無の研究

数学なんて現実には無い。数からして無いのだから当然だ。一個の林檎、一人の人間、一つの地球などに共通するものとして「1」という数は作られた。「1」という数は現実には「無い」のである。
だから、分厚い数学書などをみていると僕は不思議な気持ちになる。無いものについて、考えるべきこと、書くべきことがこれほどにもあるのかと。
文学もそうだ。現実で体験したことを参考にしながらも、現実にはない物語を文学は描く。無いものについて書いているという点で、小説と数学書は似ているように感じる。

どうやら困ったことに、僕が好きなものに共通することは「無いもの」であるということらしい。
最近は無の研究をしています
という川柳を少し前に書いたが、これはあながち完全に創作でもないかもしれない。
今までもこれからも僕はずっと、無いものについて考え続けている気がする。

だけど、好きなんだから仕方ない。
見えないものにわくわくしてしまうのだ。
僕はこれからも、ないものねだりを続けようと思う。