2023.06.06
今日は、本当だったら、友人に強く勧められた「怪物」を観に行く予定だった。家を出て運転中に、他者の人生に耐えられうる心の許容量が不足していることを自覚し、シネコン前まで来てUターンした。今はマックで呆然としている。
プレミアムローストコーヒーMが空っぽになるまではとりあえず、持ってきた本を読もう。せめて、読むという気概だけは見せよう。コーヒーをひとくち飲んだ。まだ、スマートフォンをいじっている。
インターネットで友だちになった人と感想交換会をするために『チッソは私であった』を読まなくてはならないのだ。
いや、それ以前に『砂の女』の感想に返答をしなくてはならないのだけど、どうにも筆を取る気になれなくて参ってしまう。その人に問題はいっさいない。すべてはゼルダしかやる気がしない私の怠惰の問題だ。
スーパーカブで町を走っていると、いろいろなことを思い出す。友人が素敵だったこと。私をいらいらさせる人間の一言。たぶんもう会わない人のこと。好きだった人と嫌いだった人。自分の不甲斐なさ。死んだ方がいいという後悔。
記憶が風に乗って私から離れていく。さっき通過したうしろの道路に、残留思念として置いていく。憑き物が落ちたように軽やかになりたい。憑き物が落ちた部分に、ゲーム達成率の向上行為ではなく、生活の定礎力を詰めたい。
ゆうげに作ったスパイスカレーはかなり美味しかった。いつも絶対に入れていたクミンを使わずに、カルダモンとコリアンダーをベースに仕上げたのだ。ターメリックとシナモン、レッドチリを少々。生姜のような清涼感が特徴的な、夏に食べたい爽やかカレーになった。
なるほどクミンを使わないとこうなるのか、という気づきが実によかった。では次は基本のスパイスにマスタードを追加したカレーを作ってみよう。
手持ちの焙煎機を買った。いっぺんに50gほどしか煎れないという欠点はあるものの、これがなかなか楽しい。焙煎したコーヒー豆は、あっという間に飲み切ってしまった。
インターネットで4種類ほど、生豆を購入した。まずはシングルオリジンで飲んでみて、そのあとブレンドに挑戦してみよう。プレローストとポストローストを比較してみるのも楽しそうだ。
私は浅煎りしか飲まないのだけど、友人のコーヒー・フリークたちにご馳走するために、少し深煎りを試してみようか。
こういうときだけ少しだけ、「まだ生きていてもいいかなあ」なんて思う。そう長くは持たないのだけど。
げんにもうじわじわと死神が私に巣食っている。
……『チッソは私であった』を数ページ読んだ。だめだな、これ。苦しい。心に許容力が足りていないようだ。今読み始めたら呑まれてしまいそう。
細かな羽虫が店内の照明にまとわりつき、たまに視界内で暴れ出す。田んぼの真ん中に煌々と光るマックがある、私の暮らす町。どうにもやる気が削がれる。
プレミアムローストコーヒーM、もう少しでなくなってしまいそうだ。また本が読めなかった。明日は映画を観られるだろうか。
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