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この物忘れは認知症のはじまり?

それとも単なる物忘れ?

「突然の物忘れ」に悩まされることはありませんか?
「何しに来たんだっけ…」、「あの人の名前は…」、「昨日の夜は何を食べたっけ…」
そして、単なる物忘れかな?それとも認知症のはじまり?という不安に襲われます。
ただの物忘れと認知症、この両者の違いって一体何なのでしょうか?


「認知症による物忘れ」と「老化による物忘れ」の違いとは


「老化による物忘れ」と、「認知症による物忘れ」は一見似ているようにも感じられますが、その性質は似て非なるものです。一般的に、物忘れと認知症の違いについては下記のように解釈されています。

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老化が原因で起こる「物忘れ」は行為の一部や事柄の一部を忘れるのに対して、「認知症による物忘れ」は、体験したことそのものを忘れ、物忘れをしている自覚がないのが特徴。
忘れる度合も徐々にひどくなる。


言いかえると、
●老化による物忘れ⇒「部分的に思い出せなくなる」
(例)昨日の晩御飯のメニューが思い出せない
●認知症による物忘れ⇒「体験の記憶がなくなる」
(例)晩御飯を食べた記憶がない
ということになります。

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両者の特徴を比べてみると全く性質が違うことがわかります。
このような違いが生まれるのは、そもそも「忘れる」という事象が発生するメカニズムが違うからです。
ここからは、両者のメカニズムを見てみましょう。


■「老化による物忘れ」のメカニズム
物忘れを語る上で、「記憶力」とは何であるかを知らなければなりません。
それは脳に蓄積された膨大な情報の中から特定情報を引き出す力です。
年を取れば取るほど、私たちの記憶の量は膨大になっていきます。
すると、必要な記憶を引き出すことは難しくなっていきます。
その結果、発生する現象がいわゆる「物忘れ」です。つまり、老化による物忘れは脳の中から必要な情報を「引き出せなかった」状態ということになります。

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■「認知症による物忘れ」のメカニズム
では、認知症の場合はどうなのでしょうか?認知症の中でも特に多いアルツハイマー型認知症は、脳の萎縮が原因のひとつとされています。
脳内に「アミロイドβ(ベータ)」というタンパク質が蓄積し、「アミロイド繊維」として脳に沈着することで記憶を司る「海馬」という部分を中心に脳組織が萎縮してしまうのです。
その結果、認知機能の低下に繋がり、体験が海馬に記憶されないケースが発生します。

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つまり、認知症による物忘れは「体験したという事実が脳内から抜け落ちる」ことによって発生する症状ということになります。


ちなみに、「ロスマリン酸」という成分が、認知症の原因の一つであるアミロイド繊維の形成を抑制し、分解するというデータも発表されています。
ローズマリーやスペアミントなど、シソ科の植物に多く含まれていますが、日常生活の中で摂取する機会はあまり多くない成分なので、サプリメント等での摂取が推奨されています。

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興味深いニュースが、2014年に米国「TIME誌」で取り上げられました。115歳で亡くなったオランダ在住の女性(ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパー)の脳を解剖したところ、脳にアルツハイマー型認知症の兆候がなかったというものです。
つまり、115歳になっても「脳は老化とともに衰えるわけではない」ということがわかったのです。


それでも高齢者の多くが「物覚えが悪くなった気がする」と嘆いています。その理由は年を取れば取るほど記憶の量が膨大になるため、その中から必要な記憶を「思い出す」ことに苦労するようになるからです。
何百万冊もの蔵書がある図書館から、お目当ての本を探さなければいけないイメージです。

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でも、勉強ができる人たちや、仕事ができる人たちはその点にうまく対応できています。なぜなら、彼らは、情報を整理・分類しながら記憶し、思い出す際にそれらの情報をうまく検索する力に優れているからです。
つまり、記憶力のいい人たちは、Googleのような賢い検索エンジン=記憶を「引き出す力」を頭の中にもっているのです。


