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[月記]24年5月 土鳩

「『平和の象徴』イメージキャラクター争奪戦」にて並み居る強豪を完膚無きまでに叩きのめし見事優勝を掴み取りし動物こと、鳩。


最近、近所の公園で本を読むことが多い。
学生の頃は通学中に電車で本を読むことが多かったが、社会人になって会社から徒歩圏内の場所に住むようになってからは本を読む時間があまり確保できなくなってきた。
大学生の頃は狂気孕んだ博覧強記の鬼になることを夢見て年間120-150冊の本をとにかく読み漁っていたのだが、社会人になって生活のリズムが変わり今では十分の一かそれ以下の読書量になってしまった。それでもゼロにならないように読書記録だけは付けていて、本を読まない月が無いようには気を付けている。

最近は家よりも公園のベンチで本を読んだりしている。公園は適度にうるさくて良い。はしゃぐ子供の声、ボールを蹴る音、鳥のさえずり、木々の葉の囁き、ヤバいおっさんの奇声。緊張感が読書を継続させてくれる。他者の視線があるのも良い。たぶん公園内の誰も私を見ているわけではないけれど、私に内在化された他者が私を見張ってくれるようになる。

少し離れたベンチにおじさんが座っていて、鳩に餌を撒いている。鳩に餌をあげるのは全く褒められたことではないが、気持ちはわからなくもない。何故なら鳩はかわいいので。
鳩は常に首を振って歩く (かわいい)。何故なら鳩は構造上眼球を動かすことができないので (かわいい) 「一定時間、眼球を空間に固定する」という工夫を行うことで (かわいい) 見ている景色がブレないように頑張っているのだ (かわいい)。つまり、周りの景色が動いている場合にしか首を振ることはなく、ルームランナーの上を歩かせた場合は首を振らずに歩く (かわいい)。反対に、鳩を自走する自転車の籠に載せてやれば動く景色につられて籠の中で首だけを動かすようになる (かわいい)。ここで自転車の鳩に向かってHipHopを流してやれば、鳩は籠の中でビートに乗ってノリノリで首を振るように見える (かわいい (かわいい))。

目を休めるために本を閉じて、辺りを見回す。ベンチで餌を撒いていたおじさんはいつしかいなくなっていた。今朝から読み始めた本は半分くらいまで読めた。もう少しだけ読み進めてから家に帰ろうと思い、本を手に取り、足を組んで読書を再開する。

しばらくページをめくっていると、唐突につま先に何らかの重みが加わった。驚いて本から顔を上げると、つま先に一匹の鳩が止まっていた。嘘みたいな光景だ。声を上げて笑ったら、身体が揺れて鳩はすぐにどこかに飛んで行ってしまった。

鳩はかわいい。だが、状況によってはぎりぎり面白いが勝つこともある。