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ボンゴとコンガのブーバキキ

先日の記事にも書いたが、こないだパーカッションのRECをしているとき「ボンゴ」と「コンガ」の話になった。

「ボンゴ」と「コンガ」は、名前の印象と見た目の印象が逆だよね、という話。先日改めてこの話をしていたら、「ブーバキキ効果」というおもしろい現象を教えてもらった。

図形を2つ描いてみた。みなさんは、どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」だと思われるだろうか?

実はこの質問にはほとんどの人が、左の丸みのあるAの図形が「ブーバ」で、とがっているBの図形が「キキ」だと答えるらしい。不思議なことだが、私もそう思った。この理由について、あるサイトでは以下のように説明されていた。(https://psychmuseum.jp/show_room/bubakiki/

①「ブーバ」は、発音するときの口が大きな空洞になるので、丸くて大きなもの、音がよく響きそうな空洞を持ったもの、叩くと大きな音が出そうな太鼓のようなイメージに結びつく→丸みのある図形
②「キキ」は、TやKなどの発音が破裂音をイメージするので、スネアドラム(小太鼓)やクリスタルガラスを叩いたときのような鋭い音に結びつく→とがっている図形

この現象は、1929年にドイツのゲシュタルト心理学者・ケーラーによって紹介されたもので、最近ではアメリカの脳科学者・ラマチャンドランによって再認識され「ブーバキキ効果」と名付けられた、とのこと。

まさにこれは、「ボンゴ」と「コンガ」を逆だと思ってしまうという長年のモヤモヤを解決する、パーカッショニストのみならず、音楽を愛好するミュージックラバーならばすべからく持っておくべき偉大な知識かもなのかもしれない。

「ボンゴ」は「ボン!」と、叩くと大きな音が出そうな太鼓のようなイメージ。まさに。「コンガ」は「K」から始まる鋭い音、高いテンションの小さな太鼓をイメージする。これも納得だ。「ブーバキキ効果」から言わせれば、この2つが逆に思うのは当然なのである。むしろ「ボンゴコンガ効果」と名を改めても良いのではというほどの好例だろう。

しかし、いろいろ調べているとちょっと合点がいかない。

「ブーバキキ効果」の論考の中には、言葉の音や響き自体に付随しているイメージがあるために、あらゆるものの名前はただ無作為につけられているのではなく、「名は体を表す」というように、物自体の印象が名前に反映されているのだ、と書かれているものもあった。

そうであるなら、「ボンゴ」と「コンガ」は元々、逆に名づけられていなくてはならないのではないだろうか?

実験のように、ほとんど全員が持つという音のイメージに素直に従えば、大きな太鼓の方が「ボンゴ」、小さな太鼓の方が「コンガ」と名付けられたはずである。そうすれば、「じゃあ次はボンゴ録ろうか~。あ、ちがうちがう、コンガやコンガ。あれ?ちがうわ、そっちじゃない。ちっさいほうのやつ。ああ、そうそう。ボンゴやわ」みたいなやりとりが発生することもなかったのではなかろうか。これを考えるために、「ボンゴ」と「コンガ」の由来について調べてみると意外なことがわかった。

大きな太鼓「コンガ」の名前は、「コンガ」ではなく本来「トゥンバドーラ」というらしい。

元来キューバの民族楽器であった「コンガ」。世界的には「コンガ」の名称で親しまれているが、実は「コンガ」というのは、キューバのカーニバル音楽「コンパルサ」で用いられるリズムを指すものであったが、勘違いからか楽器自体をそう呼ぶようになったと言われているらしい。本場のキューバでは、この楽器を「トゥンバドーラ」と呼ぶとのこと。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%AC

「トゥンバドーラ」は「コンガ」と比較すると、「トゥン」は破裂音気味であるものの、「バ」と「ドーラ」はなかなかの低音感。空気を内包した大きな筒状の太鼓の感じをイメージできなくもない。その他、コンガのサイズによって、小さいものから「キント」「コンガ」「トゥンバドーラ」と呼ぶという情報もみかけたが定かではない。

一方、「ボンゴ」の名前の由来がいまいちわからない。わかったのは、並べられた2つの太鼓のうち、小さい方が「マッチョ」でスペイン語で男性を意味する言葉。大きい方は「エンブラ」で、女性を意味する。コロンブス以降、スペインに制服されたキューバはスペイン語が公用語。もっと知りたいところだが、これ以上の深追いはやめておこう(知ってる方いらっしゃいましたらご教示ください)。

少なくとも分かったことは、「コンガ」は元々リズムを指す名称であったわけだから、「ボンゴ」と「コンガ」という名前は、両者が比較して命名されたのではないということだ。しかし万一、もし大小の太鼓が並べられ、これらの楽器の名前を決定しようと、音楽を愛好する村々の重役たちが会議を開いたのだとしたら、小さな方をなぜか「ボン!!」としてしまう天邪鬼であったと言わざるを得ないだろう。

私の名前などは結構「キキ」寄りだ。

「ミキクワカド」の子音を並べると「mkkwkd」であるから、最後に「d」があるものの、「k」が3度も登場する。先日誕生日を迎え29歳になってしまった私、そろそろ大人としての深みや威厳なども必要になってくるからして、このような小太鼓のような響きの名前では世を渡って行くことは難しい。「ブーバ」の効果を取り入れるならば、「b」や「d」などを多用して「dgdwbd」としてみよう。つまり、「ディギ・ドゥワバドゥ」である。今後はこのあたりへの改名も視野にいれていくべきなのだろう。

30歳を目前にして吐くたわごととは以上のようなものである。ご参考まで。

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