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『みんなではじめるデザイン批評』◆読書ログ2020#01◆

最近は会社でWEBサービスのマーケティング・ブランディングを担当しているので、デザイナーやクリエイターの方と仕事をする機会も増えてきました。
ということで、2020年の1冊目は『みんなではじめるデザイン批評 ―目的達成のためのコラボレーション&コミュニケーション改善ガイド』です。

先に注意しておくと、この本は「本」としてはあまり読みやすいものではないです。
これは、例えば『7つの習慣』のような海外のベストセラー本を和訳したケースによくあることなのですが、本質的かつ普遍的ないくつかの原則について書いているため、非常に抽象的な表現が多く、そして同じことを何度も繰り返し説明します。
この類の本は、(少なくとも僕は)読むのに時間を要してしまいがちです。

しかしこれは、本当に大切なことは常にシンプルであり、それ以上に重要なことなどなく、そして人はそのごくシンプルな原則をいとも容易く見失ってしまうということでもあるのでしょう。

デザイン批評とは何か

さて、本書を通じて説明されるシンプルなテーマについてまとめてみましょう。

・デザイン批評とは何か?それは何のために行うのか?
・デザイン批評はどのような基盤に則って、どのように行うべきか?

デザインに対するフィードバックには、反応型・指示型・批評の3種類があるといいます。

反応型:デザインを提示された瞬間に生じる言語あるいは身体の直感的なフィードバック。
指示型:助言ないしは提案や指示をもって具体的なソリューションを示そうとするフィードバック。

多くの人が無意識にしてしまいがちな上の2つのフィードバックは、大抵の場合(そのままでは)あまり役に立ちません。
まず必要なのは、批判的思考(クリティカルシンキング)を用いた分析、すなわち批評なのです。

批評とは、批判的思考を用いて、デザインが望まれる目的を達成する(そして関連するヒューリスティクスを遵守する)と思われるかどうかを判断する分析方法なのである。

デザインの目的は何か?それに関連しているデザインの要素は何か?
その要素はうまく機能しているか?それはなぜか?

こういった問いを自分やチームに投げかけながら、適切なタイミングで、適切な方法で批評を行うことは、そのデザインをよりよいものにするために重要です。

目的・ペルソナ・シナリオ・原則

批評に参加するメンバーはみな、独自の知識・経験・スキルを持っています。
多様な視点があるということには、様々な洞察が得られるというメリットがあるものの、核となる基盤はメンバーの中で共通の認識になっていないと、建設的な会話や批評はできません。

その基盤とは、製品の目的・ペルソナ・シナリオ・原則の4つです。
これらに関する意見をチームで一致させてから、ディスカッションに臨む必要があります。
途中で誰かがそこから逸脱しそうなときには、改めて基盤に立ち返るよう促すファシリテーションも重要です。

私たちは、ともすれば問題の解決を急いでしまいます。
何かがうまく機能していない(かもしれない)と分かると、すぐに「ではどうするべきか?」を考えてしまいます。

しかし、批評の場はソリューションを見つけることが目的ではありません
分析するときと問題解決をするときでは、人は脳の機能を切り替えているのです。
デザインを理解しようとする人と、分析しようとする人、そして自分のソリューションを考えだそうとしている人とが同じ場に混在すれば、そのディスカッションは混乱しかねません。

いずれにしても、批評をする側と受ける側の両方が練習を重ねる必要がありそうです。
それらは抽象的で漠然としているため、具体的に体感として理解し、実際にその場でうまく振舞うのは簡単ではないだろうと思います。

一方で、本書で説明されたことは「デザイン」の批評に限らず通用することだとも感じました。
安易に直感的な反応をせずに、批判的思考をベースとした分析とフィードバックを徹底的に行い、それから次のステップに進む。
目的を達成するためには、これ以上の近道はないのかもしれません。


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