RDGレッドデータガールの深行が嫌いでしんどい

ネタバレ注意

個人の地雷の話です

作品の良し悪しでありません

モヤモヤを整理するために書いた


むかしから大好きな作者がいる。児童書のような少女小説のような、SFのようなファンタジーのような時代小説のような小説を書く人である。

学校の図書館で著者の本を見たことのある人はたぶん少なくないはずだ。

古典のような表紙と分厚さと頑丈なつくりの本はどの本棚に置いても目立つ。借りたことはなくともなんだか凄そう…とひと目見て感想を持つ分厚くて固い本だった。

当時は文庫サイズなどないし、京極堂もまだデビューしてなかった。

私が著者の本に出会ったのは中学生のときで、とにかく衝撃的な本だった。こんなに中身の詰まった少女が主役でメインで、物語に都合のいいヒロインではない女の子が活躍する本はちょっと、他にはなかった。(私にとって)

しかも内容が子供向けじゃない。子供が読むにはけっこう難しい話もたくさんあった。でも図書館はそんな子供向けじゃない本なんてごろごろあったし、難しくても勢いで読めたし、人間関係さえわかればちゃんと理解できる。なにより面白い読み物だった。少年と少女のボーイミーツガール的な、思春期に読むとなにか特別な気分に浸れるような、読み終わったあと素敵な映画を見終わったのと同じ感動を味わえた


勾玉シリーズや西の善き魔女、王国のかぎ。全部面白い。この作者の書くものに外れなし

ファンなら誰でもそう思う。

で、問題は長編のレッドデータガールだ。

2008年に出たこの小説、実は発売後1巻を読み、特に思うことなく読み終えた。長編を書きなれた作者特有の、物語前のイントロに当たる部分だな~という感想だった。主人公の女の子の環境や世界観、おそらくこれから恋人に近い関係になるだろうツンツンした男の子との出会い。

この作者はあまり印象の良くない出会い方をした二人を書くのがうまいと思う。お互い印象が良くない、そこから交流を深め、お互いを良く知り、いつの間にか交流を深めるといった距離の詰め方。

キャラクターのひとりひとりが生きてるみたいに性格を持っていて、キャラが思うままに動いている。

だからキャラクター同士のかけ合いがとくに面白く、読んでいて気持ちがいい。

この作者の長所がRDGガールでは逆に働いたんだと思う。(※あくまで私の感想です)

さて一巻を読み終え、それから次が出るのに一年待って。でも個人的に長編は一気に読みたい派なので巻数が出るまで手をつけず積んでいた。

4巻が出る頃になると、2巻から読み始めた。そんなに長編じゃないだろうと勝手に4巻で終わりだと思っていた。

続編は大人しい主人公に友達が増えたり世界が広がったり事件が起きたりで楽しかった。次を読み終えるとすぐに続が読めるのが嬉しかった。

しかし以外にも4巻以降も続くようで、また続きを待たなければいけない。

十二国を読んだことがある人ならわかると思うが、複雑な話を一年待ってまた再開するのは記憶を試されるもので。

いちいち思い出しながらあれ?と読むより、話の最初から読み直して続編に行くほうがいいと思ってる。

なのでしばらく完結するのを待っていて、待っていたら読むのがだいぶ遅くなってしまった。

で、順調に年を重ね最近ようやく完結したこの小説を思い出した。

もうだいぶ前に読んで、具体的な内容を忘れかけているので、一巻から読み直したんですよ。

そしたら、年を取ったからなのかわかんないんですが、深行くんが

ものすごく嫌いになった。

こいつ優等生の顔で裏で弱いものイジメするただのクズじゃねえか


いやわかるんだよ。深行の立場も。

特殊な家庭に生まれ山伏の修行させられ、父親はあまりかまってくれなくてようやくこっち向いたと思ったらどっかの本家?の地味でさえない小心者の同じくらいの年の女子に仕えろって言われるとかさ。

なまじ深行がイケメンでスポーツ万能で人気者で頭良くて、って学校のカースト上位の男子が。身内の関係で幼馴染のサエない女子のために転校させられて、そりゃむかつくし八つ当たりもするよね。

そこらへんしっかり描写もされるし。深行が泉水子イジメるのもわかるわかる。

だけどこの本は泉水子の目線から書かれてるわけで、

いきなり親戚の男の子がやってきて怪我してるから一緒に住むことになって失礼なこと言われて心えぐられてるのにその当人は家族や身内に大人しい優等生な態度で、泉水子の前で豹変してネチネチいじめだして、って本当にたまったもんじゃない。

深行が親父に逆らえなかったように、泉水子にとってもどうにもしようがない。本人はちゃんと深行の前でこんなことやめてあげてください、って言ってるのにそれを決めるのは深行親子で泉水子は家族でもないのに口をだすな、って諭される。

で、ふざけんなお前のせいだろどうにかしろって深行から八つ当たりを受ける。

ここの所が読んでいてめっちゃきつかった…

深行は別に暴力をふるったわけじゃない。危害をくわえようとしていない。

でも暴力以外で人を追い詰める方法なんていくらでもあるし、この追い詰められる感がリアルで作者ほんと…すごい

特に陰湿だな、と思ったのは転校してきた学校で、(泉水子が通う学校)深行はすぐに東京から来たイケメンってことで人気者になる。そんで泉水子と一緒に登校しているから関係を疑われる。そういう立ち位置になるとわかった上で泉水子を無視する。泉水子ももちろん関わりを避けようとするんだけど、人気者の影響はでかく、いつの間にか教室の雰囲気も泉水子を軽んじるようになる。大切な親友ふたりも人気者の転校生に夢中。泉水子の味方はいない。

