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植野DatPiff日記14トロイモワ

今回のおすすめは、DatPiffじゃなくてMixtapeMonkeyのほうにあります。ここで偶然見つけたToro Y Moiの謎の音源2つ。たぶんどっちも彼の作品につもりであげたわけではありません。ブート的な感じでしょうか、、、1つは、2012年の「Guest Mix」ってやつ。これはライブ音源のようなDJプレイのような、46分間ノンストップでリズムやサウンド、曲が刻々と変化していきます。そこに、演奏してるような楽器の音や歌が重なってきます。エコーは終始深めでエフェクト音も飛び交っているので、ずっと遠い混沌と霧の中にいるような謎な感じがあって非常におもしろいです。これがまさにチルウェーブと呼ばれるやつなのかな、と思いました。実はただのDJミックスなだけかもしれませんが、、、

もう1つが、「Toro Y Rome Vol.1」というやつで、アトランタのラッパーRome Fortuneとのユニット名のようです。Vol.2はありません、Vol.1だけです。ジャケがとにかくヤバいです。おそらく中国人がアコースティックギターを抱えた中国の会場の写真なんですが、内容と一切関係がありません。内容は今時めずらしいぐらいの完全なオールドスクールなヒップホップで、なんだかジョークのようにも思えます。なんなんだこりゃ、、、でも、これもおもしろいです。今回の表紙絵は、これです。

実は、特に好きでもなかったトロ・イ・モワに少し興味が出たのは、これがきっかけだったのです。だから自分と同じような人がいたとしたら、これから聴くのがいいんじゃないかな、と思います。

モワさんはチルウェーヴの旗手として知られていますが、そもそも自分、チルウェーヴがよく分かってなかったんですが、今回モワ音源を色々聴いて思ったのは「懐古主義でオタクなものに現代の感覚と深いエコーを足したもの、ややアンビエント寄り」って感じでした。ただ、そう思ってもやはり前述の「Guest Mix」のような謎音世界こそが自分の中の「チルウェーヴ」って言葉の響きにぴったりなんですが、、、調べればいいじゃん、と思われるでしょうがここは敢えて勘違いしたまま進みたいと思います。

モワさんは2010年に「Causers Of This」というアルバムでデビューします。最初の登場にして、もうここにほとんどすべてが詰まっている感じです。残りのアルバムは、それぞれ1枚ずつここからテーマというかジャンルを絞って毎回コンセプチュアルにして、器用に完成度を上げて作ったようなもので、聴いてると他人の趣味に付き合ってられないや、と思ってしまいます。このファーストのように、やや未整理な感じで渾然一体化しているほうがワクワクがあります。セカンドの「Underneath The Pine」は、この全部アリ路線をもっと突き詰めたような力作ですが、多少シンセポップ色を強くて気合いが入ってる感じで、だんだん窮屈になってくる感じがあります。このアルバムの僕の好きな曲は、ボーナストラックのサイケ感があるレアグルーヴ・インストの「Ricardo and Ryne」です。

といった具合に、彼のアルバムは自分にはどれも冴えない感じですが、1つだけおもしろいものがありました。笑えないジョークのようなギターポップな15年「What For?」の後に突然、ミックステープとして発表された「Samantha」です。フリーダウンロードです!ミクステなのにDatPiffにもMixtapeMonkeyにもないんですが、、、この作品はミクステ形式にのっとってか、ヒップホップ色が強くて雑多な感じ曲が20曲で50分ちょい入ってて、活気もあってかなり楽しいです。サウンドの凝り方とか相変わらず器用なんですが、遊び心も感じられて、トラップなんかもあったりしつつも得意のチルなウェーヴな感じもあったりして、ファーストで見せた音楽の幅を、初めて更に拡げて見せて(聴かせて)くれていると思います。自由な風が吹いていて、次の作品はどんなものになるんだろう?ってワクワクしてきちゃいます。

残念ながら、次の作品からまた前のようにマジメで窮屈な感じに戻っちゃうんですが、、、17年の「BOO BOO」とか、R&Bテイストでヴォーカルにオートチューンかけてたりしてるんですが、ちょっとThe DreamとかThe Weekndとかみたいになってるだけ、みたいな。なんかおもしろみに欠けるんだよな、、、

今のところ最後のアルバムである19年の「Outer Peace」は、ヒンヤリとしておしゃれでレトロでアーバンなレアグルーヴ路線と、Abraちゃんをゲストに迎えた静謐な「Miss Me」とか静謐なトラップなどの路線に二分されます。自分は後者のほうが好きでした。いずれにせよ、全体的にかなり落ち着いてきてますね、、、

だからやっぱり、ここでToro Y RomeのVol.2に期待ですかね!なんちゃって。

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