《Realm》の「白い四角」と《UN-DEAD-LINK 2020》と「黒い四角」とがつながっているのではないか，という考えから逃れられなくなってくる．

《Realm》で手元のスマートフォンに触れて，白い指紋を残しつつ，プロジェクションされた白い四角に「自分」の指紋がつくことを確かめる．そして，このインタラクションをさらに確実にするために，さらに手元のスマートフォンの画面に触る．インタラクションを確かめると，目の前の白い四角をより明確なものにするために，さらにスマートフォンの画面に触れる．ここには明確なインタラクションがある．しかし，このインタラクションがスマートフォンと白い四角とのあいだだけで閉じているのはかはわからない．白い四角のために画面に触れて生じた情報は，《UN-DEAD-LINK 2020》のスマートフォンに伝えられて，Playerを殺しているのかもしれない．

《UN-DEAD-LINK 2020》で奥の壁にある黒い四角は最初はなんなのだろうかとに見ていた．壁に開けられた「穴」なのかもしれないと思って，近づいて見てみると，それは四角い何かを黒い布で包んだものであった．

この黒い四角自体はインタラクションからは除外されている．《UN-DEAD-LINK 2020》でインタラクションが起こるのは，目の前にあるピアノと作品解説のところにあるQRコードを読み取り，オンラインで作品を鑑賞しているスマートフォンとのあいだである．手元のスマートフォンの画面に触れるたびに生じるピアノの音のなかで，壁にかけられた黒い四角はただそこにある．しかし，黒い布に包まれているのが「ディスプレイ」だと考えてみると，そこにはもしかしたらインタラクションが起こっているのかもしれない．しかし，そのインタラクションを外側から見ることはできない．

UN-DEAD-LINK | INTERNET

パソコンで《UN-DEAD-LINK 2020》のオンライン版を鑑賞すると，黒い四角が「穴」として表示される．この四角い穴から人が出てくる．この黒い四角はどこにつながっている．そして，そこから裸の人間が出てくる．

New video by 水野勝仁

オンライン版では黒い四角は穴となり，どこかとつながって，裸の人間の通り道となっている．つぐに考えつくのは，穴から出てくる裸の人間が殺されたPlayerであるということだろう．オフライン版の作品では，Playerが殺されるたびにピアノが音を奏でるが，オンライン版で穴から裸の人間が出てくる．もしそうだとすると，オンライン版にはピアノがない．オンライン版の黒い四角はインタラクションの回路になかに組み込まれているといえる．しかし，オフライン版の作品でのインタラクションの結果が，オンライン版の黒い四角に反映されているだけで，オンライン版では黒い四角そのものとインタラクションはないとも言える．

オンライン版の「UN-DEAD-LINK」会場には，《Realm》が今のところ展示されていない．これも気になる点である．オンラインの「手」はあらゆる作品に触れることができる．しかし，《Realm》は展示されていないので，触れることはできない．黒い四角から出てきた裸の人間に触れると，彼・彼女は骨が抜けたようにフニャフニャになってしまう．死んだわけでないけれど，どこか死んだしまったような感じになる．というか，裸の人間はもともと殺されたPlayerではなかっただろうか．

《Realm》の白い四角をつくるためにスマートフォンに触れるというインタラクションから生じる情報が，どこかで逸れて，《UN-DEAD-LINK 2020》に伝えられるとしたら，として作品を記述してきたけれど，この作品間の情報のやりとりがあるかないかということ以前に，《UN-DEAD-LINK 2020》のオフラインとオンラインというふたつのバージョンにおけるインタラクションと黒い四角の位置付けを記述することが大切な気がしてきた．いや，そもそもエキソニモが作品に「インタラクション」を久しぶりに取り入れたことの意味を考える必要があるのではないだろうか．

私たちは，《断末魔ウス》《Spiritual Computing (Series)》のようなマウスとカーソルのセットでディスプレイに「触れる」のではなく，スマートフォンというディスプレイを見て，触れて，インタラクションを行う装置を日常的に使うようになった．マウスとカーソルとはディスプレイと介して，一つの「インターフェイス」として接合され，そこで関係が閉じていた．しかし，タッチパネルにおいては，指で直接触れたディスプレイの先の「向こう側」を考える必要があるのかもしれない．その「向こう側」を考えるきっかけとして，《Realm》の「白い四角」と《UN-DEAD-LINK 2020》の「黒い四角」とを考えるといいのかしれない．ディスプレイの先の「向こう側」を考えるためには，インターネットへの接続は必要であったし，私たちをインターネットを含めた大きな回路に取り込むために，インタラクションが必要であったのかもしれない．そのときに《断末魔ウス》《Spiritual Computing (Series)》のように閉じた回路ではなく，開いた回路にするために，《Realm》と《UN-DEAD-LINK 2020》は「死」という対象が設定されているのかもしれない．私たちはディスプレイに触れることを通して，インターネットという「向こう側」と関係を持ちつつ，知らないうちに「死」に触れているのかもしれない．