見出し画像

2023.06.07

 映画『怪物』を見ました。

 今日はコーヒーをこぼした白帆布(はんぷ、って読むことをいつも忘れてしまって、毎回ググっていて情けない)のトートバックと色褪せたネイビーのTシャツを黒く染めた。
 多少色むらはあるがいい出来だ。染め上がったあとで、その出来にうっとりする傍ら「染める前の写真を撮っておくべきだったな」としくじりを自覚する。

 染めた衣類を陰干しするあいだ、嫌気性発酵プロセスを経たコロンビア産のコーヒー豆を焙煎した。まだ飲めないから一生懸命においを嗅いでいるが、こちらもどうやらうまくできたんじゃないか。今日はいい日だ。

 先日は元気が足りなくて見に行けなかった『怪物』、どうやら今日は元気の積立がうまくできているので、見に行くために必要な元気の残高がありそうだ。
 シネコンまで向かう田圃道は羽虫のストリームで虫まみれ。ややテンションが萎えるが、どうにかチケットを購入した。

 以下、ネタバレなうえになにも言っていないような覚え書きを残す。今から見る予定の人は読まないでくださいね。





・観了感がいい。生きるのって本当やだ、もうどうでもいいや、知らね〜!っていう方の観了感。そりゃな、そういう状況ってさ、あたかも電車の中で豪雨を眺めて台風一過の草っ原を駆け巡るみたいな高揚感だよな。それでいいよ。最高のふたりで終われたね。良かった。

・前の会社でパワハラ上司の相談をするときよく「あの人は母子家庭だから」って言われて終了ということが多かった。「私も片親育ちですけど……」と言いたくても言えないあの感じ。嫌だったな。「母子家庭」「片親」に対する心ない偏見が作中人物から露呈されるとき、暴れたいくらい苦しかった。

・いやしかし家族の仲いいなあ。そんななか「気を遣う」と言わせる心意気、見事。そうだよね。

・ACのCM「黒いくじら」を想起させるような物語の経過。

・政治の受け答えみたいな学校のシーン嫌すぎたな。

・「解体」「再分解」を感じた。この「解体感」はやや田舎情緒を残す諏訪市付近だからリアリティがあるのではないだろうか(意外とそんなことないとしたら、絶望だが)。

・さいごに校長先生が「掴めない幸せはクソッタレだよ」みたいなことを言っていたの、良かったな。発せられた瞬間はうまく飲み込めなかったけど、良かったよな、って思っているから、良かったんだろうな。留置所の話は私の理解力が不足していてよくわからなかったな。もう一度見るなら校長先生の目線でストーリーを眺めたい。

・是枝さんのインタビューを聞いた。キャスティングのさいにバラエティの番宣に来たアクターを見て「言葉のセンスと間合い」「戸惑い」を観察する、と言っていた。たしかに、役者の反射神経とセンスで成り立っていたな、あの映画。

・動物を弔う。作文を書く。あんまりやったことないな、どちらも。

・子役の人たち演技力すさまじ。

・名付けられる前の、もやもやして掴めないモノの総称としての「怪物」……!

・こぼした水そっちのけで関心のある物事に熱中する様子とか、火事を見て昂って近所迷惑なのに叫んでしまう感じとか、ちょっとコメディーに描いていたけど面談の場で本音をぽろっと言ってしまう感じとか、地の演出が現実よりも現実的すぎるが故に、とても自然的なことのように感じるというのが、一種のステレオタイプ破壊に繋がっている気がして快かった。
 みんなやっぱり、どこかを切り取ればアルファベット4文字とか3文字の傾向はある。もちろん重篤な症状に悩む人に「ふつうだ」と声をかけるつもりはない。だけど、最近の、猫も杓子も「自分ADHD/ASD/HSPなんですよね」というカジュアルな自虐ってオモロイやろというムーブにはちょっぴり苦言を呈したい。

・レイトショーとはいえ観客が私含めて4人しかいなかったんだけど経営大丈夫かな、この映画館。

 以上!

 すこしだけ大人に近づいたので、常備酒をビールとワインからウイスキーに変えた。最近やっとハイボールのおいしさがわかったような気がする。ウイスキーも沼だぜ。気をつけろ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?