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ときた - 五井/やきとり

改築されました。

酒場で誰かと飲む酒よりも、自宅でゆっくり飲むひとり酒が好きな私だが、"ときた"は私にとって酸素カプセルのような特別なヒーリングボックスであり、友人と緩やかな酒で傷を癒やしてきた。

その長い年月を塗り重ねた琥珀色の空間が取り壊されると聞いた時、妙に悲しい気分になった。いくら技術が進化しても、いくらお金を掛けても歴史というエイジングは復旧できず、そこにいるだけで不思議な魔法に掛かった錯覚に陥ることができなくなったのだ。

帰る場所を失ったような喪失感。

ただ、そんなセンチメンタルな感情とは裏腹に、ときたのキラーメニュー"レバーたれ"と"煮込みどうふ"を無性に食べたくなり、悪友を連れて暖簾をくぐった。

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17:00開店と同時に店内へ突撃したが、もう残りの席は僅か2テーブル。平日にも関わらず驚異的な人気。
これほど人気店なのに、メディアで見かけたことは一度もない。ひょっとしてメディアが嫌いなのだろうか?

壁一面には改装前と同じく、手書きのメニューが張り巡らされており、建物は新しくなってもDIY精神はあの日のまま受け継がれているようで嬉しくなる。

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レバーたれ、皮たれ、シロたれを瓶ビールで流し込む。
焼いたレバーのモサモサ感が得意でない私だが、ときたのレバーは別格。甘だれをまとった炙りレバ刺しのようなレバー串は、口の中で瞬間的に溶けて無言になる。美味すぎて無言になるのだ。

不思議なもんだ。愚痴でさえもハッピーになる。

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悪友との2時間弱のときたの旅。
旅を終える頃には新しい "ときた" に少し味付けをしたような充実感。

また来ます。

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