あっちから見るかこっちから見るか(Mi)

昨日、旦那に自分の価値観のルーツになった本の話をした。感受性が異常に強く、思春期に本の虫だった私は読むと心が共鳴するような本に出会っているわけだけど、旦那にはそんな経験は無いそう。
私はびっくりして「じゃあ、私のルーツになるような本読んでみてよ!」と半ば強制的に旦那に本を押し付けたのでした。
その本は

ニシノユキヒコの恋と冒険(川上弘美著)です。話のあらすじは

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ……。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あった十人の女が思い語る。はてしなくしょうもないニシノの生きようが、切なく胸にせまる、傑作連作集。
(Amazonから)

簡単に言えば、ニシノユキヒコという男性の今までの恋愛について短編集で描かれているものです。

ここから先ネタバレありですよ!



この作品は短編集になっているので、私の印象の深いものを一篇読んでもらいました。それが「おやすみ」というお話。
登場人物はニシノユキヒコとその上司の榎本真奈美。簡単に言えば二人は出会って恋に落ちて・・・という話。

私の気持ち

ユキヒコの人を愛していない感じが分かってしまう真奈美の気持ちがよく分かる。私は大好きなのにこの人は私のことだけを夢中で好きではないっていうのは目の感じというか空気で分かってしまう。
それを隠そうとしているならまだいいけど、ユキヒコはそれを隠そうとしない。だって、ユキヒコは真奈美のことが好きじゃないから。大切にしなければっていう思いが欠如している感じがする。
もちろんユキヒコが人を好きになれないバックボーンとかはほかの短編で描かれていたりするんだけど、それを知っているとか知らないとかではなく、感覚で愛してくれてるか愛してくれてないかって分かってしまうものだと思う。
もちろん、それが外れることもある。A(男)の愛し方とB(女)の愛され方の感覚に齟齬があれば、Aがどれだけ愛したってBは「愛されていない!」って言うはず。でも、問題点はそこではなくて、Aが本当にBを愛しているなら、Bがどういう風に愛されたいかっていうのも考えてあげなきゃいけなんじゃない?っていうこと。それが一つの思いやりだと思うし、普遍的な愛につながると思う。それはBがAに対しても言えること。Aのことを理解しようとする気持ち。これがAの愛情表現だと納得する気持ち。それが愛だと思う。
そういう意味ではユキヒコだけではなく真奈美にも愛はない。でも、真奈美はユキヒコを愛しているし、ユキヒコは真奈美を愛していないと思ってしまう。それは、客観的視点の私の愛の形を二人に照らし合わせているだけだけど。
真奈美が「ユキヒコが私に恋に落ちた」と言った時、正直、私はユキヒコは真奈美に恋に落ちたわけではないと思った。「ずっと一緒にいてくれると言った女への安心感と永遠なんてない不安」のジレンマに陥っただけだと思う。それが真奈美である必要性はさしてない。だけど、真奈美は好きだから「私を好きになった!」と思う。だけど、好きになってないユキヒコの行動は変わるわけなく、結局、揺れ動きながら無意識で「永遠なんてない不安」が勝ってしまったんだろう。
だから真奈美はしびれを切らして別れを切り出すけど、ユキヒコは「永遠だと思っていたのに!」(永遠の憧れが崩れる)とショックを受けて「結婚しよう」とつなぎとめる言葉を放つ。でも、そんなもの真奈美の心に届かないよね。「今までの行動振り返ってみろ!」ってなるよね。
この話は真奈美視点(と言うか全話女性視点)だから、どうしても真奈美に感情移入するから、私としては「好きじゃないなら付き合うなよ!!!」って思ってしまうし、「私がこんな思いしたら悲しい!死んじゃう!!」って思った。

旦那の気持ち

え、ユキヒコ何もしてなくない?勝手に真奈美が燃え上がって勝手に真奈美が覚めて急に別れ切り出すのなんなん?情緒があれなん?真奈美どうかと思うよ。勝手な思い込みで暴走してるだけじゃん。
ユキヒコは何も悪くない。悪いのは真奈美。
あと、この本をルーツっていう感じMiの感性が分かるよね。今までの恋愛遍歴とも重なるし、お察し・・・(笑)って思っちゃった。