記憶力アップにつながる「引き出す力」の鍛え方


私たちの脳が憶えられる情報量には限界があります。一説によれば脳が記憶できる情報量は、データにすると約17.5TB(テラバイト)だという説です。
この17.5TBという数字は、DVDにすると約3,700枚、Blue-rayだと700枚のデータ容量で、フルHDの動画にすると、約114日間撮影ができる容量です。


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そう聞くと多い量のように感じますが、人の一生分で考えると、かなり少ない情報量です。なぜなら、私たちは日々目から入る情報、耳から入る情報、口で味わう情報、肌で感じる情報などなど、ものすごい量の情報を処理しているからです。
普通に生活しているだけでも、脳の記憶容量はどんどん少なくなっていきます。
そう考えると、脳が大事な情報のみを「長期記憶」で保管するのも当然ですね。


■記憶には3つの段階がある


記憶には大きく分けて3つの段階があります。
1.感覚記憶・・・五感から入ってきた情報を保管する
記憶です。記憶される時間は数秒ほどです
2.短期記憶・・・一時的に覚えたことをすぐに使うため
の記憶です。数分から数日間だけ保管されます
3.長期記憶・・・反復されたことで強く残った記憶。
数か月から一生、保管されます

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私たちの脳は、受け取った情報の重要性や反復の程度に応じて、「感覚記憶」→「短期記憶」→「長期記憶」と保管する場所を変えて記憶していきます。
では、情報がどのように記憶されていくのかを具体例をあげて見ていきましょう。


■情報が記憶される流れ
あなたが女性だとして、ひとりで飲み屋に行ったとします。その飲み屋でカウンターに座ったあなたは、突然、隣に座っていた人に声をかけられました。
この時点で、あなたの「感覚記憶」に「隣に座っている人から声をかけられた」という記憶が残ります。そして、その数秒後、その人は自己紹介を始めました。
「僕の名前は中井です。最近アメリカから帰ってきたばかりで、日本に友達が少ないので、よかったら一緒に飲んでいただけませんか?」
あなたは一瞬「突然、声をかけてくるなんて怪しい人・・・」と思いましたが、中井さんの外見や声がとても素敵だったのと、誠実そうに見えたので、一緒に飲んでみることにしました。
ここであなたの脳は、中井さんの名前、顔や会話の内容を「短期記憶」に保存しました。
その後、あなたはこの中井さんとの仲を深め、頻繁に会う仲になりました。中井さんとの会話はとても楽しく、あなたはどんどん中井さんに惹かれていきました。中井さんと会っているときは、感情が頻繁に揺れ動きます。
その結果、脳は「この情報は生命にとって大切だから、憶えておくべきだ」と判断するようになり、中井さんとの日々が「長期記憶」に保存されることになりました。

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このケースで大事なのは、もし、中井さんと仲良くならなければ、脳は中井さんとのやりとりを「長期記憶」へ移さなかったであろう、という点です。
なぜなら、脳はその情報で私たちの感情が揺れ動いたかどうか?を軸に、情報を記憶するからです。
交流が深くない人の記憶をすぐに忘れてしまうのは、その人とのやりとりでは感情が揺れ動かなかったことが原因です。
そのため、「短期記憶」止まりで、「長期記憶」へ移らないのです。



■記憶力は3つの力によって構成される

学生時代の友達と偶然再会したけれど、友達の名前をド忘れしてしまった…。歳をとると、そんな気まずい状況が増えてきます。でもこれは、友達の名前を忘れてしまったのではなく、記憶していた名前を「引き出す力」が弱くなってしまっただけなんです。
記憶力には「引き出す力」を含めて、以下のような3つの力があるといわれています。
1.憶える力
2.忘れない力
3.引き出す力

私たちの「憶える力」や「忘れない力」は、歳をとってもそれほど急には衰えません。なぜなら、私たちの脳は肉体的に健康であるかぎり、老化によって衰えることはないからです。
ただ、「引き出す力」に関しては、衰えやすくなります。
なぜなら、年を取るほど、たくさんの情報を憶えることになり、それらの情報を整理することが難しくなってくるからです。
整理ができていないと、脳のどの場所にどんな記憶をしまったのかがわからなくなり、どれだけたくさんの情報を憶えていたとしても、その情報を引き出せなくなります。



