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涙のうちの十字架

泣いていて、ふと涙目のまま顔を上げ、夜の街の光を見たとき、その光の一つひとつが、十字に、きらきらと、揺らぐように光っていて、おどろいた。

あぁ、十字架は涙のうちにあったのか、と思った。
世の光とは十字架なのか、とも思った。

罪咎憂いと救済は、同時に在り、共にあり、ゆえに、すべては、すでに済われているのだ、と思った。

光り揺らぐ十字架は、なにかを語りかけてくるようだった。
その言葉も意味も、正直なところ、わからなかった。
けれども、生きて揺らぐ灯火を見た。それだけで十分だった。

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