トラウマがあってボールを投げられたら固まってしまう泉水子にボールをぶつけて怯えさせる


こうやって泉水子を追い詰めて追い詰めて泉水子に非常識なやり方でも深行の転校をやめさせるように親父(決定権があるのは父親)に訴えさせるのが深行の目的なんですよね。いやあ気持ちはわかるとはいえやってることはただの弱いものイジメ。

正直、深行が出てくる前は主人公の泉水子のあまりの弱虫、ビビリっぷりにイライラしてたんだけど、深行が出てきたらこっちの悪辣さにむかつきまくったわ…

山奥に住んでて車の送り迎えの関係でどっか寄ったり遊びに行くこともできない主人公、泉水子。巫女としてなのかわかんないけど過保護に何も教えられず育てられてきた。

無知なのは明らかに本人の責任じゃないし、周囲もあえて教えないようにしている。でもそこを深行は責める。お前は何も知らないのかよって。

泉水子が小さい頃から出来が悪いから鍛えてやろうってボールぶつけてトラウマ残した張本人。深行の性格的におどおどするやつは殴られてもからかわれてもイジメられてもしょうがない、ってのが透けて見える。

もしかして著者のメッセージなのか?

そういう性格のやつは戦って強くなれ的な?

おかげで主人公泉水子は強くならなきゃいけない!と決意し遠く離れた東京の高校に行くことを了承する。

いやなんで?しかも先に深行がいるから安心だしみたいなこと言い出してこれがDV妻のハネムーン期か…と納得したよ

深行が泉水子見直したのも結局泉水子の体質が原因だったわけで、深行は泉水子のこと何一つ認めてはないんだよね。

そもそも必要ないことを焚き付けておいて本人がその気になったらふーんまあいいんじゃないの?って上から目線なのがほんとに…ほんとにぶん殴りたい

和宮が深行に攻撃的になってクラスメイト使って襲撃させたのヘイト調整も含めてるのかな?ぜんぜんスッキリしなかったしもっとひどい目にあっても構わないけど。

たぶん、深行がやったことよりもそれが本編できちんと制裁されてないのが一番のモヤモヤなんだと思う。

最後の最後、深行は泉水子の舞を見て見直す。

それで危険な和宮がおとなしくなってめでたしめでたし。


謝罪しないんだよね深行くん。イジメられるのは本人の問題と思ってそう。

いやイジメる方がどう考えても悪いです。

謝罪するつもりはないって言っちゃうし。

なんだかなー。この深行が泉水子イジメたこと青春の甘酸っぱい思い出♥みたいな雰囲気にされるのが嫌だ…嫌だ…

私はあまりに深行が嫌いすぎて読んだ直後タイトルと名前で検索かけちゃったよ。そしたら全然誰も不満に思ってなくてそこもつらい

フィクションだからってそういうヘイト調整はさあ…ちゃんとしてよ

登場人物たちに深行がいいヤツだ、って認識されるのは分かる。こいつ猫かぶってるし。でも泉水子本人までそう思うのは無理でしょ!!こんな短期間でこいつのことを信用するな!そこまでアホの子設定じゃななかったでしょ。普通こんだけのことをされたら顔みたくないレベルで嫌いになるわ

特に気にしてることをあげつらって罵倒されたらトラウマにもなるわ

これまでも作者の本にはこういうキレキレな失礼なことを言う男性キャラってけっこう出ててた。でも言われる方もちゃんと反論したり言い返すタイプのキャラだったからここまでむっかつくわこいつ~ってならなかったんだと思う。

ここまで嫌悪感持つキャラが主人公とくっつくのが確定してるのがつらい…

せめて一巻でちゃんと謝らせてくれよ…

フィクションに過剰反応ってのはわかってるけど。すごい腹がたったので書きなぐったらだいぶスッキリした。

ここまでだいぶ愚痴を吐き出したけど、結局私がこんなに腹たったのは泉水子にでっかく感情移入したからだろうな

不思議なできごとが起きて教室のパソコンが全部ぶっ壊れて、どう考えてもマウスキーボード操作してただけの一人の生徒が原因なわけないのに、心当たりがあるなら名乗りでなさい、ってことですぐに名乗りでちゃう素直さ、。そしてびびりすぎて泣いちゃう。

この時点でもうバカかよ!って突っ込んじゃう。そりゃ泉水子にとっちゃ自分がなんかしたんだって発想になるんろうけど。そこで普通名乗りでるか?小心者のはずなのにパソコンぶっこわした責任を自分から被りに行くっていうどうしようもない愚かさ。保身ってものがまったくない

まあ深行に見下される性格だよね。

それでも本人は周りと違う自分に嫌気がさして変わろうとするんだよ

前髪きったり洋服を友だちに選んでもらったりして。大人しくて人見知りで地味でサエない子からなんとか普通の子になろうと変わろうとした矢先に深行がやってくる。

こっちはそんな泉水子の人柄を知ってるから余計に深行の行動が最低だと思うんだよね

口の回る優等生とろくに自分を主張できない子。イジメの加害者と被害者。

深行の親父に強要されたり怪我させられた恨みぜんぶ泉水子に向ける

しんどい…レビューみたらここがきつかった、て人結構いた…よかった…

深行はこの行動だけじゃなく、基本的に泉水子を見下してるんだよね。

敵視とか生易しい表現じゃすまない。それでも身内から泉水子の面倒を見てやれってなるし泉水子も深行頼るしかない状態になるのが続編の2巻

泉水子が襲われてるとこに「イジメの現行犯かな?」とか言って入ってくるの最高のギャグだよね。お前だろイジメてたのは。

深行嫌い…でも作品は面白い…上から目線の偉そうなこいつほんと嫌い…

作者の文章はスキ…しんどい。

ただ深行が嫌いってだけの愚痴でした。





























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