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サブカル大蔵経522都築響一編『Neverland Diner』(ケンエレブックス)

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百人が〈もう行けない店〉について語る。結局、知っている方の文章しか読めないもんですね…。

自分ならどこを書こうか夢想しました。子供の頃家族で行った焼肉屋、バスのラーメン屋、ドライブイン。学生の頃お世話になったたくさんの店、地元に帰ってから通ったモスバーガー、あれを超えるジンリッキーにいまだに出会えないバー、馬車やか。

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【パリッコ】未知の酒場に入る前の無上のワクワク感。新しい飲みかたを思いついたときの異常な興奮。p.23

 パリッコさんに代表して語ってもらえるときの安心感。

【いしいしんじ】ホームレスたちは上半身を揺らしながらきいている。p.28

 いしいさんの本文、怖かったです。

【水道橋博士】「ホープ」は、そんな自堕落な学生生活を送る麻雀仲間が夜に集う店だった。p.55

 学生の頃、毎週日曜仲間とたむろった店「ガリバーII」を思い出しました。

【林雄司】酒を飲むのはトーストのようだと思う。古くなった我々が子どもに近づけるのだ。p.79

 本書随一の名言。

【堀江ガンツ】新大阪新聞社が発行していたプロレス専門タブロイド紙『週刊ファイト』を彷彿とさせ、いかにも"昭和の大阪"な感じがした。p.218

 ガンツの安心感。珍しい自分語り。もっと読みたい。インタビューして欲しい。

【高橋洋二】「丸福」にすごく似ている。ということは「丸福」ではないと強く感じた。p.434

 いつも思います。〈似ていること〉の届かなさ、残酷さに。

【都築響一】そういう「だましの芸」で、京都はずっと生き延びてきたのかもしれない。p.469

 主催者・都築響一がぶっ込んできたのは京都の魔界のお店でした。

【平民金子】たくさん胡椒をふりかけながら、リスボンスタイルやな、とにやけてしまう。p.504

 三鷹アンダーグラウンド、行きたい。

【村田沙耶香】運ばれてきたどんぶりから、あの頃と同じ異臭がした。「変わってない…」p.584

 村田沙耶香の真骨頂はエッセイでも。

【高野秀行】あの弁当カレーは何だったのだろうか。p.591

 高野さんがインド出入り禁止とは知らなかった…。この空港カレー、私もチェンナイ空港で遅延で待たされた時、航空会社のサービスで食堂で無料で食べたカレーが一番美味しかったなと、思い出しました。

【比嘉健二】山口百恵の「さよならの向こう側」が必ず歌われ、ステージ上ではフィリピーナ達が皆、涙を流し、つられたおっさん達もまた涙となるのがお約束。p.613

 都築響一編『東京右半分』で語られていた、比嘉さんのフィリピンパブ通いの原点をここで読めました。

【大竹伸朗】「味覚」も「音」も、どんな強い思いを込めて語ろうが、人それぞれの趣向にあっけなくいきつく虚しさがある。p.628

 結局、知らない人の文章が頭に入らなかったのはここなのかと、トリの大竹さんの文章で納得しました。


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