アツ、21歳。帰省する。

※そろそろイケナイお話しも出てくるので一応念のため、この物語はフィクションです。たぶん。

「麻雀牡丹」で勤務して約1年、K子に関しての憂いが無くなったのもあるが、それ以上に地元の学院の麻雀サークルのメンバーだったF君に「帰省してこないか」と誘われたのが大きかった。

サークルを基にSNSでその輪を広げたら、思った以上に人が集まったので運営に手を貸してくれる人を探しているとのことだった。

F君の父親が所有するビルの一室が空いていて、そこに卓を2つ置いて打っているらしい。

休日の昼からの開帳だけでは飽き足らず平日のアフター5も打ちたいというメンバーが増えたが、本業が忙しいF君は土日も必ず休めるわけではなく、平日は仕事アガリが遅いと19時位になるので、その間は僕が仕切るというわけだ。

レートは高くないとは言えモグリのフリー雀荘モドキということでチクリによる摘発や負け金の取りっぱぐれ、反社のカタガタに目をつけられないか等不安はあったが、当時の僕にとって魅力的な条件をF君は持ってきた。

必要経費を除いた粗利が月40万程見込めて、その9割を僕に渡すというのだ(さすがボンボン)。

麻雀の勝ち負けはもちろん自己責任だが場代がフルバック(=タダ)というのも大きく、結局誘いに乗ってしまった。

お世話になった「麻雀牡丹」を離れ、久々に家へ帰った。

事前に連絡したとは言え平日の日中なので無人だったが、久々の安心感に浸りゆっくり風呂に入った。

夕方に書き置きをして家を出る。

まずはボサボサに伸びた髪を切りに床屋へ。

思いきって中学時代の短さまで刈り、サッパリして店を出た。

近くの牛丼屋でメシをカキこんでいるとF君から連絡が来た。

今日はアガリが早かったようだ、そして早速卓が立つ予定らしい。

近所のコンビニでF君と1年ぶりの再会を果たし、近況報告もそこそこに新しい職場「事務所」へ。

煙草臭く殺風景ながら、麻雀を打つには快適そうな空間だった。

スペースに余裕を持って設置された2台の自動卓とソファー。

ドリンクサーバーや小さい給湯室もあった。

F:昨日片付けないで帰っちゃったらなー、早く用意しないと…

アツ:じゃあとりあえずオレ牌拭くわ。

その僕の手捌きの早さに、F君は驚嘆した。

この1年で何回やったことだろう、もう体が覚えている。

オープン準備をしながら僕の麻雀修行の話に花を咲かせていると、インターフォンが鳴りカメラに若い2人連れが映った。

F:お、来た来た〜さぁやるか、いやーアツと打つのも久しぶりだなぁ!

「事務所」最初のゲームが始まった。

常連だという大学生の2人、そしてF君も確かに打ち慣れてはいたが、まだまだ荒削りに感じた。

やはりこの1年は僕にとって大きかったようだ。

長いスパンで見れば負けることはないだろう。

僕は幸先の良いトップを取り、ゲーム中に来店した作業服の青年に席を譲った。

結局2時間程で2卓が埋まる人数が集まった。

皆若く、腕が拙い者も多いが楽しそうに打っている。

「ツモ牌を手牌の端に置いて、打牌してから手の内に入れるんですよ」

「3900は基本的に5000点棒で払ってお釣りをもらって下さいね」

「リーチ宣言は必ず打牌前にお願いします」

そんなレクチャーもしながら卓を見守っていると、麻雀講師をしている「牡丹」の店長Mさんを思い出す。

Mさんのように、いつか僕も役満アガったらサラっと「祝儀は結構です」ってカッコよく言おう…

この1年、僕は一度も役満をアガっていなかった。

(・∀・)< ↑みたいなのは犯罪だから真似すんなよ!本格的にヤバい人が出る「裏雀荘篇」へ続く!

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