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サブカル大蔵経297佐々木実『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』(講談社文庫)

銀行再編と郵政民営化という「改革」。それを推進した竹中平蔵さんのか動きを綿密な取材で活写。学者大臣から総理候補にまでなった男の謎の人生。

官僚にだけは絶対なるまいと決めていました。官僚体制そのものだから嫌だったんです。/大学院を出ていなくても開銀では排除されていても、単行本でなら勝負できると感じて、実際に勝負したんだと思うよ。p.46.80

 ある意味叩き上げの根底に潜むコンプレックスと承認欲求は日曜劇場的ルサンチマンなのか?

森政権の支持率が下がってきて、竹中さんは小泉さんと会っていました。小泉さんに「総裁選挙に出るのなら政策を本にまとめたほうがいいですよ」と竹中さんは提案した。/総務大臣時代の副大臣として竹中に使えていた菅義偉等と協力しながら次第に麻生を追い詰めていった。p.176.393

 この20年の反知性グループたち、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、橋下徹、菅義偉らはなぜ竹中を信頼するのか。

竹中は東京財団の潤沢な資金を使い海外の要人を招いてシンポジウムを開催するなど派手な活動を繰り広げていた。/一方では最大野党の党首である鳩山とコンタクトをとっていた。政局がどう転んでも政権中枢とのパイプを維持できる体制を整えた。p.159.177

財団のカネと大学の肩書と米国の人脈で、自腹をも厭わない胆力でシンクタンクとブレーン会議を再生産し、政権に寄り添う。

今郵政の民営化をする必要はないんですと言う。1ヵ月時間をください。1ヶ月で自分が郵政民営化の理屈、必然性を考えるので1ヵ月後に話を聞いてくださいと言った。(田原総一郎)p.328

 実は自らが郵政民営化の必要性を感じていない、と田原総一郎に相談する可愛さ。

経済学者としての土台を築かないまま政治に参画しようとする姿勢。/竹中はあくまで政策に関与するための手段として経済学を捉えている。p.104.124

いったい何のために時々の首相に仕えたのか、どんな使命感があって何がしたかったのか、結局読み終わってもよくわからないままです。

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小泉政権における竹中のポジションは東欧の旧社会主義国にビジネスチャンスを求めて押し掛けたアメリカの経営コンサルタントとどこかに似ていた。/外資をハゲタカ呼ばわりする人がいますが腐った資本が詰まって動かないので活力を投入すべきです。サッカーの日本代表の監督にフランス人のフィリップ・トルシエ氏が就任しチームを蘇生させているのと同じです。(慶応大学教授島田春雄)/小泉内閣の経済政策が世界のマネー資本主義を支えると言う奇妙な構図。p.9.190.363

 アメリカの手先となって、アメリカに富を流す。なぜか。アメリカは自分を認めてくれたから、ではないか。

下世話な話ですが竹中さんは5年半で一億円以上私財を投じました。(岸博幸)p.223

 岸博幸がこまわりのように登場する。

その後木村は落合を追放して日本振興銀行の経営者となるがこの銀行2010年に破綻する。/日本振興銀行の破綻で3000人を超える人々が預金を失う中、木村が守り抜いたのは自分自身の財産だけだったのである。金融維新を唱えた革命家の、これが真実の姿だった。p.278.416

 竹中の代わりに堕ちた木村剛。プロレス的に想像すれば、更生して竹中を告発できるとしたら、この男しかいない。

この時以降ですよ。麻生さんが竹中嫌いになるのは。p.320

 竹中に疑念したのは、麻生と飯島勲。

この日、日本の議員内閣制制度の石垣の一角が崩れ去った。(堀内光雄)p.322

 今に続く道。

さーっと読みました。政策の議論ではないですね。政策は非常に細かな行政手続の積み重ね。だから難しいんです。細かいことがだんだんわからなくなってくると、みんな思想と歴史の話をします。大いにされればいいが、それで政策を議論すると間違います(竹中談)。/言論の基本的ルールを逸脱しているが故に、言論戦に敗れることがないのである。p.374.422

 言葉で丸め込み、言葉から逃げ続ける。ちょっと秋元康に似てるのかな?

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