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2023.05.27

 精神科に行くと「無理なときは無理をしないで、ずっと寝ていればいいんですよ」と言われるから、そういうわけにはいかないんだと歯噛みしつつ「え、そうなんですか〜!」と大袈裟に驚いてみせる、毎回。そう、毎回だ。なんという発展性のなさだろう。

 いやいや、そういうわけにはいかないじゃないか。日がな一日眠っていて「オッケー!」と思える私になるためには、日本では逮捕されてしまう薬を飲むくらいの意識改革を要する。

 今日は1日なにもしていないのに疲れた。昼頃に起きて、コーヒーを淹れて、ストック用の冷たい玄米茶を作って、部屋に雑巾をかけただけなのに、なんとなく疲れた。

 読みたい歌集が積まれた窓辺。吸い殻をぎゅうぎゅうに詰めたガラス瓶。自転車に乗った義務教育過程の声が響く。聞いているようで聞いていないネットラジオ。すべてに気を取られる。その状態に陥っていないと、鬱の橋桁が豆腐みたいにもろもろと崩れていく気がするのだ。開いたページの文字列を、脳みそで処理することができない。そんなことをしたくないんだろう、本心では。

 明日はなにかしないとな。

 明日は、街の本屋さんで取り寄せてもらった『チッソは私であった/緒方正人』『花咲く機械状 独身者たちの活造り/関悦史』を受け取りに行く。読まなきゃいけない本(読まなきゃいけない本?読まなきゃいけない本って一体なんなのだ?)がどんどん溜まっていく。

 街。

 2時間に3回くらいしか電車が来ないこの「町」から、電車に乗って30分くらいで着く、街。

 まもなく新幹線のレールが敷かれるということで、観光客のための再開発に燃える街。いじればいじるほど、誰に需要があるのかわからなくなっていく。誰もが口々に「上層部のオジサン共の癒着とエゴだ」とため息をつく。誰も望んでいない変容を遂げる駅前。

 目玉が飛び出るほどダサい名前のタワーマンションがニョキニョキと伸び、大好きだった古本屋や洋食屋、小汚い赤提灯たちが、立ち退き要請でどこかに行ってしまった。代わりにやってきた、バーガーキングとガブリチキン酒場。

 明日はついでに、最近できた立ち飲みクラフトビール屋で一杯ひっかけてから、にっくき再開発のせいで、もうすぐ店を閉めてしまうクラフトビール・バーに寄ってオレンジワインを飲もう。そのあとカウンターだけの小さい寿司屋でカニグラタンを食べよう。

 こんなことばっかしていていいのだろうかたまにわからなくなるそんな時は、ネットメディア編集長の原宿さんが言っていた「狂い歩け」というスローガンを、強く胸に留めることにしよう。今日はせめて積み本をちょっとだけ消化する。英単語をちょっとだけ覚える。あとでステーキを焼こう。そしたら明日は狂い歩けばよろしい。

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