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サブカル大蔵経201 なべおさみ『やくざと芸能と』(イースト・プレス)

なべはやくざとの交際が多いと批判されましたが、己で道を切り開いて歩く芸能人は、多かれ少なかれ裏社会との交際はあったはずです。p.227

吉本入りは誰の案なのか、すごいヒットだと思いました。闇営業問題、反社会問題でなべおさみの力が必要とされる時代が来たのではないでしょうか。

肝心な事はあくまでタレント側に立って味方しつつ、相手に悟られないように事務所側に導くことだと言う。これは高等戦術だ。影の世界の任務だ。p.106

これ、スパイというか、隠密ですよね。こういう仕事を任されているのでしょうか。

クリーンな芸能界に移行する中、最後の芸能の民の直言。幻想と説得力を放つ、再びたけし周りの怪作。

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役者、役座、やくざ。なるほどなぁ。

ヤクまでは同じでも、シャとザは大きな違いです。p.24

義信会津村和麿会長曰く、役座こそやくざの目指す座だ。皆が認めた人が役座につける。役座者は極道で、厄障者は暴力団だと。p.170

私は本当に良い人たちに出会えたと思っている。だからこそ、やくざを繙いてみたいんだなあ。p.230

さらに一気に、語源的考察で学術書の様相を帯びてきます。

ヘブライ語。ヤー・クシュ。ヤーは神。クシュは屑、くしゃみ、くすぶる、クシュい臭い、霞、スミ、カス、クソ。人間のクシュと見られてきたヤクザもヤクシャも役に立つ。p.180

さらには、被差別問題と芸能の関係を自身のことから解き明かしていきます。サンスクリット語まで出てきたのには驚きましたが、沖浦和光さんとの縁にもびっくりしました。どれだけ人脈すごいんでしょう。

カースト制度の最下位をサンスクリット語でエットと言います。漁民です。このエットを当て字に穢多を造語したのです。(中略) 私が学んだのは沖浦和光先生です。大森第八中で野球部の監督をしていた先生のもとで準優勝まで行った一員です。私は自分の芸能の源点を求めて学んでいる時でした。なんだ、渡辺、そうなんか…。p.185

手元のサンスクリット辞書ではエット=漁民は確認できなかったのですが、漁民がカーストに組み込まれいるのは勉強させていただきました。

挨拶にも、芸能の民の哀愁と矜恃をひしひしと感じます。

名刺がわりに手拭い。自分たちは、御不浄にぶら下がる手拭いみたいな人間でございます。p.193

 日本という国の成り立ち、日本人とは何か、の考察まで拡がっていく迫力。

日本人とは混合民族の出来上がりです。韓国24%.中国26%.沖縄16%.アイヌ(出雲系)8%.ヨーロッパ系26%.p.196

私は秀吉は被差別民の出身であったろうと思うのです。中村遊郭、渡来人・石工の穴太衆、秦氏との関係。p.198

のれん発明、千利休。p.205

松本治一郎との関係まで明かされる。すごすぎるエピソード。

明大替玉直後、金田中で部落解放同盟の上杉佐一郎から土下座。上杉の師・松本治一郎の秘書をなべの父・渡辺久二郎がしていた。p.221

大阪の人権ミュージアムに行った時、建物の向かいに和太鼓のレリーフがありましたが、なべさんはそのことも教えてくれました。

渡辺村の浪速地区。和太鼓の産地。私は穢多の末裔です!と胸を張るんです。p.224

やくざの世界から学んだこと、出会い。

私は相手にモノを頼まないと決めていました。腹を括って単身で詫びる。p.228

ある時、菅谷政雄さんが言いました。
なべちゃんも、一度ぐらい賭場を見学しておいたらよい。西成のバクチ場に連れて行ってもらいました。いいか、両手をズボンのポケットに入れて、賭場から出る帰りまで、絶対に出したらあかんよ。お茶一つ飲んでもいかんからね。手入れの時に見学や、と証拠になんのや。p.229

司忍さんの潔さ。お上を畏れ、立ち向かわず。無法者にならず。p.231

そして、政界の裏での暗躍。特に北海道に選挙の手伝いで来た時の描写すげえよ!

義母の弟のつながりで後援会長、私の政界での親分は安倍晋太郎先生。p.242

部屋に入ると、金丸信先生。すまんが、北海道に入ってくれんかね。秘書の方ですね。うん、昭一さんが安部ちゃんとこへ行くもんでね。p.245

私は中川先生と全国を飛び回り、誕生してきたのが亀井静香さんです。p.247

小泉純一郎をトップ当選させよ、と
姉の信子さんと飯島秘書が家に見えて作戦会議をした。p.249

私が嬉しかったのは鈴木宗男という人の素質だった。打てば響く、腰の軽さ。真っ白な運動靴30足。p.251

土下座してみろ、その人が一番のシンパになった。p.253

池田大作先生、全国のお墨付きが出た。p.255

千春さん、頼みます。p.256

 人生訓も書ききれないほど満載でした。

長さんに社長はこう言った。人間一日の締め括りは寝る時だ。その時いかに心地よく幸せに寝られるかが勝負なんだ。悪いこと忘れていいことだけ考えて床につきなさい。それが明日への活力につながる。p.103

 この本も文庫に入れて欲しいです。

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