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バンクーバーで日本酒作ろう - 発酵/観察編

はじめに ー 私は当時日本国外に在住していました。日本では免許なしでの酒製造は禁止されています。梅酒は元々のお酒に果実を足したもので酒造ではない/甘酒のようなアルコール度数の極端に低いものなどはグレーゾーンだそうですが、原則日本国内での「アルコールそのものを製造する」行為が違法とされています。御留意ください。

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下ごしらえを終えた次の日、お米を蒸すところからスタートです。

発酵初日

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今日はこんな流れで進めます。
お米を蒸す→軟水、米麹、イースト菌(酵母菌)を入れる→保存瓶に移す
※お米を蒸す工程に炊飯器をおすすめしません。酒造りにはパラパラとしたお米にしなければならないのです。

昨日準備した米をよく切りましょう。私は2時間ほどざるにあげて放置しました。このくらいの量の米であればそこまで神経質にならなくて良いですが、急いでいる時はキッチンペーパーで水分を取ってあげるのが良いです。

次に小鍋を用意し、蒸し器をセット(ステンレスが好ましいが私は入手できなかったためプラスチックでした)蒸し器につからない程度に水を入れて、蒸し布に米を入れて準備完了。

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普通の鍋なら40分近く蒸らします。圧力鍋なら半分くらい。べちゃっとしないことが大事です。米に透明感が出て、パラパラとしている、食べるにはちょっと硬すぎくらいが頃合いです。

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出来上がった蒸し米はバットに広げて冷まします。

その間に酵母をぬるま湯に溶かしましょう。
写真のようなパン酵母や乾燥酵母には30度くらいのぬるま湯につけることで酵母が活発になってきます。

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蒸し米、米麹、酵母、水を合わせ...ついに発酵開始!

さて、蒸し米が冷めた頃合いで保存瓶に入れ、軟水650mlを入れます。
私は保存瓶が小さかったので2つに分けて入れています。

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次に、150gの米麹を入れてかき混ぜます。

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最後に、ぬるま湯で溶かした酵母を入れて全てをよく混ぜ合わせます。

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カッチコチの米麹、そして蒸し米。。。果たしてどうなることやら。
初日はこれで終了。醪は発酵段階で酸素が必要になります。また酵母がどんどん湧いて容器が破裂する恐れがあります。なので保存瓶は蓋を完全に閉めないようにしましょう。

発酵2日目

初日は、混ぜた段階ではパン酵母の香りがしていたのに、数時間ですぐに水を吸い始めてお米の香りがしてきました。
2日目になることには体積が増えて瓶がパンパンになっていました。

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↑初日、混ぜ終わった直後

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↑2日目、まるで炊き立てご飯のような状態に

瓶を揺らすとプチプチと醪から気泡が弾けるような音が聞こえ、匂いにもパン酵母の香りからお米とアルコールの香りがするようになりました。底の方から発酵が進んでいるようです。透明な瓶に入れると観察がし易くなるのでおすすめです。

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発酵を進めるために、暗所(常温)に移しました。あんまり閉ざされた空間に置くと匂いがこもりますが、涼しく発酵しやすい場所に安置するのが良さそうです。

発酵3日目

おかゆのような状態になってきました。アルコールの匂いが強くなり気泡が出てきてる状態がわかります。

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日本酒は並行複発酵と言って[蒸し米のデンプンを米麹の酵素の働きによって分解]することと[酵母がアルコールと二酸化炭素に分解する]ことが同時に行われています。酒蔵ではさらにこだわりの材料と作業工程が加わるため、種類もより多く複雑な味わいになるのですね。

発酵4日目

醪の水分量が増えて(蒸し米がとろけて)きました。瓶の底の発酵が先日より進んだ様子がわかります。

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発酵5日目

発酵が初日と比べて大分進んで、お米の形がだんだん崩れてきました。
前までは揺らさないとプチプチ音が聞こえてこなかったのに表面で気泡が弾ける様子が見れるようになりました。香りも日に日に強さが増してきます。

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発酵6〜10日目

この期間あたりまでは米麹自体が炭酸を含めているので炭酸が強く感じたり風味が違ったり細かい変化がみられます。

徐々に水面と瓶底とで分離するようになっているような、、瓶底は醪の発酵がほぼ終わって形がほぼないのに対し、表面は発酵が進まなかった米麹の米粒が浮いてくる状態です。

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発酵11〜14日目

写真は全て混ぜたあとの状態なのであまり変わらないように見えますが、12日目の写真のような分離がどんどん進んでいってます。匂いも味もほぼ市販の日本酒のように、甘くフルーティな風味に!

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酒を濾す

さあ最後の工程です。本来の酒蔵での工程では布袋に入れた醪を時間をかけてじっくり圧をかけて濾すそうですが、今回はそこまで量がないのと(時間短縮と)あくまで実験なので「ざる」で簡易に濾すことにしました。

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2、3時間ほど放置します。あんまり長く放置すると空気に触れて風味が変わってしまうので注意。

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まともな布袋がないので殺菌済ガーゼを利用しました。目が細かいざるを使用してしまったため重石を置いてしっかり濾します。

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さらに細かく茶漉しも利用して最後まで絞り切ります。

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完成!!!

出来上がったどぶろくは乳白色をしていて、黄身がかった状態とざっくりと濾しただけの醪が沈殿して(澱/おりが溜まった状態になって)いきます。

どぶろくは別名、濁り酒やもろみ酒とも言われており、この状態からチャコール(活性炭)を入れることで透明の清酒となります。

飲みたい一心で始めたプロジェクトだったので『酸っぱくなるな。。美味しくなれ。。。』と念を込めながらの観察でありました。完成した日本酒は非常に甘く(パン酵母はバナナのような風味がある)、でもアルコールはしっかり入っていて、温度で匂いも複雑に変化する、魅力的なものになりました。酸化しないうちにと、2瓶ぶん(600mlほど)を3日も経たずに消費してしまいました。

美味しくできて、よかったです。

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おまけ

濾したあと残った酒粕を使って酒粕チーズケーキを作りました。これと濁酒酒を持ってバンクーバーの友達とピクニックをして振る舞いました。

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彼らにも日本酒の複雑な味を理解してもらえて非常に満足できましたとさ。


以上でこの日本酒(どぶろく)作りでございました。
準備編、発酵/観察編の2編にわたる内容となりましたが、いかがでしたでしょうか?

最後までお付き合いいただきありがとうございました。なにか参考になれば幸いです。

では。

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