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『ラブライブ!スーパースター!!』Liella!に欠けていたものと平安名すみれ

『ラブライブ!スーパースター!!』は一年生と二年生で異なる話をやっていました。
二年生は「今度こそ勝ちたい」と言う話をやっていて、一年生は「二年生に負けたくない」と言う話をしていた。同じユニットで同じ方向性を見ているのに、どこか足並みが揃っておらずぎこちない。
そこが『ラブライブ!スーパースター!!』で興味をそそられる点でもあり、「どこかで解決したらもっと面白くなるぞ!」と思っていたのですが、今回はその辺りを全て解決し、物語を終盤へと押し上げる凄い回でした。

Liella!に欠けていたもの

『2nd Season』におけるLiella!には「何が何でも勝ちたい!」という勝利への執念が欠けていたように思います。
二年生達には「応援してくれる皆のためにラブライブ!に勝ちたい。喜びを分かち合いたい」という理由はありますが、Liella!全体として共有するほどのものではないし、一年生は「二年生の足を引っ張りたくない。今は一刻も早く二年生達に追いつきたい」という頑張る理由はあるけれど、「勝ちたい」と強く思うほどの理由ではありませんでした。
負けたことで「悔しい」と思ったことが今のLiella!を作っているわけですから、ラブライブ!のような勝負の世界で「負けてもいい」と思って挑んでいるわけではありません。
ただサニーパッションの連覇のように「今年の大会で絶対に勝ちたい」と思えるほどの強い理由は九人全員の中には存在していなかった。もっと言えば一話時点での二年生にもなく、仮に今年の大会で負けたとしても「今度こそは」になっていたんじゃないかなと思います。
だから唐可可と平安名すみれが「唐可可の上海帰国は一旦保留になっているだけ」という話をしている際に、「これが九人で勝ちたい理由になるのでは?」という気はしていたのです。
今年ダメだったら、もう唐可可と一緒に喜びを分かち合う事はできない。だから今年も結果を出して、来年も一緒に喜びを分かち合うんだ!と言う話になるんじゃないかと思っていました。

悪者を演じ切れないからこそ

結論から言えば、今回の話はそういう方向にまとめていく話でした。
ただ違うのは「絶対に勝たなければならない」と思った理由が「『勝ちたい理由がある』サニーパッションの敗退」によってもたらされるものだったこと、そして平安名すみれが悪者を演じることで「なぜそこまでやるのか」を踏まえて「勝たなければいけない理由」を展開してきたのは驚きでした。
今回平安名すみれは「最大のライバルであるサニーパッションでも勝てなかった」と言う事実を踏まえて、「一番勝てる可能性」として「二年生だけで本戦に挑む」を提案しました。
これは「唐可可と一緒に三年間をやり切るためには、これが一番勝率があるやり方だから」という考えに基づくもので、「勝たなければどんな努力も意味がない」ショービジネスの世界に身を置き、そして「意味がない」側だった時期が長い平安名すみれらしい至極真っ当な結論だったと思います。
「そこにLiella!の目指した「皆の喜び」がない点を除けば」というのはありますが、一年生と二年生の間にある「一年間の努力の差」はやはり大きい以上、「これが一番」というのはずれた考えではありません。
ただ平安名すみれにとって誤算だったのは、一年生達が「勝つためなら自分達の努力が無駄になってもいい。私達の分まで頑張ってほしい」と言える子達だったことでしょう。
誰よりも報われない努力を知っていて、その報われなくても努力し続ける自分を認めて「この勝負どころでこそ、あなたがセンターに相応しい」と推薦してくれた人(唐可可ですね!)のためにやったことが、「次の報われない自分」を生み出すと知ってもなお、悪者を演じきれるほど平安名すみれは強い人間ではない。
ここで泣き出してしまう辺りに、「悪者を演じてでも自分の願いを押し通そうとするけど、悪者を演じ切れないほど善人」という平安名すみれの魅力が溢れていたかなと思います。ちょっと演じているペイトン尚未の役者としての在り方(ステージに立つ自分ではなく、その向こう側にいる平安名すみれを見てほしい)も混ざっていて、個人的には最高でした。

そうした経緯を経て「二年生五人で勝ちに行く」でも「九人で負けるかもしれない戦いに挑む」でもなく、「この九人で今年のラブライブ!は絶対に勝つ」に目的が統一されたわけですが、一年生にも「勝たなきゃいけない戦いなんだ」と思えるものを用意するために「先輩としての平安名すみれと唐可可」を描こうというのは凄いことですね。
一年生と二年生で見ているものが違う作品だからこその展開でした。

ウィーンとかのん

また渋谷かのんとウィーン・マルガレーテの話も今回一気に進んだかなと思います。
元々「プロになれるほどの実力があるのに、なぜスクールアイドルやラブライブ!にこだわるのか。あなたがこだわるほどラブライブ!もスクールアイドルも大したことない。私でも勝つことが出来る」と主張し、Liella!に挑戦してきたウィーン・マルガレーテ。
渋谷かのんはウィーン・マルガレーテに「スクールアイドルを尊ぶもの」としてどう回答するのか気になっていましたが、今回明確に「そんなことはない。スクールアイドルもラブライブ!も素晴らしいんだ!」と言い返したことで、思想戦の流れに入ってきたのは凄かったです。
『ラブライブ!』でここまで「対立する考え方を持つ二人のスクールアイドルが、本気で戦う」という物語が描かれることになるとは思ってなかった。
これで「ラブライブ!やスクールアイドルを否定する者に価値を証明する」という物語になりましたが、これはまだかのんとウィーンの物語なのも面白い点の一つ。
ここから先、Liella!とウィーンの物語になるのか。それともかのんとウィーンだけの話になるのか。
楽しみですね。



プリズムの煌めきを広めるためによろしくお願いします。