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サブカル大蔵経525松井浩『打撃の神髄榎本喜八伝』(講談社+α文庫)

イチローに勝てる唯一の存在、榎本喜八。ロッテの伝統の誇りであり、被害者。

榎本の目指したバッティングとは、いかにバットをコントロールしながら素早く振るかということに集約される。そのためには全身の筋肉が脱力し自然体になる必要があった。臍下丹田はその自然体になるためのスイッチのようなものだった。さらに自然体とは、身体のあるがままの作りと機能に忠実に動くことであった。この機能とは、地球上に生命が誕生してから、人類へと進化する約30数億年の間に獲得してきたものである。p.360

30億年かけて到達したバッティング…!

刹那こそ無限なり。バットと宇宙。

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ようやく榎本の話が少しは理解できたかなと思ったのは、解剖学・運動生理学・身体論・運動科学・武道・武術の歴史までを勉強し、実際に脱力法や呼吸法のトレーニングを6年間積んだあとの事だった。p.27

 悟りを説いても伝わらない、釈尊の当初のジレンマのよう。

武智の投球術に、この戦争体験が大きな影響を与えていた。武智にとっては相手バッターの好きなコースこそが敵艦だった。だからそこを果敢に攻める。だが野球で玉砕戦法を取れない。相手の好きなコースを攻めながらボール1個、半個分だけずらした。p.74

 完全にアストロ球団です!戦争と野球…

ある時ふっとバットを軽く感じたことがあったの。それが背中を亀の甲羅のように丸めて構えて、グリップを左肩より高い位置に置いたときだったんです。すっと両脇がしまって、バットが軽く感じられた。p.87

 ある時に至るまでの努力。訪れる軽さ。

この年の日本シリーズ、西本幸雄が率いる大毎オリオンズが対戦したのは三原理監督率いる大洋ホエールズだった。第一戦、三原はノーコンの鈴木を先発に起用、初回三番榎本から三線を奪ったところで秋山に変えた。2回から9回までを4安打に抑え、1対0で勝つ。結局秋山は4戦すべてリリーフで登板。ミサイル打線爆発の目をことごとく摘み取った。p.225

 三十年ほど前、カネやんも一度、初回だけ榎を登板させたことがあった。あの時は何その気まぐれ采配?と思ったが、三原も、そして今や「オープナー」…。戦法は巡る…。

日本シリーズ第二戦後、永田オーナーが電話をかけてきた。ミサイル打線と言うニックネームまで持っているチームがなぜスクイズをしたのかと言うんだ。バカヤローと言ってきたのでこっちもかカッとなった。西本はリーグ優勝を果たしながら1年で解任される。前年に監督を解任された別当に続き、榎本の理解者の1人がまた球団を去ることになった。p.229

 永田ラッパの犠牲者は、西本だけでなく榎本もか…。さらなるオーナーのロッテ重光さんの話は今読んでいます。

バレンタインはバットと木刀を比べ、バットと素材の違う木刀を振る事はバッティング練習にはならないと考えた。それに対して榎本や広岡はまず振ると言う点で同じと考える。広岡が千葉ロッテのGMを退社後に彼と会ってそんな話をしていたら、広岡はもう私のような年寄りに出る幕はないんです。私は常に壮大な宇宙の法則の中で物事を考えるをしてるんですが、今そんな話をしたらおかしくなったんじゃないかと思われますよと話していた。p.267

 宇宙…!そう考えると、榎本ー広岡ラインを継ぐのは誰か。宇宙人と言われるのはベイから巨人に移籍した井納…?

臍下丹田に自分のバッティングホームが映るようになると、ピッチャーとのタイミングがなくなってしまった。ピッチャーが投げたボールが指先を離れた瞬間から軌道がわかる。こっちは余裕を持ってボールを持ち、ジャストミートすることができた。p.296

 これは、スタンド使いですよ!タイミングを取らなくていいということは、無敵。

当然のように帰宅後、コーラの瓶を粉々に叩き壊すことになった。p.347

 タイミングをとる相手がいないとすべて自分にのしかかるのか…。求道極まれり。

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