マインドワンダリングからフローへ ラファエル・A・カルヴォ ドリアン・ピーターズ 『ウェルビーイングの設計論: 人がよりよく生きるための情報設計』

(2020年の4冊目)昨年末から少し個人的なキーワードにいれていた「ウェルビーイング(Wellbeing、つまり良い感じで生を保つこと)」に関する本。仕事で少しこの手の領域の話が必要となったので少し優先順位をあげて読んだのだけれどもタイムリーな感じであった。テクノロジー的な領域の本として扱われているのだが、組織マネジメントや人事領域でも学ばれるべきトピックが並んでいると思う。本書ではウェルビーイングを扱っていくための基礎的な知識や学問的な背景などを紹介しながら(第1部)、各論的な章へとはいっていく(第2部)。

第2部で扱われているトピックはそれぞれ、「ポジティブ感情」、「動機づけ、没頭、フロー」、「自己への気づきと自己への慈しみ」、「マインドフルネス」、「共感」、「思いやりと利他行動」、「警告、考慮すべきこと、そしてその先にあるもの」となっている。ややバズワードとしての盛りは過ぎたかもしれないが、今っぽいものが並んでいる。

個人的な関心から、本書の注目ポイントをあげておくならば、やはり今後の業務設計やシステム設計は、UXとしてフロー状態(とまで言わないまでも、単に使いやすい、だけでなく、集中して作業に取り組める)を容易に提供できるのか、にフォーカスしていくべきなのだろう、と。

フロー状態の定義について今更だが引いておく。

1. 今この瞬間への集中
2. 状況や活動に対する主体感
3. 活動と気づきの融合
4. 内省的な自己意識の喪失
5. 時間的体感の変容
6. 内的報酬

以上の組み合わせがフローの状態を構成するのだ、という。

一方で、現代のテクノロジーは、フローや集中を妨げ、マインドワンダリング(気持ちがさまよっている状態)に作業者をさせがちだ。

現在のテクノロジーは、私達が複数の活動を並行して行うことを、積極的に促すようにデザインされている(中略)ほとんどのデジタル機器は生産性を向上させる道具としてつくられており、さらには文化的にも、マルチタスクは高い生産性を示すものとして捉えられている(中略)しかし実際には、マルチタスクが生産性を下げてしまうことを多くの研究が示している(P. 244)。

マルチタスクやマインドワンダリングに抗うための設計、集中を促す設計に世の中的には向かっている、と本書では言及されているが、果たしてそうだろうか。そうは思わない。本書を読みながらTwitterをし、音楽を聴き、ときにPCでメモをとる作業をしていたわたし自身がフローへと向かうためのテクノロジーとの使い方を編みだすべきなのだろう。

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