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サブカル大蔵経444角川書店編集部『山田風太郎全仕事』(角川文庫)

白内障も悪いことばかりでは無い。目は風景を見るにはよく見える方が良いが、人類を見るには少し霞んでいたほうが良い。あの世への親近感などないが、この世への違和感ならある。【あと千回の晩飯】p.154

〈列外の奇才〉山田風太郎。作品のできばえとその思想の痛烈さがどうしてここまで共存できるのか、不思議でならない。

風太郎を通して日本を読み直し、人間を見つめ直す。読むたびにその時の自分自身と向かい合う。そんな機会を常に風太郎作品は与えてくれました。経典そのものです。

山田風太郎の、まだ読んでない作品を発見する悔しさと嬉しさと。

一生楽しめるカタログ。

作品、人物列伝、年表、インタビューと、俯瞰と細かさを備えた愛情あふれた一冊。

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作品所収文庫の出版社の幅広さにも驚愕。

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風太郎忍法帖が古びない理由。忍者たちの戦いに意味がないこと。p.11

 この真実ともいえる人間への乾いた視感はどこから来たのか。医学と戦争体験か…ん?ということは手塚治虫と同じ?あれ、二人とも兵庫県出身…。この世界に誇る双峰を、誰か物語で逢わせてください!

「於千の知ったことではない。勝手に死ね。」【忍法聖千姫】p.31

 豊臣滅亡と入れ替わりで生まれた怪物。

【明治波濤歌】「風の中の蝶」熊楠と北村透谷が、多摩山林で邂逅。p.89

 熊楠は日本の主役になれる。

【魔軍の通過】日本史上類を見ない悲惨な内戦と山田風太郎が位置づけた水戸天狗党の、壮絶な行軍譚。妖術もない、剣豪もいない、山風歴史作品、第1位にあげたい必読の書。p.134

 魔軍推し嬉し!

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