え?ここまで一つの話で意見割れます???(笑)私はユキヒコが悪い、旦那は真奈美が悪いって、ここまで真っ二つな意見になります???(笑)
男性だとか女性だとかの話ではないと思うんだよね。旦那と私は本当に対極にいる存在で、お互いそれを面白がってる節がある。だからこそ同じ作品を見ることが私は好きなんだけど、旦那はそもそも感想言い合ったりするのが嫌い。「感想なんて浮かばない」という。だけど、私が好きなことを知っているから合わせてくれる。愛だね。

面白いのでもう一遍

面白かったのでもう一遍読んでもらいました。「通天閣」という私的に感情移入がすごくできるというよりは「これはユキヒコが悪いだろ!」という話。
登場人物はニシノユキヒコ、昴、タマちゃん。ニシノユキヒコ以外は女性。
昴とタマちゃんが一緒に住んでいて。昴がニシノユキヒコと仲良くなっていく・・・と言うお話。

私の気持ち

タマちゃんは昴のことを愛している反面、コンプレックスを感じていたんだと思う。タマちゃんと昴は正反対だし。昴はタマちゃんのこと大好きだけど、別に比較するでもなく自由に生きている。その「自由」がきっとタマちゃんは羨ましかったんだろうなと思う。
そんな中転がり込んできたユキヒコに昴をとられる嫉妬と同時にこの人と一緒になれば昴に勝ったことになる?なんて思っていたんじゃないだろうか。
そしてユキヒコは酔っぱらってタマちゃんを誘う。そしてタマちゃんはのる。昴がそれを見る。激昂。そりゃね。
結局ユキヒコは昴を失った悲しみに暮れる。もうあたしは「は???????」って感じよ。まじで好きな女は大切にしろよ。悲しむなら大切にしてから悲しめよ。愛するのが怖いけど愛されたいなんて無理な話だろ。
そんでもって手を出すのがタマちゃんって完全に二人の関係崩すじゃんか。その辺の思いやりないの?もー!ユキヒコ!!!!!

旦那の気持ち

まあ、ユキヒコも悪い。二股はよくない。でも、そんなに怒るかね?とりあえず、昴はしかるべき施設で治療を受けてください。こんな人いません。生活できません。
もう完全に恋愛小説じゃなくて人間観察ファンタジーじゃん。

淡泊~(笑)私との落差(笑)
やっぱり旦那は冷静に物事を分析する力にたけてるんだなと思う。逆に私は感情で動きすぎる。
私の「恋愛」と旦那の「恋愛」には大きな解離があるんだろうと思う。でも、それがお互い面白いし心地いい(と思ってる)。だけど、私はもっと旦那の考えてることを知っていきたいと思う。旦那は自分の考えや気持ちをオープンにしない。多分、感情に即して言葉にしていくのがあんまり得意じゃない。もちろん、それを強要しようとは思わないけど、たまにはこういう作品を通じてお互いの価値観を知っていきたいなと思う。

おまけ

アマゾンプライムで「コウノトリ」見始めました。旦那と。

2話まで見たけど、すぐ泣いちゃう私と一滴も涙を流さない旦那。
私が泣き過ぎなのはわかる。泣いている人を見るとつられて泣いてしまうくらいすぐ泣く。看護師向いてなさすぎ。
コウノトリ見てると患者に寄り添う気持ちとそうじゃない気持ちの切り替えがしっかりしているなと思う。私はそれができないから医療現場が向いていない。
旦那はコウノトリ見て「よく出来てるドラマだな」とだけ言ってました。
「そんだけかい!」って思って「自分ならどうする?とか思わない?」って聞いたら「自分ならどうするか考えるのは全部Miの視点じゃん。男性なんてどうしようもないでしょ。とりあえずテニスボールは準備しようと思った」だそう。
2話は妊婦が脳挫傷起こして、その夫が妻の命と子供の命のどちらかを選択してシングルファザーになる話だったから、あの場合どうする?と聞いたら「もうあの状態になったら子供でしょ。奥さん死ぬじゃん」「でも一人で育てるの大変じゃない?」「絶対育てるよ。実家に戻ることになっても育てる」と言ってくれて力強くて惚れ直しました。
ちなみに、まだ子供はいません。

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