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北欧デザイン世界を牛耳る!?

15年近く前、独身で、毎晩遅くまで働き、その残業代もしっかりもらえ、経済的にも余裕が出てきた頃、北欧デザインに夢中になった。大阪のおしゃれな家具の街、南堀江のど真ん中に住み、フィンランドやスウェーデンに旅行をした。Ittalaの食器や、ルイス・ポールセンの照明、アルネ・ヤコブセンの椅子を少しずつ収集するのが喜びだった。

15年経った今、北欧デザインに食傷気味な自分がいる。いや、厳密に言えば北欧デザインのすべてにうんざりした訳ではなく、IKEAに胃もたれをおこしている。IKEAが北欧デザインの全てではないけれど、シンプルな形状やテクスタイルなど、IKEAが北欧デザインの一部であることは間違いないと思う。

先日のnoteにも書いたが、この1年間、Airbnbを利用してヨーロッパ各地の住宅におじゃましてきた。その体験の共通項は2つに集約できる。1つは先日のエントリに書いた「天井の高さ」であり、もう1つが「IKEA」だ。家具、食器、シーツ、タオルなど、どこの国を訪れてもIKEA、IKEA、IKEAだった。

ただ、不思議なもので、じゃあどこの国も扉をあけたらそこは同じ部屋だったのか?と言われれば、建物の間取りや、同じIKEAでも色のチョイス、非IKEA部分の組み合わせでそれぞれの国のテイストが完全に失われていたわけでもない。シンプルでどんな空間にも馴染みやすいIKEA製品のセンスの賜物だろう。

IKEAとAirbnbのマッチング

そうは言ってもこのIKEA現象には功罪あると思う。Airbnbの貸し手側からしたら圧倒的に便利だ。とにかく安いので、汚されても壊されても、安心。消耗品として最適だ。デザインもそこそこ良く、数多くのIKEA商品同士のマッチングもよく、物件写真に載せることも問題ない。

使用者側からすると、1度の旅行なら気にならないのかも知れないけれど、結構な数の滞在を経ると、画一化に飽きと少しの怖さを覚えた。これをいったん意識してしまうと、AirbnbのリスティングがIKEAのショールームに見えてくる。IKEAの店舗では家具をソファ、ベッド、照明と商品群ごとに並べるのではなく、部屋に家具を一式配置した形で展示している。あのいろいろな部屋を次から次へと巡る感じが、Airbnbで部屋を巡っているとしてくるのだ。

New York Timesに掲載された、定年後に550日かけてAirbnbを利用し世界中で暮らした夫妻の記事にあった「わたしは地球上でいちばんIKEAの食器を洗ったよ」と言うコメントにもうなずける。

だったらいっそう合併なり協業したらどうなんだろうか?とも思う。どちらの企業もMBAの教材に頻出する。企業カルチャーに違いはあれど、共にイノベーティブで、そしてどちらもデザインを大事にするという共通点がある。実店舗での体験にこだわり、ネット販売で遅れを取っているIKEAにとってAirbnbのネットでのプレゼンスは大きい。もっと言えば、Airbnbでの「滞在」こそが「IKEA体験」というショールーム機能を果たせるのではないだろうか?

グローバリゼーションかローカリゼーションか

とは言えAirbnb側は「現地でしか味わえない」を提供することにフォーカスしている。最近では、ステイだけでなく様々な体験も提供しはじめている。その意味では、この画一的な滞在は彼らの志向とは逆行している。

例えば、欧米人が映画やアニメで憧れてやってきた日本の住居に一泊するなら、畳に布団を敷いて寝てみたいだろう。IKEAのベッドにIKEAのシーツより。自分もホテルではなくAirbnbを使うのは、その国を観光よりできる限り生活に近い視点で体験してみたいからだ。地元のスーパーで買った食材で、キッチンを使い料理もする。もちろんIKEAに罪はないし、貸し手側がIKEAで揃えたくなる気持ちは理解できる。より、ローカルな体験を求める人のために、今後、Airbnbの「設備」の項目に「WIFI」などと並んで「NO IKEA」のチェック項目が並んでも、それは逆におもしろい。

ちなみにIKEAですが、日本語だと「イケヤ」に近い音ですが、昔、訪れた地元スウェーデンでは「アイキア」で、なかなか通じ合えませんでした。また、中国やインドでは、現地の家具の方がだいぶ安いようで、IKEAは高価な「北欧デザイン」ポジションだそうです。MBAのディスカッションでなかなか噛み合いませんでした。

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