寝る前にしたカエルのおはなし。

 
 むかしむかし、深い森の井戸の中に若いカエルが住んでいました。

若いカエルには「いつか井戸の外に出て海を見る」という夢がありました。

仲間のカエルは「井戸の外に出るなんて、海があるなんて、お前はバカだ」なんて言うけど、それでもカエルは夢をかえませんでした。

ある日、カエルは意を決して井戸の外にでます。井戸にいてほしいと言うお母さんカエルも振りきって、カエルは初めて外の世界にでたのです。

若いカエルは希望にみちていました。

さあ、どんどん進むぞ!と、森を歩いてゆきました。

だけど、森の世界はカエルが思い描いていた世界とは違いました。

頭のいいフクロウや蛇が言葉巧みに騙して食べようとしてきたり、うさぎやスズメはカエルの夢をバカにして笑いました。

 森は仄暗くて、寒くて、おなかもすいてきました。

若い若いカエルには、どうしてみんなが意地悪してくるのか、わかりません。

ただ悲しくて寂しくて、カエルはケロケロ泣きました。

泣きながら、それでもカエルは進みました。

泣きながら歩いた何度目かの夜、カエルは足の悪い猫に出会いました。

猫はカエルの話を聞くと、海までの道なら知っているから一緒に行こう。途中まで私の背中に乗っていればいいよ、と言ってくれました。

カエルは猫の足を心配しましたが、これくらい平気さ、と猫は跳びはねて見せました。

猫とカエルは一緒に海をめざしました。

歩きながら、猫は色んな話を聞かせてくれました。人間のおばあさんと住んでいたこと。カッコいい猫と恋をしたこと。子猫をたくさん生んだこと。それはそれは素敵なお話でした。

たくさん話しているうちに、海が近くなってきました。

猫はカエルを降ろして横になると、「私はここで休むから、ここから先はひとりで海をめざすんだよ」とカエルに言いました。

カエルは一緒にいこうと言いましたが、猫は首をふりました。そして、すうっと眠りについたかと思うと、パタリとも動かなくなってしまいました。

若い若いカエルには、猫がどうして動かなくなってしまったのか、わかりませんでした。

ただただ、涙がポロポロと溢れてくるのです。

ポロポロポロポロ泣きながら、カエルは猫が教えてくれた道を歩きました。

もうすっかり日も暮れて、あたりが真っ暗になってもカエルは歩きました。

猫がいない道は不安で心細くて、おそろしいものでしたが、カエルは進みます。

どんどんどんどん進んで、夜が明ける頃、カエルはやっと森を抜けました。

そしてカエルの目の前には、おおきなおおきな海が広がっていました。

海は、カエルが想像していたよりもずっと大きくて美しいものでした。

あんまりにもキレイでカエルは、やっぱり泣きました。

わんわんわんわん泣いて泣いて、やっと泣きおわったころ、カエルはポツリと言いました。



「この海の先には何があるのかなぁ」



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