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アジャイル開発のメリットは? ウォーターフォールと比べてみると...

フレキシブルで効率的な開発によって、スピーディーなリリースを目指すソフトウェア開発手法「アジャイル」。市場・ユーザーの動向が予測不可能なVUCA時代において、有効な開発手段として広まっている。

最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX)のブームに伴い、デジタルプロダクトの開発にあたって、アジャイルに関心を寄せる企業も増えてきた。

そこで、本記事ではウォーターフォール型開発と比較し、アジャイルの概要とメリットを解説する。

アジャイルとウォーターフォールの違い

アジャイルは、2000年代に登場した比較的新しい開発手法だ。

プロダクトの競争力を上げるため、QCDS(品質・コスト・納期・スコープ)をコントロールし、要件変更などに柔軟に対応。動くソフトウェアを数週間単位という短い期間でリリースし、それを繰り返すことで、プロダクトの価値の最大化を目指す。

これに対し、最初の計画を重視するのが「ウォーターフォール型開発」だ。従来からある、伝統的な開発手法といえるだろう。

ウォーターフォールでは、契約時にQCDSを決め、計画済みの〈企画→計画→設計→実装→テスト〉を手順通りに進める。

アジャイルのように柔軟にQCDSを変更できないため、スコープの変動がなく、技術的難易度が低いプロジェクトにはウォーターフォール型開発が向いていると考えられる。

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© 2006-2021 MonstarLab

実装した機能の2/3は「使わない」

アメリカの調査会社The Standish Groupは2002年、社内向けアプリの利用機能の実態について、以下のような調査を発表した。

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出所:The Standish Group

計画当初は必要だと考えられ、実装された機能たち。しかし、蓋を開けてみると全体の64%は「まったく使わない」「ほとんど使わない」ものだということが判明した。つまり、実装機能の2/3以上は、実際にはニーズがなかったのである。

これは社内向けアプリの調査結果だが、一般ユーザー向けのアプリでも同様のことが起こりうるだろう。

そのため、実際に動くもの・操作できるものを用いながら、ユーザーが価値を感じるかどうかを随時検証しつつ、優先度の高いものから開発する必要性が高まっている。

その効率性、そしてフレキシビリティを実現しうるのがアジャイルだ。

アジャイルの成功率とその要因

アジャイルのメリットは、そのフレキシビリティがもたらす成功率の高さといえるだろう。

The Standish Groupの「Chaos Report-2015」によると、ウォーターフォール型開発の成功率が11%であるのに対し、アジャイルは39%。成功率は、アジャイルのほうが約3.5倍高いことがわかる。

また、失敗率を見てみると、ウォーターフォール型開発が29%であるのに対し、アジャイルは9%。アジャイルでは失敗率を1/3程度に抑えられている。

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出所:The Standish Group「Chaos Report-2015」

なぜこのような違いが生まれるのか。それには「最初に正しく計画する」ということが困難である、という事実に向き合わなければならない。

以下は「不確実性コーン」と呼ばれるグラフだ。横軸はマイルストーンを、縦軸はそれぞれの時期に見積もったプロジェクト規模(工数・スケジュール)を表す。

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© Nikkei Business Publications, Inc.

これによると、初期段階と検修後では、見積もりに16倍もの誤差があることがわかる。つまり、最初から正しく見積もる・計画することは、そもそも難易度が高いことがデータで示されている。

これが、初期計画を遂行するウォーターフォール型開発の失敗率の高さ、そして、状況に合わせてフレキシブルに開発を進めるアジャイルの成功率の高さに繋がっていると考えられる。

もちろん、プロジェクトの特性によってはウォーターフォール型開発が適していることもある。重要なのは各開発手法の特色を理解しながら、適切なものを選ぶことだ。それはビジネスの成功確度を上げることに繋がるだろう。

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アジャイルによるデジタルプロダクト・サービス開発など、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のご相談・お問い合わせは以下から。

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■参考・引用文献
・IPA 独立行政法人 情報処理推進機構『アジャイル領域へのスキル変革の指針 アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方
・日経クロステック『プロジェクトの本質とはなにか
・AIS 一般社団法人 行政情報システム研究所『行政機関におけるアジャイル型開発の導入に関する調査研究―実践のポイントー

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