記憶を「引き出す力」を劇的に高める7つの方法


ここからは、「引き出す力」を高めるためのノウハウを紹介します。

1.感情とセットで憶える
脳は“感情に訴えかける情報”を優先的に記憶します。何かを記憶する際に、そのときの自分の感情とセットに憶えるようにすればいいのです。
例えば、初対面の人の名前と顔を憶えたいのなら「この人はすごく優しそうだな」「この人と一緒にいると楽しそうだな」などと、自分の中に生まれた感情をしっかり記憶しておきます。


2.関連するほかの情報とセットで憶える
何かの言葉を憶えたいときは、その言葉に関連する情報もセットにして憶えるといいでしょう。
たとえば、「スクリュードライバー」というカクテルの名前を憶えたいのなら、なぜあのカクテルはスクリュードライバーと呼ばれるようになったのか?という理由や背景なども知るようにします。
そうすれば、言葉を引き出す際の手がかりが記憶にたくさんインプットされるのです。


3.エピソード記憶化して憶える
エピソード記憶とは、自分が直接見たり聞いたりした、経験にもとづく記憶のことをいいます。ここでいうエピソードという言葉は「ストーリー」という言葉に置き換えることができます。
映画を思い出してみてください。映画のストーリーの中には登場人物のさまざまな感情が出てきますよね。ストーリーの中にはたくさんの感情が詰まっていることが多いため、記憶に残りやすく、思い出しやすいのです。


4.「場所」とセットで憶える
私たちの脳の中には「海馬」という部分があります。この海馬は記憶を整理する役割を担っているのですが、実は、記憶を整理する際に、あらゆる記憶に「位置情報」を付けているのです。
なぜ位置情報が付けられているのでしょうか?その理由は、私たちの行動には必ず「どこで、その行動をとったか?」という位置情報が紐づいているからです。
位置情報はシンプルな情報なので、思い出す際のわかりやすい手がかりとなるのです。
ちなみに、位置情報は行動だけでなく、感情にも紐つきます。


5.反復して憶える
脳は“登場頻度の高い情報”を重要な情報として重宝します。そのため、積極的に憶えたい情報は、頻繁に見る、聞く、触るなどして、脳に送り続けましょう。
反復して憶える際にオススメなのは、普段からよく目にするものに情報を埋め込むことです。
たとえば、英単語を憶えたい場合、1.冷蔵庫の扉に憶えたい英単語を貼っておく 2.パソコンのデスクトップの背景に憶えたい英単語が書かれた壁紙を設定する 3.スマホのホーム画面の背景に憶えたい英単語が書かれた壁紙を設定する などの工夫が有効です。


6.タグ付けする感覚で、カテゴリ分けして憶える
憶えたい情報を、何かのカテゴリに“タグ付け”するような感じで憶えることもオススメです。
たとえば、リンゴだったら、「ジャンル→果物」「色→赤い」「味→甘い」といった形で細かくタグ付けすることができます。これは、パソコンなどのファイルを保存する際に、フォルダをきちんと分ける感覚に似ています。
あとから引き出しやすいように、上手に整理・分類することが大事です。


7.過去の記憶を定期的に思い出すようにする
「引き出す力」を強化するためには、定期的に過去の記憶を思い出すこともオススメです。例えば学生時代の卒業アルバムを取り出してください。自分のクラスのページを開き、仲のよかった友達の人柄やエピソードなどを思い出してみましょう。
「○○さんとは遊園地に行って遊んだな。優しい人だったな」「○○さんは話しが面白くて、いいキャラしてたな」など、できるだけいろいろなことを思い出してみましょう。
卒業アルバムを使う以外でも、社会人の方なら、過去の仕事で受け取った名刺を見返して、「この人はこんな性格だった」「この人とはこんな仕事をした」と思い出すのもオススメです。


いかがでしたか?「引き出す力」を鍛えれば、あなたの記憶力はきっとパワーアップするはずです!

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