演奏家の雇用環境が研究者と同じすぎる話

この前、演奏家(オーケストラ楽器)の友人と話していて、研究者と音楽家が置かれている不当な状況が似ていることを再確認してしまった。
(研究者がフォローフォロワーに多いTwitterアカウントでの投稿を編集しているので、音楽家の皆様には釈迦に説法というか、何かすみません)

(私の脳内で大体こんな感じだと思っているというのでざっくり話すと)
プロのオーケストラは基本定年制で正規団員の定年退職で空きが出るとオーディションがある。クラシック若手演奏家は音大卒業後そういうものを目指し、演奏活動やエキストラ(曲目の欠員分の楽器を演奏会毎に単発で雇う非正規の仕事)でキャリアを積み、食いつなぐ感じがある。

そういう状況の人びとは「フリーランスの芸術家」の代表的な存在だと思う。今回コロナショックで、フリーランス芸術家の目の前の仕事が次々キャンセルになったことは注目を浴びたと思う。それはもちろんなのだが、もっと長期的なものもウォッチしないといけない。

というのも、数年後に一件とかの国営や公営のプロオケのオーディションに向けて準備している若手演奏家が、「コロナショックの影響で国や都などの自治体からオーケストラに交付される運営費の予算がなくなれば、○○先生の退職後のオーディションが無くなってしまう」と懸念していて、確かにと思った。

目の前のキャンセルのことがまず生活や今後続けられるかに懸かっているということと、数年後に目標に据えていた正規職のポストが予算を理由に蒸発しうるという二重の災いだということだが、ここまで聞いて「あれ?それうちらもじゃね?」となった。

※ 研究者の場合、前者なら、非常勤講師の職は(文系に多いイメージだが)博士課程の大学院生の大事な収入源だが、今回オンライン化や開講時期の繰り下げで最初一か月の給与がなくなったりしている。(院生のみならず、予算削減でコストのかからない非正規ポストでこま切れに講師を調達してきた大学や高専は、多くの非常勤講師によって回っているという最悪の現実がある。こちらの署名も参考になります。http://chng.it/7cPGwrQ6Dj
※ 後者は今に始まったことではないが、今後予算削減などがあったときには、コロナを言い訳にする言説に煙に巻かれたりしてはいけない

音楽家と(非音楽専攻の)研究者は、キャリアの不安定さやその仕組みも、過小評価と搾取という日本社会での境遇(みんな必要なときだけ、音楽や知識を摂取したり活用したりするくせに、その常時供給可能な状態の維持や負担については「我関せず」でセルフサバイブを強いる)も、すごくよく似ている。音楽家は研究者以上に母数もポストも少ないが、私もとてもお世話になってきた。縁遠く感じる人も少なくないかもしれないけれど、上述の通り共通点はたっぷりあるし、「社会への文化資本の供給源・提供者」という意味で同業でもある。切り離さず連帯できるところは連帯したいなと思った。(完)

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