ひとつの顔で暮らせたら
「お休みを頂いて、申し訳ありませんでした」
謝っていたのは、顔なじみのナースだった。パソコンに向かってカルテを書いていた時のことだったので顔を確認することはできなかったが、発言の主は声で知れた。そもそも、彼女が妊娠していたことすら私は知らなかった。そして、それが既に終わってしまったことも。
昼休憩前のナースステーションは人影もまばらで、指示簿や紹介状が載せられたデスクの周りには数人のナースたちがいるだけだった。妊娠していたけれど、2ヶ月で流産してしまった。心身共に不調に陥