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2023.07.23

 しばらくの間、手痛い失恋の経過日記になりそうだ。

 いつか「あんな決断、しなければよかった」と思う時が来るのだろうか。このまま順調に結婚して、子供をもうけて、地元から一生から出ることなく、「こいつめ」と思うことはあるけどそれなりに理解のある人と、同じ屋根の下幸せに暮らすことを選択すればよかった、と後悔する時が来るのだろうか。

 5ヶ月前に別れを考えてはじめたころからこの瞬間まで、あなたのことを考える折に、涙が流れないことは片時もない。浄化をうながす排出作業。溢れれど溢れれど、こんこんと湧いてくる。いったいどれだけの堪えきれなさが、体内に蓄積されているのか。

 可愛くて、かっこよくて、自己肯定感が高くて、面倒くさくない人でなくてごめん。いい歳して子供を欲しがらないで、ごめん。自分のやりたいことを優先させて、あなたが切に願う「子供がほしい」という願いを叶えられなくて、すまないと思っている。5年も付き合わせてしまった果てがこんな結末で、本当に申し訳ない。

 ほくろの多い、白くてすべらかな肌。ウィットとプリミティブのあわいで揺れるユーモア。ふと廃道に足を踏み入れられる勇気。無邪気な好奇心。どぎつい揶揄。5年間かけて培った小気味良い応酬。脳みそが、四肢が、内臓が、しつこくしつこく思い出すことを止めない。

 すべてとお別れをしたのだ。

 幸せになってほしい。きっと、幸せになるだろう。優しくて、他人思いで、人の話に耳を傾けることができて、自分の頭でちゃんと考える、好奇心旺盛で、清潔感があって、愛嬌のある人だ。私なんかよりもっと素敵な人と一緒に、幸せに暮らせるはずだ。

 その幸せなあなたの姿を見て、あなたの隣に立つその伴侶に、醜く嫉妬するような人間にだけはなりたくないのだけど、全く自信がない。

 誰よりも、隣にいて心地よかった。ぼろぼろの毛布に包まれたときの安心感に、いまにも絆されてしまいそうだ。今から謝って縋って自分のやりたいことぜんぶ諦めて、いいなりになって暮らしたい。

 今後、何度も何度も繰り返す羽目になるのだろう、処方箋みたいなプレイリストが流れるAirPotsを耳から引き抜いて、熱いシャワーを浴びよう。

 恋人だったあなたを最後に見たのが、憎らしいほどいい天気の朝でよかった。

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