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目の見えない人との歩き方とバリアフリー図書

これは「Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018」19日目の記事です。いずいずさんから紹介いただきました、まじまじ(@mjmjsachi)です。高知市でウェブやDTPのデザインをしています。

先日、高知の図書館等文化施設オーテピアで開催された「ルミエールフェスタ」に行ってきたので、そこでの体験や感じたことについて書きます。

ルミエールフェスタとは

ルミエールフェスタは、視覚障害のある方の日常生活をサポートする道具の展示販売や、盲導犬教室、バリアフリー映画の上映など様々な催しが行われるイベントです。

“日本一のバリアフリー図書館”オーテピアでの開催

ルミエールフェスタの会場となったのは、今年7月にオープンしたばかりのオーテピア。「日本一のバリアフリー図書館」を掲げており、館内には点字ブロックが設置されていたり、車椅子の方、聴覚障害、精神障害、知的障害のある方、高齢者、乳幼児連れの親子、妊婦やけが人など、誰もが利用しやすいよう様々な工夫が施されています。

オーテピアには「声と展示の図書館」が併設されています。エントランスロビーに開かれた明るいスペースには、点字図書やマルチメディアデイジー図書、サピエ図書館の録音図書などが用意されており、誰でも気軽に利用することができます。

視覚障害者のガイド歩行体験

今回私は、視覚障害のある方をサポートする人向けのガイド歩行体験プログラムに参加しました。

目の見えない方、見えにくい方を安全に誘導する歩き方を「手引き」といいます。
教えてくださったのは、高知県立盲学校の大久保先生と牧先生。まずはお手本として、全盲の大久保先生を牧先生が手引きする様子を見せていただきました。

手引き歩行の基本
「こんにちは。手引きしましょうか?」と声をかけるところから始まります。
肘の上あたりを持ってもらい、2人分の道幅を確保して半歩前を歩きます。曲がる方向を手前で告げたり、止まる時には理由を説明するなど、言葉でも案内をしながら進んでいきます。

一通りお手本を見せていただいたところで、実際に大久保先生を手引きさせてもらいました。
見るのとやるのとでは大違い。声をかけるタイミングや説明を考えたり、周りの歩行者とぶつからないよう気を配ったり、点字ブロックの上で立ち話をしている人がいるとやきもきしたり、とにかくそわそわドキドキしました。

また、アイマスクをつけて手引きをしてもらう体験もしました。
初めて目が見えない状態で歩いてみて感じた不安や気づき、ガイドをしてもらって安心したことをいくつか挙げてみます。

まっすぐ歩こうとしてもふらふらしてしまう
「歩くスピードは大丈夫ですか?」と確認することで、手引きする側もお互いに安心できました。(あと、体幹を鍛えようと思いました)

足裏の感覚で床の違いが分かる
靴を履いていても、フローリングからカーペットに変わったのが分かったことに驚きました。「ここからカーペットになります」や「砂利の上を歩くので気をつけてください」と解説してもらえると安心して歩けると思いました。

手引き者の体の向きに敏感になる
手引きをしていて後ろを確認するとき、体ごとねじって振り向くと、急な方向転換かと思ってびっくりしてしまいます。そういうときは、首だけで振り返ると良いと教えていただきました。

椅子は座面か背もたれを案内する
椅子に座ってもらうときは、「背もたれのない長椅子です」「一人がけの背もたれのある椅子で、前に机があります」など形状を説明しながら、座面か背もたれ(机がある場合は机と背もたれの両方)に触ってもらいます。相手の手をとって誘導するときは、その旨も伝えると親切で良かったです。

トイレの絶望感がすごい
館内を歩いて、トイレの前を通りがかったので、アイマスクをしたまま案内してもらいました。入口を入って何回か曲がると、もう自分がどちらを向いているのか分からなくなります。今回は用を足すことはしませんでしたが、いざ個室に入ってドアを閉められたら……と考えると、ぞっとしてしまいました。

ちょうどその日、福岡からこんなツイートが流れてきました。実際に案内をするときは、どのトイレが良いか選んでもらえたら良いなと思いました。

その他にも、階段やエレベーター、エスカレーターを手引きする方法を教えていただきました。

風景や雰囲気も伝えたい

今回は初対面の先生方との体験だったので、あくまで基本的な状況説明をしながら歩くだけでしたが、親しい仲の人なら、新しい図書館がどんなに素敵か話しながら歩けたら良いなと思いました。

そういえばこの日の館内には、白杖を持った人、サングラスをかけた人、手引きをして歩く人がたくさんいて、絵本「みえるとか みえないとか」の世界に来たようでした。
いつもの図書館より賑やかだったのは、みんなそれぞれに今みているものを共有していたからかなと思いました。


読書工房のバリアフリー図書

歩行体験のあとは、視覚障害者向け機器の展示ブースを見学して回りました。
白杖や点字器、文字盤が触れたり音で時間を知らせる腕時計や、ICレコーダー。もちろん高知システム開発さんの PC-Talker のブースもありました。

中でも私が興味を持ったのは、読書工房さんのバリアフリー図書でした。

見やすい大きな文字で漢字の形がよくわかる漢字見本帳
低視力・低視覚(ロービジョン)の子だけでなく、学習障害や読み書き障害のある子、日本語が母語ではない子など、漢字を読んだり書いたりするのが苦手な子どものために開発された漢字見本帳です。文字の骨格がわかりやすい丸教体(字游工房)を使用し、漢字を覚えやすいパーツに分解した図が掲載されています。

周りには分かりにくい部分でつまづいている子がいること、そのつまづきの原因に向き合って教材を開発している人がいることを知って、ハッとしました。

手で見る点字絵本「テルミ」

発泡インクで点字やイラストが印刷されていて、触って読むことができる絵本雑誌。墨文字も併記されているので、見える子も一緒に楽しめるのがポイントです。
イラストがかわいくて、紙とインクの素朴な風合いがZINEっぽいのも個人的にツボでした。

「テルミのめいろ」より

その他、講談社の「青い鳥文庫」の人気図書を大きな文字で読みやすくレイアウトしたシリーズや、障害のある人をサポートする人向けの本など、気になる書籍がたくさんありました。

読書工房の成松社長と少しお話させていただいたところ、こういった書籍はページ数や判型が大きくなったり、特殊印刷をする分、価格が高くなってしまうのがネックとのことでした。
その点、図書館はありがたい存在だなと思います。

また、これからはウェブや電子書籍がもっと便利になる時代ともおっしゃっていて、ウェブ制作に関わる者として身の引き締まる思いでした。

ウェブだけじゃないアクセシビリティ

2018年は自分にとって、ウェブアクセシビリティについて登壇したり、イベントに参加したり発信したりと a11y 色が強くなった1年でした。
年の終わりにこうしていろんな方とお話したり、ウェブ以外の生活に近い部分に触れられたことで、来年以降自分はどうアクセシビリティに取り組んでいこうか考える良い機会にもなりました。

紙もウェブもできるのは自分の強みだと思うので、2019年はそこを活かしつつ、「伝えたい」と「知りたい」をつなぐデザインができるよう、小さな取り組みを続けていきたいと思います。

あと、中四国でアクセシビリティやっていきの仲間も増やしたいです!

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明日の「Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018」は onouchidebe さんです。

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高知のフリーランスデザイナー。ビールとコーヒーとオレンジジュースが好き。
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